夜がだんだん長くなってきたこの頃。読者の皆さんは今夜も遅くまで仕事だろうか? 日本人は時間があればあるほど多忙なようだが、ホッと一息つく時間は必要だ。日本に昔からある「和紙照明」は、スイッチ一つで部屋を癒しの空間にしてくれる。テーブルでお酒を一杯、ベッドに入って少しの時間……柔らかい光に包まれながら穏やかな時間を過ごしてはどうだろう。今回は家庭でもできる簡単な和紙照明の作り方と、今日から自宅で使えるアイデアを「あかりデザイン工房」主宰の田畑教次さんに教わった。
あかりデザイン工房 田畑教次(たばた・きょうじ)氏
創作和紙照明作家。照明士、第二種電気工事士、福祉住環境コーディネーター2級の資格も持つ。京都市内に2000年、「あかりデザイン工房」を設立。和紙照明デザイン制作をはじめ、店舗・住宅用オリジナルオーダー制作、創作和紙プロデュース、和紙照明制作体験・ワークショップ、イベント・空間演出など、和紙の多面的な可能性を追求している。オンラインショップもある。最近は結婚式会場で招待客を出迎えるウェルカム・ライトの製作や、引出物など、従来にない和紙照明によるオリジナルのウェディングアイテムも好評だ。
田畑さんが考案! 家庭でできる和紙照明の作り方
今回紹介するのは、小さな箱を和紙で包んで紐で結ぶという簡単な和紙照明。どの材料も文具店などで揃えることができる。田畑さんも「形や大きさの違う和紙照明をいくつも作っておけば、その時の季節や気分によっていろいろな灯りを楽しむことができる」とお勧めだ。電球を覆う箱には建築模型などによく用いられている「スチレンボード」を使用する。拡散した淡い光を出してくれ、切断や接着などの加工も簡単なのが特長だ。
材料
- スチレンボード
- 白い紙
- 和紙
- 紐
- 厚紙
- 糊
- 両面テープ
- カッター
※土台となる器具は電球が箱に触れないような構造にするなど安全に十分注意して用意してほしい。小さい箱ならば15w以内の電球で十分だという。
作りたいサイズに合わせてスチレンボードを5枚に切り分け(図1)、両面テープで貼り合わせ底のない箱を作る(図2)。ここで大事なのは蓋面の中央に直径1cmくらいの穴を開けること(図3)。電球の熱を逃がすために大事なので忘れずに。
次に箱に貼り付ける和紙の絵柄を考える。春ならば桜を散らしたり、今の時期ならば月見や紅葉などの季節感を表現するのも良い。「秋の行楽で出掛けた際に拾った紅葉を貼ったりするのもお勧め」(田畑さん)。絵柄が決まったら、白紙にまずは絵柄を下書きし、色付きの和紙を下に挟み、線に沿ってカッターで切り取る (図4)。切り取ったものは、図5のように面のバランスを考えながら直接糊で貼り付ける。
あとは適当なサイズに和紙を切り、紐で縛るだけ。「絵柄は箱を包む和紙を通して見えるので、包む用の和紙は薄手のよく光を通すものを選ぼう」(田畑さん)。例えば、春雨や渦巻きなどの模様のレース和紙が豊富に販売されているので選ぶのも楽しいだろう。
ここで一工夫!
和紙をとにかくクシャクシャに小さく握り1度広げたら、もう1度同じように握る(図6)。きれいに広げると自然がしわができ(図7)、光をさらに柔らかくしてくれる。
美しく仕上げるなら、和紙を箱に糊で接着。続いて厚紙で指輪ほどの輪を作り、それを図8のように上部分の和紙を絞る軸にする。これも上に熱を逃がすためだ。紐はアクセントになるので鮮やかな色を選び、軸へ3重~4重に巻きつけてリボン結びする(図9)
これで完成。筆者は2つ製作した。1つはウサギの親子が駆けっこをする絵柄。もう1つは"豊穣の秋"がテーマだ。
テレビ付近の設置に最適な和紙照明
次に、和紙照明の効果的な使い方を紹介しよう。「よく、照明を置くなら『部屋をまず片付けなくては』という人が多いが、気負わなくていい」と田畑さん。和紙照明は軽量で持ち運びしやすいのも特長なので、部屋の色々な所に置いてみて試してみるのが一番だという。
よく蛍光灯などがテレビ画面に映りこむ経験は多いと思うが、光が拡散する和紙照明の「映りこみが少ない」という特長を生かして、最近人気のホームシアターの環境で使うのもお勧めとのことだった。
前に見せたい物を置くとロマンティックなシルエットが出現
他にも、照明の横に「本当に見せたい物」を置くというテクニックもあるという。「花は色を愛でるのが主だが、和紙照明の前に置くことで後ろからの柔らかな光に照らされて、シルエットがきれいに見える」(田畑さん)というのだ。
眠る前に10分 和紙照明の明かりの下で過ごそう
和紙照明特有の癒しの効果を実感するには、休息する場所に置くと良いという。「部屋の電気を全部消して10分~15分だけでもしばらく和紙照明だけで過ごしてもらうような時間を持ってもらうことが理想」と田畑さんは話す。1日の終わりを色温度の高い蛍光灯の中で過ごすよりも、色温度の低い和紙照明の下で脳を休ませてから眠るのが良いというのだ。最近では母乳をあげるため夜中に起きる母親から「普通の照明をつけるとまぶしいが和紙照明なら抵抗がない」という感想も寄せられたという。読者の皆さんも今夜から和紙照明の優しさに触れてはいかが?