2008年もあと1カ月ちょっと、というわけで、今回のテーマは「旧暦手帳」です。新たな1年のスタートを控えるこの時期、本屋さんの店先には手帳が山積み。それも、単なるスケジュール管理の枠を超え、ライフハックスや自己啓発のツールとして、さまざまなコンテンツを内蔵した商品が揃います。ただし、手帳と名の付く限り、1年が365日で、12カ月の暦に区切られているということだけは普遍……かと思いきや、日本の暦が西暦になったのは、わずか130年前のことなのだとか。それまで、1,000年以上の長きにわたり日本人の生活のペースメイキングをしていたのは、月の満ち欠けと太陽の位置に基づいた太陰太陽暦、旧暦だったのです。その旧暦を、西暦とともに記してあるのが「旧暦手帳」。ユニークなこの手帳の使い方を、「旧暦美人の会」に聞きました。
旧暦美人の会
旧暦の魅力と身体を育む感覚を伝えるという目的のもと結成されたプロジェクト。「身体感覚講座」を主宰する松田恵美子氏や著書に「暮らしに生かす旧暦ノート」のある鈴木充広氏などが参加する。2007年、株式会社パンゲアが両名が監修する「旧暦美人ダイアリー2008」を発売。2009年版は前年の約2倍のペースで売り上げを伸ばしている(取材時)。
旧暦では13カ月ある2009年
まず、西暦と旧暦の違いを把握しておきましょう。西暦は、地球が太陽の周りを1周する時間を1年とし、1年365日が12カ月で終わるように設計された合理的な暦です。11月19日の1年後が同じ11月19日になり、「11月には秋が深まる」といった、気候の変化と日付の関係も毎年同じになるという便利さから、グローバルスタンダードとなっています。これに対して旧暦では、新月から次の新月の前日までの日数(朔望周期)を1カ月とカウントします。すると、1カ月(月の平均朔望周期)は29.5日に。このことから生じる太陽の動きや気候とのズレを、閏(うるう)月の設定などで調整したのが旧暦なのです。ちなみに、2009年の旧暦では、5月の後に閏(うるう)5月があり、1年が13カ月となります。
伝統行事のタイミングを旧暦で計る
月を無視した西暦に対して、苦心して月を取り入れた旧暦が生きてくるのは、節句や雑節といった行事のタイミング。例えば、七夕の節句である7月7日の夜空はたいてい梅雨で曇っています。ところが、旧暦の7月7日は西暦では8月上旬から8月の終わりごろ(2009年は8月26日)。それなら、夏の盛りの晴れた星空で、織姫と彦星は無事再会できますね。また、七草粥を食べる1月7日の人日の節句は、旧暦では西暦の2月の初めごろ(2009年は2月1日)。食材となる七草がはえそろう時期と一致するのは、旧暦の1月7日の方なのです。
つまり、自然の移り変わりを表す「節句」や「雑節」は、旧暦上の日付で行った方が感覚的にフィットするということ。また、節句や雑節にちなんだ伝統行事には、昔ながらの生活の知恵が盛り込まれています。旧暦を使ってさまざまな行事を行うことで、旬の食材をからだに取り入れ、その季節特有の不調を改善することにもつながるのだそうです。
バイオリズム&月齢日記でイライラの周期がわかるかも!?
また、70%が水でできている人間の体は、月の満ち欠けとともに干満の差が変わる海と同じように、月から大きな影響を受けているそう。ウミガメやサンゴが、大潮の頃に産卵をすることはよく知られていますが、人間の平均妊娠期間は265.8日で平均朔望周期のぴったり9倍。出産も新月と満月の時期に増加することが統計的に明らかになっているのだそうです。
ということは、日によって、テンションが高くやる気に満ちていたり、なぜか元気が出ずイライラしたりというバイオリズムに、月が影響している可能性も。旧暦美人の会は、「それを自覚することで、落ち込んだ時に無駄に悩む必要がなくなり、ラクになるのでは」と、バイオリズム日記をつけることを提案しています。「旧暦美人ダイアリー」は、月の満ち欠けが入った見開き半年カレンダーのページを完備。ここに、心と体の調子を記入していくことで、月の朔望との相関関係を確かめてみるというアイデアです。
間近に迫った2009年。日本人のDNAに根付いているという旧暦を意識して、自然の一部である心や体の変化、季節の移ろいを、より身近に感じる1年にしてみてはいかがでしょうか。