毎日の食事に欠かせないお箸、あなたはきちんと使えていますか? 「箸に始まり箸に終わる」ということわざがあるほど、正しい箸使いは日本人にとって、基本的かつ大切な礼儀作法。デートや目上の人との会食、接待などの席でも、知らずに見られているかもしれません。そこで今回は、マナー違反とされるお箸の扱い方や、お箸にまつわる品のよい振る舞いのテクニックをお伝えします。
お話を伺った方:小倉朋子さん
日本箸文化協会代表。フードプロデューサーとして飲食店のメニュー開発など手がけるかたわら、テーブルマナーと食の総合教室「食輝塾」を主宰し、「『食』から心を豊かにし、美しく生きる」をテーマにした講演・啓蒙活動を行う。『グルメ以前の食事作法の常識』 (講談社刊)、『いただきますを忘れた日本人』(アスキー新書)など著書多数。懐石料理師範の資格も持つ。公式サイトはhttp://www.totalfood.jp/
知っておきたいお箸使いのタブー
まず、「してはいけない」お箸の扱い方である「嫌い箸」をおさらいしましょう。小倉さんによれば、「嫌い箸があるのは日本だけ。箸を単なる食事の道具ではなく、いのちの源である食べ物と人をつなぐ橋渡し役としてとらえる、日本人独特の"和心"があってのこと」だといいます。箸には魂が宿ると考えられているからこそ、自分の箸を他人の箸を区別したり箸の素材に木を使う。これも世界人口の3分の1に上る箸食文化の中で日本の箸文化だけなのだそう。お箸のマナーは、日本人らしさを映す鏡なのですね。
渡し箸:箸をおわんの上に渡して置くこと。「渡す」ことが「三途の川を渡る」ことを連想させ縁起が悪いほか、小倉さん曰くお米の上をまたぐことになるため、避けるべきとのこと |
振り上げ箸:口につけた部分を振ったり、他人に向けたりすること。酒席で話に夢中になり、ついついやってしまう人が多いとか。気をつけましょう |
ねぶり箸:箸先をなめたり、付いたご飯粒を歯でこそげ取ったりすること。写真のように、先に汁物をいただくと、箸先が汚れにくくなります。また、箸先1寸(3cm)より上は汚さずに食べるのが美しい箸使い |
そろえ箸:お皿やテーブルの上でとんとんと箸先をそろえること。後述する正しい方法でお箸を手に取れば防げます |
箸おきがないときは、小皿か箸袋にのせる
ところで、箸は本来、箸おきに乗せて休ませるものですが、自宅や居酒屋などで箸おきがない場合があります。この場合に、口をつけた箸先が食卓に触れるのを嫌って、ついつい渡し箸をしてしまう人が多いのだそう。ここで嫌い箸をしないですむテクニックが、写真のように、箸先を小皿に乗せるというもの。箸袋を折って箸おき代わりにしてもOKです。
食卓にあるお箸は両手を使って手に取る
次に、食卓に置かれた箸を手に取る時のマナーですが、写真のように両手を使うのが基本です。
また、ごはんやお味噌汁の入ったおわんは、持ち上げるのが美しい所作とされており、食卓から持ち上げるのは「最初におわん、次にお箸」が正しい順番。箸を先に持つと、箸を持った手でおわんを上から持つ「カップ持ち」になってしまうからです。以下の写真のように、先に両手を使っておわんを持ち上げ、おわんを持った手の指でそっと箸先を支えると、「お茶碗のごはんやお味噌汁をいただく」という行為を美しく見せることができます。
割り箸はおもてなしの心
ところで、最近は環境意識の高まりから、マイ箸を持つ人も増えているようですが、小倉さんによれば、「シーンの格によっては割り箸を使うべき」とのこと。懐石料理では料理の種類ごとにお箸をわけることからもわかるように、「大切なお客様には真新しいお箸を使ってもらう」というのが日本人のおもてなしの心なのです。ただし、割り箸を割ってからこすり合わせるのはマナー違反。自分がもてなす側に立ったときは、こすり合わせる必要のない、竹製の割り箸や、両端が細くなっている利休箸、上が斜めにカットされている天削箸(てんそげばし)を用意しましょう。
お箸を上手に使う姿はそのまま、食べることを大切にして丁寧に生きる姿となって同席した人を安心させます。自然で正しいお箸使いを身につけて、食事の席での印象美人をめざしたいものですね。