今年の夏こそ、浴衣でかっこよく決めたい。そう思っている方に、着物スタイリストの如月まみさんがプロの技を伝授する。浴衣は最強の「勝負服」。これさえ覚えれば、誰もがふりかえるカッコいい浴衣姿が楽しめる。
如月まみ(きさらぎ・まみ)
着物スタイリスト・着付け講師。女優やミュージシャン、安野モヨコはじめ、数多くの著名人のスタイリングをする他、着付け教室の主宰、スクールや企業セミナーなどの講師も務める。また自らも、テレビや映画などメディアに登場して活動の場をひろげている。また近年は、"蓼 胡真三(たで こまみ)"の名で、小唄の継承者としても活躍中。著書に『如月まみのデイリー着物コーディネート』(河出書房新書)、6月18日には初のDVD『如月まみ 着物の手ほどきいたします』(コロムビアミュージックエンタテインメント)が発売された。着付け教室情報などは如月まみ公式サイトで確認できる。
「浴衣は洋服と違い、衿、袖口、足元が開いているので風通しがよく、見た目だけでなく実際に涼しいんですよ。冷房が効いている部屋だと、寒いくらいです」と如月先生。なるほど、確かに浴衣は開口部が多い。しかも浴衣に使われる木綿は、汗をよく吸収し、通気性がよい。そもそも沐浴の際の汗取りの衣として生まれ、蒸し暑い日本の夏を快適に過ごす衣類として普及したといわれる。浴衣が涼しいのは、思えば当然のことなのだ。
浴衣をかっこよく着こなすコツを聞いてみると「やはり、着付けが大事です」との答えが返ってきた。自分の体に合った着付けをきちんとしているほうが、楽だし、きれいに見えるという。どんなに高価で良い浴衣や着物でも、着付けがいいかげんだったら、決してそれだけの価値ある品に見えないという。それほど、着付けは大事なのだ。そこでまずは基本の着付けをイラストで紹介しよう。
実は、浴衣の仕立ては男女で少し異なる。女性用は、脇に身八つ口という切れ目があったり、おはしょりといって着丈より長い布を腰でたくし上げる。だが、男性用の浴衣には身八つ口やおはしょりはない。丈も身長にぴったり合わせる。その分、男性のほうが着付けが簡単だ。
下着類をつけ(肌襦袢が最適だが、洋服のスリップも可。汗をよく吸い長めのものを)、浴衣を羽織って両袖を持ち軽く引いて、体の中心に合わせる。次に衿先を持ち、着丈を合わせる。裾がくるぶしにかかる程度が目安。上前になる左の見頃を、右腰のちょうどよい所に合わせて、下前に入れ替えて体に巻きつける。腰骨のあたりを紐で締め、身八つ口から手を入れておはしょりを整え、衿を少し抜く |
肌襦袢をつけ(U首シャツも可。素肌に着てもよい)、浴衣を羽織って両袖を持ち、軽く引いて体の中心に合わせる。上前に来る左の見頃を一度合わせてから下前と入れ替え、体にしっかり巻きつける。腰骨あたりで紐を締め、衿を首に添わせて、胸元はゆったりと合わせる |
続いて如月先生に、きれいに見える帯の結び方の基本を伝授していただいた。この帯の結び方をマスターして、今年の夏は浴衣でかっこよく決めていただきたい。
まずは、女性の帯結びを紹介。兵児帯の変わり結びは、初心者でも扱いやすい兵児帯を使い、浴衣でちょっと優雅に大人っぽい雰囲気を出したいときに最適の結び方だ。帯の素材や柄によっても、雰囲気ががらりと変わって楽しいという。「同じ兵児帯でも、可愛らしさが強調される蝶々結びとは対照的に、変わり結びは"大人の女性"の雰囲気を出せます。夏祭りや花火大会のお出かけにはピッタリですよ」(如月先生)
帯の長さが左右同じになるように、体に一回巻きつけてきゅっと一結びする。蝶々結びを作り、左右の羽をきれいに整える。長い「たれ」を羽の結び目の下からくぐらせて通し、帯の上方から出す。結び目の上から羽の上にふわっとかぶせるように垂らして完成。膨らみが出ないなら、結び目にタオルなどをはさめばふわっとする |
続いて男性の帯結びとしてお薦めの「片ばさみ」。時代劇で見かける着流し姿の侍が締めている帯がこれだ。別名「浪人結び」。江戸時代の浪人が好んで締めていたらしい。「あまり見かけない帯結びですが、結びコブができないので、クルマの運転や寝転んでも帯が気になりません。しかも簡単に結べる割には意外と緩みにくいので、長時間の外出にもぴったりの帯結びです」
帯の片方を手に取って半分の幅に折る(帯のこちら側を「て」と呼ぶ)。「て」の端が上方から出るように、残りの帯(「たれ」)を体に巻く。上方から出ている「て」の端と、体に巻いた「たれ」の残りが、同じくらいの長さに調整する。「て」と「たれ」をきゅっと結んで締め、「たれ」部分を結んだ帯にくぐらせて下から出す。形を整えてできあがり! |
続いて、他の人とは一味違う帯の結び方2種類を紹介しよう。
まずは女性向けの「矢の字」。結び目が、矢という文字に似ているところからこの名があると言われる。左右非対称のキリリとした結び目が、粋な大人の雰囲気をかもし出す。帯裏も表面に現れるので、帯によってはハッとする大胆な色柄が楽しめるのも「矢の字」の大きな特徴だ。「帯の背中部分がふくらまないので、椅子に座っても楽だし、着崩れしにくいんです。浴衣でのお出かけにはお薦めです」
帯の片方の先を半分の幅に折り、体に巻きつけた帯の上から数十センチ垂らす。垂らした帯と体に巻きつけた帯を交差させ、きゅっと結ぶ。その際、交差させた帯を全部引っ張り出さず、少し残す。引っ張り出した帯を畳んで輪を作り、半分に折って垂らしていた先端を中に通して結び、形を整える |
続いて男性向けの「かるた結び」。江戸時代から好まれた帯結びで、かるたが3枚並んでいるように見えることからこの名があるそうだ。別名「横一文字結び」ともいう。男女とも結べるが、男性が小ぶりに結ぶと粋な感じになる。「背中が真平らですから、背中をもたれても痛くありません。ただし、畳んであるだけなので、ちょっと緩みやすいからご注意を!」
帯の端を半分に折り、肩幅の長さを残して(「て」の部分)、体に2~3巻きする。「て」の部分を帯にくぐらせきつく縛る。逆側の端(「たれ」)を20cmほどに折りたたみ、「て」の部分をかぶせるように下げる。「て」を「たれ」の下を通して引き上げ、さらに帯の間を通して下に下げて蝶ネクタイのような形に整える |
もっと着物の世界を知りたいと思った方は、DVD『如月まみ 着物の手ほどきいたします』(コロムビアミュージックエンタテインメント)をチェック。このDVDは如月流着物ワールドの集大成となっており、着付けや着物のお手入れだけでなく、着物の楽しみ方、つき合い方まで手ほどきしてくれるという。如月先生によると「着物を着ると生活スタイルが変わる」そうだ。人からステキと思われるだけで、着ている価値があるともいう。「だけどね……」と、先生の言葉はつづいた。「たかが、着物。あまり難しく考えず、もっと気軽に楽しんでほしい」。なるほど、この夏は花火大会に夏祭りに、浴衣姿で大いに楽しもうではないか。
「如月まみ 着物の手ほどきいたします」
発売日 : 2008年6月18日
価格(税込) : 3,465 円
ジャケットイラスト : 安野モヨコ
企画・製作 : 如月プロ・コロムビアミュージックエンタテインメント
発売 : コロムビアミュージックエンタテインメント
url : http://columbia.jp/kimono/