6月25日、26日にさいたまスーパーアリーナで、タクティカルシューティングゲーム『VALORANT』のeスポーツイベント「2022 VALORANT Championship Tour Challengers Japan Stage2 Playoff Finals(VCT2022 JS2)」が開催されました。
「VCT2022 JS1」で優勝したプロゲーミングチーム「ZETA DIVISION」が、世界大会「VCT2022 Stage1 MASTERS」で3位となったことが記憶に新しいですが、今回はその「Stage2」の日本ファイナル。優勝チームは7月にコペンハーゲンで開催される世界大会「VCT2022 Stage2 MASTERS」への出場権を獲得します。
「VCT2022 JS2」では、5月から開始された予選を突破した7チームと「Stage1」で優勝した「ZETA DIVISION」がWeek1 Main Eventに進出します。
Week1 Main Eventでは、トーナメント戦を2組構成し、各ブロックの上位2チームがPlayoffに進出。さらにWeek2 Main Eventでは、予選で勝ち上がった4チームとWeek1 Main Eventで敗退した4チームによるトーナメントを2組構成し、それぞれ上位2チームがPlayoffに進出します。
Playoffでは、Week1とWeek2のMain Eventから勝ち上がった計8チームによるトーナメントを実施。ダブルエリミネーション方式を採用しています。今回「VCT2022 JS2 Playoff Finals」は、ロワーブラケットで勝ち上がった「Crazy Raccoon」と、アッパーブラケットで勝ち残った「NORTHEPTION」「ZETA DIVISION」の3チームで争われることになりました。
25日に行われるアッパーファイナルとロワーファイナルは、BO3(2勝勝ち抜け)で、26日に行われるグランドファイナルは、BO5(3勝勝ち抜け)形式。ダブルエリミネーション方式のトーナメントだと、全チームに一度負ける権利がありますが、今回のトーナメントでは、グランドファイナルでアッパー側が負けてもリセット(再度グランドファイナルを行うこと)になりません。その変わり、BO5と試合数が多くなっています。
アッパーファイナルでは、「NORTHEPTION」と「ZETA DIVISION」が対決。セットカウント2-0で「ZETA DIVISION」が勝利し、グランドファイナルの進出を決めました。
「NORTHEPTION」はロワー落ちとなり、ロワーファイナルで待ち構える「Crazy Raccoon」との対戦となります。ここで「Crazy Raccoon」をセットカウント2-0で破ったNORTHEPTIONが、翌日のグランドファイナルで王者「ZETA DIVISION」に再挑戦することになりました。
グランドファイナルでアッパー側は、7マップのうち2マップを排除(BAN)できるほか、1、3試合目のマップの選択権があり、2、4試合目の攻撃側、守備側のサイド選択権が与えられます。ロワー側はその逆で、2、4試合目のマップ選択権、1、3、5のサイド選択権があります。
アッパー側の利点は、不得意なマップもしくは相手が得意とするマップを2つ排除して、自分達が得意なマップを先行してプレイできること。ただ、マップを選んだ試合は相手にサイド選択権が発生するので、あからさまに有利とも言えません。
1試合目は「ZETA DIVISION」が選択したアイスボックス。一進一退の攻防のすえ、13-11で「NORTHEPTION」が勝利します。2試合目は「NORTHEPTION」が選択したヘイブン。圧倒的な強さで「ZETA DIVISION」が13-4で取り返します。
3試合目は「ZETA DIVISION」が選択したフラクチャー。今度は「NORTHEPTION」が流れを掴み13-4で勝利して優勝にリーチをかけます。
ここまでは、マップを選択した側がすべて敗北しており、アッパーの優位性が活かされておりません。4試合目は「NORTHEPTION」がマップを選択しているので、今大会の流れ通り、「ZETA DIVISION」が取り返すのか、「NORTHEPTION」が定石通り勝ちきるかが見どころでしたが、13-8で後半追い上げる「ZETA DIVISION」を突き放し、NORTHEPTIONが優勝を決めました。
今回の大会だけでなく、『VALORANT』の試合において、マップ選択権がサイド選択権より優位性を発揮しないのであれば、アッパー側はマップ選択権もしくはサイド選択権のどちらかを選べる形に変えるのもありではないかと感じました。
また、試合方式もBO5の一本勝負ではなく、ほかのルールを模索したほうがいいのではないでしょうか。現状ではアッパー側の利点が少なく思えました。
とはいえ、リセットありのルールにすると、アッパー側が最初のセットで2連勝してしまえば決着がつくため興行的にはやりにく、フルセットフルラウンドになるとかなりの時間が必要です。BO5でウィナーズ側に1勝のアドバンテージを与えた場合も最短で2試合で終わるので、これも最良とは言いにくいでしょう。どの形がいいかはまだ検討の余地があると思いますが、この問題はぜひ解消して欲しいところです。
なお、今回会場となったのは、さいたまスーパーアリーナ。中央にステージのあるセンターステージモードで開催され、常設席とアリーナ席合わせて1万3,000席を用意されましたが、両日とも完売の満席でした。「RAGE VALORANT 2022 Spring」に引き続き、大成功と言える結果でしょう。
動画配信も、2日間の最高同時接続数は50万人超えで、公式eスポーツイベントで有観客イベントの動画配信としては異例の数値をたたき出しています。2018年のeスポーツ元年からようやく、eスポーツが世間的に定着してきたと言えるのではないでしょうか。
筆者も満席の会場、超大型4面モニターが配置されたセンターアリーナのステージを見て、10数年前にさいたまスーパーアリーナで観戦したPRIDEを思い起こしたほどです。
1万3,000人の観客は、大会の規定に則り、声を出さず、スティックバルーンでの応援に終始し、コロナ禍の大会観戦の知見が発揮されていました。
なんでもかんでもオフライン大会を解禁すればいいというものではありませんが、しっかりとした感染対策をしておけば、有観客eスポーツイベントの開催は実施していってもいいのではないでしょうか。
さて、「NORTHEPTION」は7月10日から開催される「VCT2022 MASTERS COPENHAGEN」に出場します。かなり下馬評が低かった前回とは違い、世界3位の「ZETA DIVISION」を倒したチームが参加するということで、これまで以上のマークをされていることは間違いないでしょう。
また、前大会の成績を受け、視聴者もある程度の成績を期待していると言わざるを得ません。そういう意味では、今回のMASTERSはどのチームが出場しても厳しい大会になると思います。オフライン大会自体が始めてだった「NORTHEPTION」にとっては、海外遠征も厳しい環境となるはず。そのプレッシャーや境遇をはねのけ、いつものプレイをしてほしいところです。
また、応援する側としても、海外勢のほうが基本格上と理解し、温かく見守っていただければ。そして前回のMASTERSと同様に、眠い目をこすりながらライブ配信で応援しましょう。