2022年1月29日に、「ストリートファイターリーグ:Pro-JP2021(SFL2021)のグランドファイナルが開催されました。東京都の「イベント開催等における必要な感染防止策」に基づいた、有観客のオフラインで実施するとともに、ZAIKOにて有料のペイ・パー・ビュー先行配信も実施。1週間後には、YouTubeやミルダムなどで無料配信が開始されます。

  • ミルダムでは応援配信として、試合画面は映らないものの、お笑いコンビ「NOモーション。」による実況動画が配信されていました

SFL2021は、「v6プラスFAV Rohto Z!」「Good 8 Squad」「Saishunkan Sol 熊本」「コミュFADatonatioN」「忍ism Gaming」「Mildom Beast」「魚群」「名古屋OJA BODY STAR」の8チームが参加するチーム対抗のプロリーグです。各チームは、対戦格闘ゲーム『ストリートファイターV チャンピオンエディション(ストV)』のプロ4人で構成され、試合には3人が出場します。

グランドファイナルには、リーグ戦1位の「Good 8 Squad」とプレイオフを勝ち抜いた「Mildom Beast」、「v6プラス FAV Rohto Z!」の3チームが出場。「v6プラス FAV Rohto Z!」が見事優勝を果たしました。

本来であれば、優勝すると、日米のストリートファイターリーグの上位2チームによるストリートファイターリーグ「ワールドチャンピオンシップ」の出場権が得られるのですが、コロナのため開催が中止になりました。

リーグ戦は、すべてのチームと2回対戦するダブルラウンドロビン方式。同じ対戦相手とは、ホームとアウェイで戦います。アウェイ側は試合前にオーダーを開示しなくてはならず、ホーム側はオーダーに対して出場選手を決められるため、圧倒的にホームが有利。リーグ戦はポイント数によって競われ、先鋒戦と中堅戦はBO3で勝利すると1ポイント、大将戦はBO5で勝利すると2ポイントを獲得します。

  • アウェイ側は試合前に出場する選手とキャラクターを相手チームに提示しなくてはならず、ホーム側は先鋒戦前に先鋒の選手とキャラクター、リザーブの選手を発表します

リーグ戦は41ポイントを稼いだ「Good 8 Squad」が優勝。グランドファイナルへの出場権を獲得しました。2位は「v6プラス FAV Rohto Z!」、3位は「Mildom Beast」、4位は「忍ism Gaming」、5位は「魚群」となり、ここまでがプレイオフへの進出権を得ました。

  • リーグ戦の結果。1位の「Good 8 Squad」はグランドファイナル進出確定。2~5位のチームはプレイオフに参加し、グランドファイナルに進出する2チームを決めます

プレイオフでは、先に5ポイント先取したチームの勝利。リーグ戦の成績上位チームのホーム戦から開始され、3試合終わったところでホームとアウェイが入れ替わります。2位決定戦では「Mildom Beast」が「v6 FAV Rohto Z!」に勝利し、3位決定戦では「v6プラスFAV Rohto Z!」が「忍ism Gamig」を下した「魚群」に勝ち、グランドファイナルに進出しました。

  • プレイオフの結果。2位の「v6プラス FAV Rohto Z!」と3位の「Mildom Beast」が対戦し、「Mildom Beast」がグランドファイナル出場権を獲得。4位の「忍ism Gaming」を倒した5位の「魚群」を、「v6プラス FAV Rohto Z!」が下し、残りの出場枠を獲得しました

グランドファイナルは7ポイント先取。まずは「Mildom Beast」と「v6プラス FAV Rohto Z!」のカードです。プレイオフの2位決定戦と同じ組み合わせですが、ホームとアウェイが逆転しての対戦となりました。

お互い譲らず、ポイントを取り合う形で試合が進みます。そのまま6ポイントずつ獲得した状態で、4巡目に突入。ウメハラ選手対ときど選手の対戦にチームの勝敗がゆだねられる形になりました。

この組み合わせは今回で3試合目。1回目はウメハラ選手が勝利、2回目ではときど選手が勝利しています。これまでの2戦は大将戦だったのでBO5でしたが、最終戦は先鋒戦なのでBO3の短期決戦。フルセットフルラウンドまでもつれ込みますが、最後はときど選手が勝利を収め、グランドファイナル決勝戦に進出しました。

  • まさかの4巡目まで結果が持ち越され、v6プラス FAV Rohto Z!が勝利しました

グランドファイナルは、リーグ戦以来の登場となる「Good 8 Squad」とリーグ2位からプレイオフ、グランドファイナルを勝ち抜いた「v6プラス FAV Rohto Z!」の組み合わせ。「Good 8 Squad」は、メンバーの3人がリーグで11ポイント以上稼ぐ強者ぞろいです。リザーブに回ることの多かったキチパ選手も、獲得ポイントこそ少ないものの4戦3勝の好成績を残しています。

その中でも、獲得ポイントランキング1位となったガチくん選手の安定感の高さは目を見張るものがあります。「v6プラス FAV Rohto Z!」は、誰がガチくん選手を止められるかにかかっているといっても過言ではない状態でしょう。

1巡目、先鋒戦と中堅戦に勝利した「v6プラス FAV Rohto Z!」でしたが、大将ときど選手がガチくんに敗北。2巡目は先鋒戦と中堅戦で連敗したあと、大将sako選手がルークを出すも返り討ちにあい、1巡目の大将戦から4連敗してしまいます。

この時点で「Good 8 Squad」は合計6ポイント。優勝にリーチをかけます。3巡目は誰が勝ってもいい状態の「Good 8 Squad」。しかも、ホーム側と絶対的な有利な状態です。

  • 2巡目は「Good 8 Squad」が3連勝し、4ポイントを獲得。合計ポイントが6ポイントとなり、あと1ポイントで勝利が確定します

「v6プラス FAV Rohto Z!」は、先鋒のボンちゃん選手がかりんを使います。対する「Good 8 Squad」は、カワノ選手のバルログ。カワノ選手のバルログは「カプコンプロツアー 2021 日本大会3」のファイナルで、ウメハラ選手相手に選んでいましたが、勝利にはつながりませんでした。

今回、カワノ選手は、かりん戦だけに絞ってバルログを練習してきたと自信を見せます。しかし、1勝1敗の段階で、ボンちゃん選手がキャラクターをサガットに変更。カワノ選手がかりん戦以外そこまでプレイしていなかったためか、サガットにはバルログが通じず敗退してしまいます。ただ、レアキャラの登場に、試合は多いに盛り上がりました。

中堅戦はりゅうせい選手が勝利し、大将のときど選手に望みをつなげます。ここで、ときど選手がフルセットのうえ、勝利。3巡目に「v6プラス FAV Rohto Z!」がストレート勝ちを見せ、圧倒的不利な状況から同点に追いつきます。勝負の行方は、準決勝と同様に、4巡目まで持ちこされました。

4巡目の先鋒戦は、ときど選手とガチくん選手の3度目の対決。ダブルイリミネーショントーナメントでたとえるなら、ガチくん選手にルーザーズに落とされたときど選手がグランドファイナルで勝利し、リセットした状態です。

試合中にときど選手が対策として垂直ジャンプを多用すると、即座にその対策をとるガチくん選手。ユリアンの代名詞となるVトリガーの「エイジスリフレクター」をラシードの無敵技で返される場面が多々見られましたが、最終試合ではときど選手が逆に無敵技を多用して、ガチくん選手を追い詰めていきます。最後は垂直ジャンプの対応に対する対応を見せたときど選手が逆転勝利を果たしました。1戦ごとに対策を施し、次の対戦ではその対策に対する対抗策を出してくる、まさにプロゲーマーの対応力の高さが出た大会と言えるでしょう。

  • 垂直ジャンプからの攻撃が刺さり、大ダメージを与えるときど選手のユリアン

  • 「v6プラス FAV Rohto Z!」が優勝を決めました

「Good 8 Squad」は、2巡目終了時点であと1点取ればいい状態だったうえ、ホーム側だったため、リスクを冒さず、もっとも得点が取りやすい組み合わせを選ぶことが作戦としては正しかったのかもしれません。

1巡目のボンちゃん選手対キチパ選手の試合でも、かりんからサガットにキャラ変更していたことを考えると、バルログにもサガットで対応することは十分考えられたはず。もしくは、リーグ戦でボンちゃん選手に勝利しているガチくん選手が先鋒で登場する手もあったでしょう。

SFL2021では、ホーム側が圧倒的に優位だと、ずっと言われてきました。そこで3連敗するのは、実力以上に作戦やオーダーミスの可能性があるでしょう。それは2巡目で同じくホームで3連敗している「v6プラス FAV Rohto Z!」にも言えることです。もちろん、作戦がうまく機能しなかったこともあるでしょうが、やはりグランドファイナルに関してはほかの選択肢もあった気がします。

最後に「ストリートファイターリーグ:Pro-JP」の2022年シーズンの開催も発表されました。ストリートファイターリーグは、毎年少しずつレギュレーションが変更されており、それがいい方向に進んでいるように感じます。ルールが安定しないことよりも、リーグ戦として年々、改善されているほうが好ましいでしょう。

たとえば、前回までチームリーダー以外はドラフトで選ばれた選手で結成されたチームであったため、寄せ集め感が強く、チームの応援=選手の応援となりがちでした。また、そのチームリーダー自体も前回のカプコンカップの順位上位者から選ばれているため、毎年同じチームが出場するとは限らず、チームとしての継続性はありませんでした。しかし、今回は「忍ism」や「魚群」など、同じ所属ゲーミングチームのメンバーだけで編成できたところもあり、チームとしての存在意義が高まっています。

メンバー数が足りないため、「v6プラス FAV Rohto Z!」のように、いくつかのチームとスポンサーが融合したチームもありました。「FAV Gaming」にはsako選手とりゅうせい選手しか所属しておらず、ときど選手やボンちゃん選手はスポンサーが付いているものの、個人で活動しています。

また、同じくウメハラ選手とふ~ど選手しか所属していない「Mildom Beast」は合併でなく、ドラフトでメンバーを補充。新設された「名古屋OJA Body Star」や「再春館SOL熊本」は、元々のメンバーがいなかったため、少ないコアメンバーに加え、トライアウトからプロになったばかりの選手を中心にドラフトしています。これらのチームは、単一チームや合併チームに比べ、戦力差があることが開催前から指摘されていました。今回、準優勝となった「Good 8 Squad」は、SFLに向けて、もっともいい形でチーム無所属のメンバーを集められた印象です。

一方で「名古屋OJA Body Star」や「再春館SOL熊本」には地域性があります。来年以降もこのチーム編成で行くのであれば、継続してチームを応援できる土壌ができていくでしょう。

ルールとしては、相手選手の得意キャラクターを使えなくするBANシステムが、選手にとって最高のパフォーマンスを出せなくなる弊害が生じていたので、今回のホーム&アウェイシステムに変更されたのは大きな改善点でした。

2022年シーズンはさらなる改善を期待し、より選手もファンも楽しめるリーグになることを期待しています。