10月30日、31日に、「Capcom Pro Tour 2021」(CPT)の「日本大会3」がオンラインにて開催されました。大会名にあるとおり、今回は2021年では3回目の日本大会。「日本大会1」は、プロゲーミングチーム「魚群」のマゴ選手が、「日本大会2」はプロゲーミングチーム「忍ism」のひぐち選手が優勝し、「CAPCOM CUP VIII」(カプコンカップ)への出場権を獲得しています。

「日本大会3」は、日本で行われている『ストリートファイターV』のプロリーグ「ストリートファイターリーグPro-JP2021」の真っ只中に開催していることもあり、どの選手もかなり仕上がっていると言えるでしょう。そんななか、優勝したのは、プロゲーミングチーム「Mildom Beast」に所属するウメハラ選手でした。

2020年のCPTもオンラインで開催されましたが、オンライン大会が開催地域在住者しか参加できないこともあり、カプコンカップへの出場権を得られた日本人はウメハラ選手とガチくん選手の2名のみ。コロナ禍以前は日本人選手が世界各国の大会に参加し、ポイント上位を占めていたので、カプコンカップ出場者の半数以上が日本人選手でしたが、オンラインでは日本人選手の出場枠は激減しています。

しかも、ドミニカ共和国で開催予定だった「カプコンカップ 2020」は、新型コロナウイルス感染症の影響で中止。ウメハラ選手にとっては、出場権を獲得したにもかかわらず大会が開催されなかった無念を晴らすチャンスを獲得した形です。

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    2020年に引き続き、CPTで優勝してカプコンカップの出場権を獲得したウメハラ選手

なお、予選参加人数321人の中からファイナリストとなったのは、ウイナーズサイドはカワノ選手、ウメハラ選手、どぐら選手、もけ選手の4名。ルーザーズサイドはぷげら選手、YHC-餅選手、藤村選手、sako選手の4名です。

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    CPT2021日本3のファイナリストに残った8名

注目は3度にわたって繰り広げられた師弟対決

今回注目したいのが、カワノ選手とウメハラ選手です。ウメハラ選手は、カワノ選手が上京してからずっと面倒を見てきたいわば師匠的な存在。ストリートファイターリーグやTOPANGAリーグなど大舞台での対戦はすでにありますが、CPTでの対戦は初めてです。

この師弟対決は、ウイナーズの初戦、グランドファイナル、グランドファイナルリセットと3度行われますが、いずれも名勝負。ウイナーズの初戦でカワノ選手は、これまでほぼ一択だったキャラ「コーリン」を使わず、バルログを使用します。長いリーチと数々の弾抜けを駆使し、攻め立てるものの、あと一歩届かず敗退。ウメハラ選手は、カワノ選手がバルログを使うことを予測しており、バルログ使いのトップランナーである冷血選手に練習相手をしてもらい、対策を練っていました。

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    マタドールターン、Vシフト、EXクリムゾンテラーとさまざまな技で飛び道具を抜けてくるカワノ選手のバルログ

ルーザーズに落ちたカワノ選手は、使用キャラをコーリンに変更。グランドファイナルで待つウメハラ選手の元へのぼりつめます。

グランドファイナルでもコーリンを選択し、3-2の辛勝ながらカワノ選手がリセットを達成します。しかし、リセット後は温存していたEXサマーソルトキックを効果的な場面で使用したウメハラ選手が主導権を握り、3セット連取で優勝を決めました。

どの試合も圧巻でしたが、リセット2マッチ目の2ラウンド目はまさにベストバウト。お互いに信用しきった行動の裏をかき、最後の最後で、カワノ選手の歩き投げを警戒したしゃがみパンチに対して、後ろ歩きソバットでフィニッシュします。この展開は、グランドファイナル3セット1ラウンドでも決めていた技でした。

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    カワノ選手のコーリンのしゃがみパンチを後ろにさがって避け、ソバットで反撃するウメハラ選手のガイル

ほかにもウメハラ選手は、先の2試合ではほとんど出してこなかった無敵技であるEXサマーソルトキックをここぞの場面で出してきたり、カワノ選手が最後に警戒せざるを得なかった歩き投げを放ったりと、クリエイティブにとんだ戦いかたをしていました。

これは長期戦が得意とされるウメハラ選手の真骨頂だといえます。以前、獣道というイベントの、ときど選手との10先勝負で、溜めキャラ(一方向にレバーを一定時間入れてないと必殺技が出ない)にもかかわらず、溜めをせずにニュートラルのノーガード戦法を見せたときも、長期戦ゆえの対応力を見せつけました。

今回も同じ相手に3先を3回やったことが、結果的に長期戦と同じように、カワノ選手をじわじわと追い詰めていったのではないでしょうか。

試合後のインタビューでは、カワノ選手の成長や、40歳でもプレイできていることなど、ウメハラ選手の心情がわかるコメントを寄せていました。

筆者も大会参戦! まさかの優勝者とマッチング

さて、もはやお馴染みですが、今回も筆者は大会に参加してきました。プールの組み合わせはかなり絶妙。1勝すればウメハラ選手と対戦です。また、筆者と知り合いでeスポーツマンガ『東京トイボクシーズ』を連載中の漫画家・うめ(妹尾)先生は、1回勝てばときど選手と、同じく漫画家のたき先生は1回勝てばガチくん選手との対戦という組み合わせでした。

筆者の初戦は不戦勝となり、いきなりウメハラ選手戦です。実力差はメジャーリーグとリトルリーグくらいありますが、ウメハラ選手は相手のキャラクターの対策をしっかり取っており、超格下相手でもまったく油断をしない戦いっぷりでした。

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    ウメハラ選手のミルダム配信。2回ほど投げることができたのは、いい思い出になりました

たき先生も同ランク帯の相手を倒し、ガチくん戦が実現。ガチくん選手は、途中、コンボからのCAでたき先生の春麗を倒しきれなかったことに懸念しており、試合後に倒しきるコンボについて検証をしていました。どんな試合でも無駄にしないところはプロ選手たる所以でしょう。

うめ先生は初戦敗退したのち、ルーザーズで、“ライター界最強バルログ”と噂のテクニカルライターの西川善司氏と対戦するという組み合わせの妙が発生します。格上の西川善司氏が勝利しましたが、1ラウンド獲得し、CAなどの大技を叩き込むなど、かなりいいシーンもありました。大会出場したあとの恒例となったうめ先生のファンアートからも高い満足感がうかがえます。

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    ガチくん選手のミルダム配信。倒しきりを狙ったCAコンボでわずかに体力が残ってことに対して、すぐに試合後に対策を練っていました

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    1本目を先取するうめ先生。このあとはすべて西川善司氏が勝ち取りました

何度も言っていることですが、オープン大会には、アマチュアもプロも初心者も上級者も関係なく、制限なく出場できます。今回は組み合わせがよく、多くの仲間がプロ選手と対戦できました。

ある程度強い選手でしたら、勝ちにくいプロ選手とのマッチングを「運が悪い」と思うかもしれませんが、とにかく大会で楽しみたい層としてみれば、プロ選手との対戦はいい思い出になるでしょう。とりあえず、リプレイは保存しておきたいと思います。

カワノ選手とウメハラ選手以外にも、さまざまな選手が熱戦を繰り広げ、大会を盛り上げていました。視聴者としても参加者としても類を見ない大会だったと感慨深く思います。

CPT2021も残すところあと10大会。日本大会も1月22日と23日が残っています。まだ参加したことがないプレイヤーはぜひ参加してみてはいかがでしょうか。そして、プレイしたことがない人も配信を視聴し、その熱さを感じてみてください。

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