日本eスポーツ連合(JeSU)主催の大学生eスポーツ競技大会「Japan University eSPORTS Championship:U-Champ.~日本学生eスポーツ競技大会~(U-Champ)」が4月24日と25日に、埼玉県・ところざわサクラタウンで開催されました。U-Champはニコニコ超会議のコンテンツの1つでもあり、JeSU主催の初の大学生eスポーツ大会です。
3つのタイトルで開催された大学生eスポーツ大会
競技は『Playground UNKOWN’S BATTLEGROUNDS(PUBG)』『eFootball ウイニングイレブン 2021(ウイニングイレブン 2021)』(モバイル版)『ストリートファイターV CE(SFV)』の3タイトル。いずれも、出場するのはオンライン予選を勝ち抜いた選手です。
『PUBG』では全22名が24日のオンライン決勝大会に進みました。ルールは、5ラウンドを戦い、すべてのラウンドで獲得したポイントの総数が多い選手が優勝。順位によるポイントと相手を倒したキル数によるポイントをカウントします。
決勝ではまずkikutaka_0325選手が、ラウンド1で最後の1人まで生き残るドン勝を獲得。順位10ポイントとキルの5ポイントをゲットします。そして、幸先の良いスタートを切ったあと、2ラウンド目も4位で3キルを獲得。3ラウンド目は2位で3キル、4ラウンド目は順位ポイントを獲得できなかったものの、ほかの上位選手も同様に高ポイントを得られず、5ラウンド目に3位1キルと好成績を残します。
その結果、同じく安定して高ポイントを獲得していたSy4N選手(北海道情報大学)を押さえ、kikutaka_0325選手が37ポイント13キルで総合ポイント1位を獲得しました。
『ウイニングイレブン 2021』では、8名が25日の決勝大会に進出。会場のサクラタウンでオフラインの決勝大会が開催されました。
4名ずつが2つのグループリーグに分かれ、各グループ1位の選手がグランドファイナルへと進出します。グランドファイナルにはグループAのポンジュパリピコ選手(福岡大学)とグループBのMASASHI選手(駒澤大学)が進出。グランドファイナルはBO3で先に2勝した選手の優勝となります。
1試合目は2対2のまま延長戦でも決着が付かずPK戦に。ポンジュパリピコ選手が脅威の4連続セーブを決め、1試合目の勝者に。2試合目は4対3でMASASHI選手が勝利し、ラウンドカウント1対1で最終の3試合目を迎えます。
最終戦は、前半戦がお互いシュート0本と慎重な展開。数少ないチャンスからエヴェラウドがドリブルシュートを決め、これが決勝点となり、MASASHI選手(駒澤大学)が優勝を決めました。
『SFV』は、8名が25日のサクラタウンのオフライン会場で開催される決勝大会に進出しました。ルールは、2回負け抜けのダブルエリミネーション方式。グランドファイナル以外は2本先取のBO3で争い、グランドファイナルは3本先取のBO5で勝負を決めます。
ダブルエリミネーション方式ではありますが、グランドファイナルでのリセット(1度も負けていない側が敗退したとき、再度、決勝戦を行うこと)はなく、BO5で勝利した選手が優勝となります。
ウイナーズサイドで勝ち残った4人は、JeSUが発行するプロライセンス保持者であるシノビズム/ひぐち選手(青山学院大学)のほか、ストリートファイターリーグに参加した強豪プレイヤーのもっちゃん選手(名古屋学院大学)とオニキ選手(国際武道大学)、そしてストリートファイターリーグのプレシーズン大会の決勝トーナメントに進出したプロライセンス保持者の工藤選手(日本大学)。そんな強豪ひしめくなか、ひぐち選手がウイナーズからグランドファイナルへ進出します。
ルーザーズでは、工藤選手がもっちゃん選手を破りグランドファイナルへ進出しました。グランドファイナルは、果敢な飛び込みでアグレッシブな戦いをみせたひぐち選手がセットカウント3-1で勝利。2020年に開催された「ストリートファイターリーグ:Pro-JP 2020」のプレシーズン大会ファイナルトーナメントにて、レジェンドウメハラ選手とのガイルミラーマッチを制して優勝した実力はU-Champでも遺憾なく発揮されていました。
JeSUの岡村会長にインタビュー
今回、JeSUの岡村会長にインタビューする機会があったので、大会について話を聞きました。
――U-Champの開催意図とその目的を教えてください。
岡村秀樹会長(以下、岡村):大学生のeスポーツの土壌を拡げることが目的です。日本では、リアルスポーツも高校生大会が注目されがちですが、国際的には大学の大会、ユニバーシアードが中心です。
eスポーツもそうなる可能性があるので、早めに開催したいと思っていました。ただ、1度開催して終わりでは意味がなく、継続していくことが重要だと考えています。
国体の文化プログラムの一環として開催されてきた全国都道府県対抗eスポーツ選手権も、初年度のいばらき国体では、大井川知事が精力的な後押しをしてくれたおかげで、多くの人に周知できました。
2020年は、残念ながらかごしま国体と文化プログラムは開催できませんでしたが、全国都道府県対抗eスポーツ選手権はオンライン形式で開催できました。その実績をもって、2021年開催の三重国体では地方行政や教育委員会などが惜しみなく協力体制を整えてくれています。それもこれも継続してきたからこその結果でしょう。
――今回、採用された3タイトルを選んだ理由はなんでしょうか。
岡村:大学生のスキルが発揮できるタイトルであれば、さまざまなものにチャレンジしていこうと思っています。選定に関しては、人気度、歴史などいろいろなベクトルから決めました。
――バトルロイヤルゲームや対戦格闘ゲームなど、高校生大会では避けられた感のあるタイトルが採用されていますが、これも大学生という年齢が影響されているのでしょうか。
岡村:そうですね。物事に分別が付けられる大学生だからこその選定とも言えます。これはダメ、あれはダメとタブーを作るのは良くないことですし、幅を拡げていくフェーズに入ったと思います。
――今回の大会を開催し、手応えとしてはいかがでしょうか。
岡村:情勢が情勢だけに、無観客での開催となりました。できれば観客は入れたかったですが、そこは仕方ないですね。今後、情勢が良くなっていけば、観客だったり、大学の応援団だったり、選手を支える人たちも一緒に参加してほしい。大会の動画も観ていましたが、多くのコメントをいただき、モニター越しでも盛り上がっていたので、そこは満足しています。コメントもポジティブなものが多く、楽しんでもらえたのではないでしょうか。
――今後の展開はどんな感じでしょうか。
岡村:大学生なので、試験や就活の邪魔にならないように調整が必要ですが、定期的に開催できるよう日程を模索し、定着を目指していきたいですね。
今は全世界的に外出がままならない状況。今回の大会も『PUBG』部門は自宅からの参加となりました。2020年の全国都道府県対抗eスポーツ選手権もオンラインで開催しています。オンラインで対応できるのは、ほかのエンターテインメントイベントにはない特徴と言えますので、今後もこういった対応をしていくと思います。
JeSUとしては、サウジアラビアとの国際マッチを予定しています。サウジアラビアと日本で、ホームアンドアウェイ方式で対戦する計画です。10月には三重国体の文化プログラムとして全国都道府県対抗eスポーツ選手権を開催。どちらもコロナ禍の情勢次第ではありますが、安全上に配慮したうえで開催したいと考えています。
――ありがとうございました。
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今回のU-Champは、さまざまな点で新たなeスポーツ大会の可能性を示すエポックメイキング的な側面もあったと感じました。
その1つが、採用タイトルです。これまで高校生大会では、殺し合いをするシューティングゲームや、暴力表現、過激な衣装のある対戦格闘ゲームは選定タイトルから外れていました。その結果、人気タイトルが採用されない結果にもつながり、コミュニティのゲーム大会とは真逆の趣旨での開催だったように感じます。
今回は、JeSU主催ながら、JeSUのライセンス認定タイトル以外のタイトルを採用していることからも、大学生のために選んだことがうかがえます。今後も参加者に即したタイトル選びを期待したいところです。