3月13日と14日に「第3回 全国高校eスポーツ選手権」の決勝大会が開催されました。全国高校eスポーツ選手権は、全国の高校、高専、通信制高校、定時制高校に通う生徒を対象に、『ロケットリーグ』と『リーグ・オブ・レジェンド』の2タイトルで争われるeスポーツイベントです。
今回で第3回を数え、eスポーツの知名度向上とともにその参加チーム数は増えています。第1回は153チーム、第2回は222チーム、そして今大会では、194校346チームがエントリーしました。
今回はコロナ禍ということもあり、初のオンライン形式での開催。ロケットリーグ部門は11月21日から23日に、リーグ・オブ・レジェンド部門は12月12日、13日、19日、20日にオンライン予選を行いました。決勝大会もオンライン形式です。
ロケットリーグ部門、リーグ・オブ・レジェンド部門どちらも、8つのブロックにわけ、予選を行い、各ブロックの優勝チーム8チームから、上位4チームに絞り込む予選決勝を実施。決勝大会の進出チームを決定しました。
ロケットリーグ部門は、「N高校 NRLG Cats」「大阪府立大学工業高専 hogehoge」「釧路工業高専mirage virtual Calimba」「東海大学付属札幌高校 FSC」の4チームが決勝大会に出場し、「N高校 NRLG Cats」が優勝しました。
優勝した「NRLG Cats」は、決勝大会で1ゲームも落とさず優勝するという快挙を達成。準決勝の「mirage virtual Calimba」戦は5-0、9-1、3-1と圧倒的な強さを示し、決勝の「hogehoge」戦も2-1、3-2、6-1で一度もリードを許さず勝利しました。
今回は、大会がオンラインだったことに加え、N高校が通信制高校で生徒が全国各地からオンラインで授業を受けていることもあり、チームメンバーが顔を合わせたのは、決勝大会の3日前。それでも、見事な連携をみせ、圧倒的な勝利を得たのは、個々の能力の高さだけでなく、オンラインでの練習に慣れていた結果でもあるでしょう。
リーグ・オブ・レジェンド部門は、「N高校 KDG N1」「アートカレッジ神戸 アートカレッジ神戸A」「ルネサンス高校 野菜鶏レモン味」「N高校 Team No Plan」の4チームが決勝大会に出場し、N高校 KDG N1が優勝しました。
優勝した「KDG N1」は、「第1回 全国高校eスポーツ選手権」から出場している決勝大会常連のチーム。第1回ではベスト4を記録しています。第2回では第1回のリベンジを果たし、見事優勝。今回は連覇となりました。
今回の決勝大会は、準決勝で同じN高校の「Team No Plan」と、決勝戦では「アートカレッジ神戸A」と対戦しましたが、どちらも2連勝のストレート勝ち。チームメンバーのまりも選手とShakespeare選手は、すでに練習生としてプロチームに所属しており、ほかのメンバーも一緒にプレイ、練習しています。まさに、群を抜いたチームが順当に優勝したと言えるでしょう。
「KDG N1」は、第2回大会に参加したメンバーが4人いたこともあって、大会の経験値の高さも伺えます。ただ、第2回は転校してきてチームに途中から参加したShakespeare選手がチームのカラーと合わず、調整に難航したと言います。
優勝後のインタビューでは、「KDG N1は僕を中心として、僕が動きやすいようにメンバーがフォローしてくれるところが強みでした。そこにShakespeare選手が加わり、突出した部分が増えたことで、そのチームバランスが崩れてしまいました。そこから尖っている部分をひとつにするのは大変でした」とまりも選手が当時を振り返ります。
「N高に転校するまでは固定のチームで戦ったことがなく、自分が活躍することで勝利できる戦いをしていました。KDG N1に入ってからはチーム戦を教わり、1人で戦うことも減りましたね。また、キル(相手を倒すこと)よりもネクサス(防衛拠点、これが破壊すると勝利)を倒すことを考えるようになりました」とShakespeare選手はN高に転向してきてからの変化を話しました。
プロチームの練習生になる実力のあるエース同士がぶつかり合いながらも、ワンチームとして活動できるところに「KDG N1」の強さがあったわけです。
また、両部門の優勝チームも、今大会で一番強敵だったと思えるチームは、同じN高校の別チームだったと話していたこともあり、N高校の層の厚さを感じました。
今回はオンライン大会だったため、直接顔を合わせて対戦する機会がなく、同級生や家族の声援を受けての試合とならなかったのは、やはり残念でした。
それでもオンラインならではの新しい試みもあり、視聴者としては楽しめる大会になったと思います。そのひとつが、選手同士の会話であるボイスチャット(VC)の配信。すべての場面ではなかったですが、試合を決する終盤や準備段階でチームがどういった会話をしているのかを聞けたのはおもしろい試みでした。
特にリーグ・オブ・レジェンド部門の、試合開始前に140体以上いるチャンピオン(操作するキャラクターのこと)を選ぶドラフトの場面では、相手に使わせないようにするバン、自分達が使うチャンピオンを選ぶピックについて、何を考えて選んでいるのかが分かり、よりその後の試合展開でチームの考えや戦略が分かるようになりました。
大会の最後には第4回の開催が発表されました。まだ、多くの高校ではeスポーツ部の発足に懸念を抱いているところもあり、運動部の全国大会や文化部の全国コンクールに比べると参加校数もまだまだ少ないのが現状です。大会後に次回の開催をするかどうかの発表をするまでもなく、当然やると思えるくらいの安定度と歴史を積み重ねてほしいところです。
写真提供:全国高校eスポーツ選手権