2021年3月6日に、第3回「eBASEBALLプロリーグ SMBC e日本シリーズ」が行われました。

今回の「eBASEBALLプロリーグ」は、コロナ禍により例年通りの大会運営やスケジュールで行うことができず、基本的に無観客による収録配信で実施されました。また、1試合の規定イニングが6回から5回に変更されただけでなく、『eBASEBALLパワフルプロ野球』最新バージョンの仕様も大きく変更。さまざまな面で対応を迫られるリーグ戦だったといえます。

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    「eBASEBALL プロリーグ」は、『実況パワフルプロ野球』を使用したプロ野球eスポーツリーグ。日本野球機構(NPB)とコナミデジタルエンタテインメントが共催します

eペナント、eクライマックスシリーズを経て、DeNAとソフトバンクが激突

eクライマックスシリーズとe日本シリーズは、緊急事態宣言が発令されたことにより、延期を余儀なくされ、約1カ月遅れて開催されました。

eクライマックスシリーズに出場したチームは、セ・リーグがDeNA、阪神、巨人、パ・リーグがソフトバンク、オリックス、西武の3チームずつ。セ・リーグは3位の巨人が阪神を下し、DeNAとの決勝戦へ進みます。eクライマックスシリーズの決勝戦は、DeNAと巨人が1勝1敗1分でしたが、ペナントレースを1位で通過したDeNAがe日本シリーズへの進出を決めました。

パ・リーグは、2位のオリックスが西武を下し、勝ち進みましたが、こちらも決勝戦でソフトバンクがeペナントレース順位の優位性を活かし、1勝1敗1分で優勝を決めます。

前回は、セ・リーグ2位の巨人が下剋上を果たし、e日本シリーズまで制しましたが、今回はeペナントレースの優勝チームが、それぞれe日本シリーズへ進出という順当な結果となりました。

e日本シリーズは、規定イニングが9回、3人の選手が3イニングで交代するリレー方式で対戦します。9回終了時で同点の場合はタイブレーク方式の延長戦に突入。初戦はくじ引きにより、先攻ソフトバンク、後攻DeNA、DH制なしで行われました。

出場する選手、出場順などのロースターは事前に申請する必要があり、試合当日には決定していましたが、ソフトバンクの加賀谷選手が体調不良のため、3選手での出場(1チームの所属選手は各4人)です。加賀谷選手が出場するはずだった場面では、その試合に出場する予定のなかった選手が急遽出場しました。

加賀谷選手はソフトバンクのキャプテンを務め、首位打者、最多本塁打、最多打点のパ・リーグタイトルを獲得するほどの実力の持ち主。試合内容を評価・順位化した「プロリーグランキング」で1位に輝く、eBASEBALL最高峰の選手です。精神的支柱であり、最大戦力である加賀谷選手の欠場は、ソフトバンクに大きなハンデを背負わせる形となりました。

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    体調不良で出場がかなわなかった加賀谷選手のユニフォームを掲げる原選手

かたや、DeNAは盤石の体勢。ソフトバンクの加賀谷選手に次ぐ、プロリーグランキング2位の辻選手は、1年目ルーキーながら最多本塁打、最多打点、最優秀防御率のセ・リーグタイトルを獲得する期待の新人です。3年連続DeNAで活躍する河合選手と大茂選手と、兄貴的存在でチームを支える山本選手の布陣でソフトバンクを迎え撃ちます。

DeNAはeBASEBALLの初年度である2018年度にリーグ優勝したものの、e日本シリーズで西武に敗退。2度目の挑戦となる今回は、2018年度のリベンジを果たしたいところです。

初戦は、1番手で出場する予定だった加賀谷選手に替わって原選手が出場しますが、いきなりの失投。それを見逃さずスタンドに叩き込んで、辻選手が先制します。

しかし、2回裏にタイムリーヒットでソフトバンクが同点に追いつき、6回裏には大上選手最後の攻撃で5点を獲得するビッグイニングを達成。DeNAは、7回から出場した河合選手が3点を返すも届かず、初戦はソフトバンクが勝利しました。

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    初回、辻選手がいきなり2ランで先制します

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    失投してしまった「千賀投手」のタイムリーで、ソフトバンクの原選手が同点に追いつきます

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    5点ビハインドのなか、DeNAはホームランで2点を返します

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    キャプテンとしてチームを牽引し、第1試合では次につながる猛追を見せた河合選手

2戦目は初戦とルールの入れ替えが行われ、先攻DeNA、後攻ソフトバンク、DHありでの勝負です。

初回、先制点を取ったのはソフトバンク。これまでeクライマックスシリーズからすべて相手チームが先制していたので、初の先制点です。2番手の選手に交代した4回裏、DeNAの辻選手が3点をもぎ取り、逆転するも、5回表にはソフトバンクの平山選手が4点取り返し、再度逆転。そして、ソフトバンクは、3番手の大上選手がダメ押しの2点を獲得し、e日本シリーズ優勝を決めました。

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    防御率0.90と、これまで好守を見せていた辻選手から一挙4点をもぎ取った平山選手

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    チーム最年長としてメンバーの支えとなった山本選手

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    1戦目、2戦目とも大車輪の活躍をみせた大上選手

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    3年連続の同一タイトル、最多奪三振を獲得した大茂選手

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    優勝を決めたのはソフトバンク

大会終了後は、各部門賞の表彰式も行われました。
受賞した選手は以下の通りです。

セ・リーグ
首位打者:森翔真選手(打率.376)
最多本塁打:辻晴選手(8本)
最多打点:辻晴選手(25打点)
最優秀防御率:辻晴選手(0.90)
最多奪三振:大茂英寿選手(13)

パ・リーグ
首位打者:加賀谷颯太選手(打率.392)
最多本塁打:加賀谷颯太選手(11本)
最多打点:加賀谷颯太選手(28打点)
最優秀防御率:大上拓海選手(0.83)
最多奪三振:平山大輝選手(13)

Best Proleague Player(プロリーグランキング1位):加賀谷颯太選手
MVP:大上拓海選手

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    MVPのトロフィーを掲げる大上拓海選手

かなり波乱含みの大会となった2020年度のeBASEBALLでしたが、これにて無事終了です。eBASEBALLは、プロ野球の成績がゲーム内の成績に反映し、チーム力に差がある状態で戦わなければなりません。したがって、プロ野球の成績がeBASEBALLの成績に直結するわけです。また、eBASEBALLの結果は、プロ野球選手を沸き立たせる要因になりつつあり、そういう意味では、もはや、eBASEBALLは野球ファンに欠かせない存在になってきているのではないでしょうか。

2021年はプロ野球とeBASEBALLの両方が盛り上がり、どちらも例年通り多くの観客の前でプレイできるように願いたいところです。

大会を終えて、解説と選手にインタビュー!

大会終了後に解説陣、DeNAの選手、ソフトバンクの選手にインタビュー実施しました。最後にその様子を掲載し、2020年度のeBASEBALLを締めたいと思います。

まずは、e日本シリーズ第2戦で解説を務めた真中満氏、森本稀哲氏に話を伺いました。

――2020年度もeBASEBALLが終わりました。感想はいかがでしょうか。

真中満氏(以下、真中):コロナで日程的に厳しいところがあったけど、e日本シリーズまでできて、結果的によかったね。

森本稀哲氏(以下、森本):大変な時期にリーグがスタートしましたが、無事に終われてよかった。eスポーツは本当の野球ではないですが、解説をやっていて、リアルの野球に近いと感じています。

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    ミスターeBASEBALLと言える貢献度の真中満氏

――過去3年間で、レベルや戦いかたに違いは感じていますか?

真中:今回はルーキーの活躍が目立ってましたね。選手層が拡大していて、裾野が広がっている感じがする。まだ参加していない人にもチャンスがあると思いますよ。もちろん、ベテランもがんばっていましたね。

――コロナ禍での開催で、大変だったことはありますか。

森本:会場の選手の雰囲気やチームの結束については、画面では伝わりにくいものがあり、肌でふれてもらえませんでした。チームメイトとの会話や相手チームとの駆け引きなど、生の感覚が伝えきれなかった。熱量として受け取れなかったのは残念です。

真中:スタジオに客がいないのは寂しさを感じました。選手もモチベーションにつながらなかったかもしれませんね。

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    加賀谷選手やリモートで参加したタイトルホルダーに変わり、表彰を受けた森本稀哲氏。大会以上に湧かせていました

――eペナントレース、eクライマックスシリーズ、e日本シリーズを振り返って、印象に残った試合はどれでしょうか。

真中:辻晴のデビュー戦はすごかった。すごい選手が出てきたという印象を植え付けられたね。

森本:ロッテの柳選手、若い選手がベテラン選手のフォローに回ったり印象的でした。若手が活躍した1年だったと思います。

――続いて、セ・リーグ優勝、e日本シリーズ準優勝の横浜DeNAベイスターズの選手です。e日本シリーズを振り返ってみて、感想をお聞かせください。

河合祐哉選手(以下、河合):結論から言うと、いつも通りのパフォーマンスができなかった選手が多かったと思います。加賀屋選手の欠場という弱点を突くべきだったんですが、できませんでした。

――加賀谷選手の欠場は、戦力的には優位に働いたものの、対策としては外してしまったのでしょうか。

大茂英寿選手:相手の対策よりも、「自分ができることをしっかりやる」と考えているので、加賀谷選手の欠場により対策がハズレたようなことはありませんでした。

――コロナ禍で例年と大会状況が変化し、ゲームシステムもかなり変わりましたが、どんな1年だったでしょうか。

河合:eBASEBALLがスタートしてからの2年間は、生配信、観客ありでやっていましたが、今回から無観客の収録になりました。ゲームシステムとしても、ボールになる変化球がバットに当たらなくなるなど、変更点があり、いろんな面で対応することが多かったですね。どこも苦労していたことだと思いますが、一応、リーグ優勝をしたので、そのなかでも対応できていたほうだと思います。

――初めてeBASEBALLに参加した辻選手は、1年を振り返ってみてどんな感想をお持ちでしょうか。

辻晴選手:チームメンバーが、試合のときに好きなようにやればいいと声をかけてくれて、自由にプレイさせてくれてました。そのあと押しが初戦の大量点の試合につながり、結果として、5勝1敗の好成績を残せました。

――最後に、日本一になった福岡ソフトバンクホークスにお話を伺います。1年を振り返っての感想をお聞かせください。

大上拓海選手(以下、大上):チームとしてはいい感じに勝ちを重ねてきましたが、楽なシーズンではありませんでした。でも、チームがいい雰囲気でやれていたのは、良かったと思います。ベストなパフォーマンスをしていたと思いますが、なかなか波に乗りきれなかったところもあり、最後まで優勝争いしていましたね。

――加賀谷選手の欠場での対策や施策はあったのでしょうか。

原健四郎選手(以下、原):加賀谷選手から、もしかしたら出られないと先日から聞いていました。話を聞いて「まずいんじゃないかな」と考えるのではなく、これまでチームを牽引してきた加賀谷選手に対して「恩返しできるのでは」と考えました。辛い状況ではありますが、逆境に勝てるのではと。チームとしては揉めることなくうまくいけたと思います。

――常勝ソフトバンクを使うプレッシャーはありましたか。

平山大輝選手(以下、平山):選手能力が高く、チーム自体が強いと言われるのは仕方ないと思います。でも、4人全員がベストパフォーマンスを出し、選手の高い能力を引き出せたのではないでしょうか。強いチームを使っている以上、勝たなくてはならないプレッシャーはありますが、いい方向に持っていけたと思います。

――継続契約選手以外でMVPを獲得したのは大上選手が初だと思いますが、MVPを獲得した感想をお聞かせください。

大上:正直、この場に加賀谷選手がいたら、間違いなく加賀谷選手がMVPを取っていたと思います。なので、自分が取るとはまったく思っておらず、呼ばれたときは本当に驚きました。MVPは全選手が目標とする賞なので、これからもがんばらないといけないと、気が引き締まりました。

――加賀谷選手はどんなキャプテンでしたでしょうか。

大上:プレイも素晴らしいし、キャプテンシーもあり、頼りになる存在です。eクライマックスシリーズでも、「俺に任せとけ」って言ってもらい、言葉通りに勝ってくれたすごい選手です。

平山:選手としてだけでなく、私生活でも参考にさせてもらっています。規則正しい生活などですね。昼夜逆転になりがちなので、そこは見習っています。そのおかげで遅刻しなくなりました。なにからなにまで支えてもらいましたね。3人で戦って勝って、恩返しができたのでよかったです。

原:ひとことで言えば、上司にしたい男ランキング1位です。責任は取ると言ってくれるし、結果も残してくれる。日本一ハッピーなチームにしようと言ってくれたのも加賀谷選手です。

――コロナ禍の開催で困ったことはありましたか。

平山:試合中もマスクしなくてはいけないので、ちょっと息苦しさがありました。試合中だと普段より呼吸もあがり、体力面を鍛えないとと思いました。

原:無観客でのモチベーションの保持に苦慮しました。

大上:勝ったあと、チームメイトとハグとかしたかったけど、できなかった。もっとチームメイトと喜びを分かち合いたかったですね。

――ありがとうございました。