2024年12月5日から8日まで、『鉄拳8』の世界大会「TEKKEN World Tour 2024 Global Finals(TWT Final)」が開催されました。TWT Finalは35名のトッププレイヤーが参加できる大会。1~3日目に予選を行い、4日目の決勝トーナメントに進出するTOP16を決定します。決勝トーナメントはダブルエリミネーショントーナメント形式で行われます。それを勝ち抜くと、はれて世界チャンピオンです。
TWT Finalは日本で初開催。シリーズ最新作『鉄拳8』としても初の開催です。その大会を制したのは、韓国のランチュ選手。世界大会は2018年以来2度目の優勝で、TWT Final史上初の2度目の戴冠になりました。
7日、8日は、TWT Finalと同時に、『鉄拳』シリーズ30周年イベント「超・鉄拳祭」も開催。歴代の『鉄拳』シリーズがプレイできたり、DJステージが行われたり、『鉄拳』の原田プロデューサーによる動画配信「はらだのばぁー」出張版が実施されたり、サイドトーナメントが開催されたりと、まさに『鉄拳』だらけの祭りが展開されていました。
TWT Finalの1日目は、世界ランキング上位20名によるグループリーグを実施。世界ランキングは、MASTER+、MASTER、CHALLENGERの公式イベントと、「DOJO」と呼ばれるコミュニティイベントでの、獲得順位によってポイントが振り分けられます。公式は大会規模によって、DOJOは参加人数によって獲得ポイントが変わります。
グループリーグは5名で1グループの4グループによる総当たり戦で、各グループの上位2名が決勝トーナメントへ進出します。ちなみに世界ランキングによる予選と2日目に行われた地域別ランキングの予選はオフラインながら無観客で行われました。
日本人選手はグループBにチクリン選手、グループCにダブル選手、グループDにノビ選手が出場していましたが、残念ながらグループリーグ突破はできませんでした。
2日目は地域別ランキングの1位のみが出場でき、全15地域から集まった代表者がグループリーグを行います。日本人選手はグループBに少年選手がいましたが、グループリーグ突破はできませんでした。
3日目からはベルサール渋谷ファーストにてオフライン、有観客で行われます。先述した通り、同時に鉄拳祭も開催されます。
TWT Finalの3日目は、LCQ(最終予選)。1、2日目の予選敗退者を含めた参加希望選手によるオープン参加のトーナメントです。550超の参加者が訪れ、最後の2枠を狙います。優勝したのは韓国のEDGE選手。準優勝は日本のケイスケ選手となりました。
決勝トーナメントは世界ランキングのグループリーグを勝ち上がった8名がウィナーズサイド、地域別ランキングのグループリーグを勝ち上がった6名とLCQの優勝・準優勝の2人が、ルーザーズサイドからの参戦です。
決勝トーナメントは韓国が3人、パキスタンが4人と、『鉄拳』強豪国が多く残っています。それ以外にもメキシコやイタリアなどの欧州勢やタイの選手など、今回は地域別ランキングも取り入れたことで、これまで以上に国際色豊かな印象です。
その中でも注目を集めるのが、パキスタンのArslan Ash選手とAtif選手、韓国のCBM選手とKkokkoma選手とランチュ選手です。Arslan Ash選手はかつて鉄拳界に“パキスタン旋風”を起こした張本人で、日米のEVOでそれぞれ2回、計4回優勝しており、その強さは折り紙付きです。ランチュ選手は2018年のTWT Finalで優勝し、今回優勝すれば初の2回目の戴冠となります。
ウィナーズサイドの1回戦でいきなり韓国勢同士、パキスタン勢同士の対決が行われます。この同国対決、韓国はCBM選手がKkokkoma選手を下し、パキスタンはArslan Ash選手がAtif選手を下しました。
ルーザーズサイドでは、日本勢最後の砦であるケイスケ選手がメキシコのDivineExorcist4選手と対戦します。フルセットフルラウンドまで持ち込まれた試合でしたが、ケイスケ選手は一歩及ばず、ここで敗退となりました。
ウィナーズセミファイナルの2戦目は事実上の決勝戦と言えるランチュ選手対Arslan Ash選手の一戦。2セット先取したArslan Ash選手ですが、そこからランチュ選手の猛攻が始まり、逆三タテでランチュ選手がウィナーズファイナルへ進出しました。さらにサウジアラビアのRaef選手を倒し、グランドファイナルへコマを進めます。
ルーザーズでは、LCQを駆け上がったEDGE選手がArslan Ash選手を倒し、逆境からのファイナル進出を目指しますが、そこに立ちはだかったのはもう1人のパキスタンの勇、Atif選手。ルーザーズサイドでRaef選手を倒し、ランチュ選手が待つグランドファイナルへ進みます。
グランドファイナルでは、ランチュ選手がコントローラの接続が外れ、ラウンドを失うアクシデントがあり、最初のセットを落としてしまいます。しかし、そこから3セット連続で勝利し、無敗でTWT Finalを制しました。
優勝したランチュ選手は「最近、調子が良かったんですけど、その分、周りからの期待があり、その期待に応えられるかというプレッシャーがありました。今は日本に住んでいるんですけど、日本の友人がたくさん駆けつけてくれて本当にうれしかったです。今日は最初に負けてしまう展開が多かったんですけど、試合内容は悪くなかったので、しっかりと集中を切らさずに戦えば勝てると思っていました」と振り返ります。
続けて「あと、応援してくれる声がヘッドホンの外から聞こえてきて、それが励みになりました。最近の私の評価は、“大会で上位に残るけど勝ちきれない”というものでした。プロライセンスを取得できる大会でも、それが続き、なかなか取得できませんでした。それでもがんばって挑み続けたことで、プロライセンスを取得できましたし、今回の大会でも結果が実を結びました」と喜びをあらわにしました。
さらに、「今回、いろいろ試してみた結果、ほかのキャラクターはしっくりこなかったのでクマを選びました。パンダでなく、クマなのは、少しだけクマのほうが、性能がいいと思ったからです。前回、優勝した2018年は今よりもずっと優勝しやすい状況でした。あれから6年間経って、強い選手がどんどん競技シーンに入ってきて、もうチャンスはないかもしれないと思っていたほどです。そんな中、今年はチャンスがやってきて、それを活かすことができて、本当にうれしいです」と優勝までの道のりを語ってくれました。
TWT Finalと同時に開催していた超・鉄拳祭も盛り上がっていました。まず、会場のビルのエスカレーターを下りた先には歴代のポスターが壁一面に貼られており、コラボ展開していたパチスロ筐体が並びます。『鉄拳』の歴史であると同時に、3DCGの歴史でもあり、パチスロの歴史でもあると感じさせる展示です。
さらに、会場に向かうホワイエには麗奈の玉座がありました。フォトスポットとして、座って撮影できます。しかも、係員が常駐しているので、1人で訪れていてもちゃんと玉座に座って撮影できるようになっていました。もちろん、麗奈に負けて土下座をしたい人は麗奈役を連れてこないといけません。
その横にはフードを販売するコーナーがありました。超・鉄拳祭とコラボした弁当やドリンク、グッズも販売。アルコールも売っており、飲食コーナーであれば、会場内に持ち込めるのもうれしいところです。
会場内は大会のメインステージとフリー対戦スペースがあり、さらに歴代タイトルの勝ち抜き戦や大会のミラー配信を行うサブステージを展開。最奥には公式ショップとVictrixの物販ブースもありました。
サブステージでは『鉄拳』シリーズ楽曲サウンドクリエイターとGUEST DJによるDJステージ(両日)や動画配信の「はらだのばぁー 出張版」(7日のみ)、「勝ち抜き!鉄拳王決定戦」(7日『鉄拳5DR』『鉄拳タッグトーナメント』/8日『鉄拳』『鉄拳2』『鉄拳3』)も開催。鉄拳王決定戦は飛び入り参加ができました。
そしてメインステージで行われているLCQのTOP8とTWT FinalのTOP8のウォッチパーティも。同じ会場でメインステージとウォッチパーティの両方を行き来できるのは、eスポーツ観戦の新しい試みとして楽しめました。
フリープレイコーナーには、歴代の『鉄拳』シリーズが勢ぞろい。もちろん『鉄拳8』も自由に対戦でき、海外勢やプロ選手、子ども、初めてプレイする人など、さまざまな人が『鉄拳』を楽しんでいました。
これまでTWT Finalは、2023年は北米 ニューオリンズ、2022年はオランダ アムステルダム、2019年はタイ バンコク、2018年オランダ アムステルダムと、すべて海外で行われていたため、今回が初の日本開催となりました。世界各国から選手が集まる世界大として、大いに盛り上がる結果となったのは、筆者としてもうれしい限りです。世界各国から有名選手が訪れ、日本のトッププレイヤーも勢ぞろいしていました。
ただ、世界大会とするには会場が小さめで、観戦に訪れていた観客がメインステージの客席に収まりきらず、立ち見はおろか、通路まで人がひしめき合う状態でした。
多くの来場者はあったのですが、記念すべき日本大会にもかかわらず、世間的にはそこまで周知されていない印象も否めませんでした。年間を通じて、プレイヤー以外の観戦勢、eスポーツファンに向けたアピールが必要だったとも感じました。
超・鉄拳祭の開催についても同様です。そうすれば今回の来場者数をはるかに超える数、下手したら倍以上の来場者があったのではないでしょうか。また、世界ランキングと地域別ランキングのグループリーグも観戦ができるようになっていれば、まさに『鉄拳』ウィークとして、より一層のお祭り感が楽しめたはずです。
超・鉄拳祭とTWT Finalで、これだけ多くの観戦勢が訪れることが証明されたので、次に日本で開催される場合は、さらに大きな規模、ボリューム感で開催してほしいところです。
これは苦言というよりは、いちファンとして、「もったいない」と思ったからです。『鉄拳』シリーズは、対戦格闘ゲームの中では、もっともグローバルに展開されたタイトルの1つであるので、日本開催をベースにするのは難しいと思いますが、数年以内にまた日本で開催され、大勢のファンが駆け寄っても、余裕のある規模の大会が行われることを期待しています。