プロeスポーツチーム「SCARZ」と、ヘルスケア製品などを手がける電気機器関連メーカーの「フィリップス」は、2024年11月17日に大丸東京店で、ファンイベント「SCARZ E-MOTORSPORTS PERFORMANCE DAY」を開催しました。
フィリップスは、9月に「SCARZ」とスポンサーシップの締結を発表しており、今回のイベントはフィリップスがスポンサーとなって初の共同イベントです。
また、「SCARZ」は、昨年2023年6月にeモータースポーツ部門を設立し、TakuAn(たくあん)選手とGoto(ごとう)選手が加入。さらに今年の9月には宮園拓真選手と鍋谷奏輝選手が「SCARZ」入りを決めています。
日本eモータースポーツ機構(JeMO)によって、新たなeモータースポーツ大会「UNIZONE」が誕生したこともあって、eモータースポーツはeスポーツ業界でも旬のカテゴリーと言えます。
また、2024年9月に行われた「グランツーリスモ ワールドシリーズ ラウンド3」では、2019年以来、5年ぶりの東京開催となり、話題を呼びました。リアルレースであるF1などのモータースポーツも、日本をはじめ、世界で人気が高まっています。
今回のイベントでは、たくあん選手と宮園拓真選手が登壇し、トークショーとグリーティングを開催。トークショーでは、今回、イベントに参加できなかったごとう選手がビデオ出演し、車の一部やエンジン音で車種を当てるクイズも行われました。
さらに、希望した来場者が2人の選手のどちらかからマンツーマンで指導してもらえるコーチングも実施。プロのシムレーサーから直々に教えてもらえる貴重な機会となりました。
ちなみに、イベント前のメディアセッションで、筆者もたくあん選手に指導していただけました。レースゲームは得意ではありませんが、丁寧な指導により、周回を重ねるごとにタイムがよくなっていったのは、さすがの一言です。
イベントでは、たくあん選手と宮園拓真選手に話を聞く機会があったので、eモータースポーツやイベントについて伺いました。
――注目を集めるeモータースポーツですが、選手としてこの状況をどう捉えていますでしょうか。
たくあん選手:大会の数や種類も増えていて、年々注目が集まっているのを感じます。私はレースゲームの動画配信を行っているんですけど、チャンネル登録者数も増えてきています。つい最近3万人を突破し、4万人に手が届きそうです。
せっかく注目されているので、大会で好成績が残せるようにがんばりたいですね。「SCARZ」をはじめ、eモータースポーツ部門を設立するeスポーツチームが増えてきているので、この先はもっと広がっていくと思います。
宮園拓真選手:大会に出るようになったのは、2018年ごろ。参加している選手は盛り上がっていましたけど、世間はそれほどでもなかったと思います。ですが、ここ1~2年でチームや企業の参加が増えた印象があります。それによって知名度が高まり、参加する選手が増えてくれたらうれしいと思っています。
選手個人としては、できるだけレースをおもしろくして、いろんな人に興味を持ってもらいたいですね。情報をもっと発信していきます。
――eモータースポーツは、リアルレースと親和性があり、レースファンからの流入が見込める反面、レースを知らない子どもたちがゲームに触れるにはハードルが高めな気がしますが、その点についてどうお考えでしょうか。
たくあん選手:そうですね、確かにハードルは高めだと思います。ただ、うまく伝えることができれば、触れてもらえると思っています。
子どもたちに伝える機会で一番良いのは、やはりネット、動画ですね。なので、SNSやネットでもっとアピールしていきたいと思っています。今回のイベントもそうですが、体験会も増えてきているので、実際に触ってもらいたいです。触ってみれば、「もっとやってみたい」という気持ちが湧き出てくるんじゃないでしょうか。
宮園拓真選手:今回のイベントでもレーシングコクピットやハンドルコントローラーなどの設備が整っていて、それらを自宅でそろえるのはコスト的にも場所的にも難しいですよね。
まずは、ゲーム機のコントローラーから始めて、こういった体験会で機材に触れてもらえれば興味を持ってもらえると思います。「SCARZ」としては、ディーラーやイベント会場に赴き、コーチングなどをしていきたいですね。特に、ディーラーは家族連れのお客さんが多いので、子どもが触れやすい場所だと思います。
たくあん選手:私も最初はコントローラーでした。大会でハンドルコントローラーが目立っていたので、導入してみたんです。もちろん、最初は安いモデルからだんだんアップグレードしていきました。今では世界大会で使用される機材に近いレベルになりました。
宮園:小学6年生まではコントローラーを使っていて、そこからハンドルコントローラーを買ってもらいました。成績が落ちると取り上げられるので、がんばって成績を落とさないように勉強しましたよ(笑)。今は大会準拠のコクピットも使っています。
――eスポーツ自体が年々拡大していますが、後発と言えるeモータースポーツはこの潮流に入っていけそうでしょうか。
たくあん選手:FPSや対戦格闘ゲームに比べ、大会自体も少ないので、まだまだ発展途上の印象はあります。ただ、個人的には徐々に盛り上がっていくと思っています。参入する企業も増えていますし、まだ興味を持っていない企業やチームも、eモータースポーツに興味を持っていただければと思います。
eモータースポーツは、実車の企業が大会を主催したりチームを運営したりしていますが、やはりeモータースポーツもeスポーツであるので、eスポーツ専業のチームがeモータースポーツに参入してくれることが重要だと思っています。
宮園拓真選手:eスポーツとeモータースポーツはちょっと別枠で考える必要があるとも思っています。eモータースポーツが好きな人の多くは、ゲームタイトルから競技シーンに興味を持つのではなく、実車が好きだったり、レースが好きだったりする人が多いんです。なので、ほかのタイトルとは別のやり方が必要かもしれません。
特に、車業界からのファンの流入や企業の参入が見込めるのは、ほかのeスポーツジャンルにないメリットだと思います。その点は恵まれていますね。ゲームのおもしろさを伝えるとともに、車自体の魅力も伝えたい。それが、ファンの拡大につながると思います。
――映画『グランツーリスモ』では、リアルレーサーに憧れる主人公が、シムレーサーを足がかりにリアルレーサーを目指すストーリーでした。地続きになることは、ほかのタイトルにはないメリットですが、eモータースポーツがリアルレースの登竜門としての存在のみ取り上げられる可能性もあります。単体の競技として、エンターテインメントとして成立させるには何が必要だと思いますか。
たくあん選手:確かに目標としてバーチャルからリアルを目指すことができるのは、夢があると思います。一方、「eモータースポーツだけ」はイメージしにくいですよね。
それは、やはり大会の少なさが要因の1つだと思っています。リアルレーサーのトップティアに上がれば夢のある金額を稼げるようになりますが、eモータースポーツではまだまだそこに到達していません。
私自身は、イベント出演、動画配信で稼げており、eモータースポーツのみで生活できていますが、そういった事例は少ないので、もっとアピールすべき点だと思います。とにかく今はeモータースポーツを盛り上げていきたいですね。その先にeモータースポーツの確立があるかと思います。
宮園拓真選手:たくあん選手の意見と同様に大会の数、あとは規模感も見劣りしてしまいますよね。一般的には、大きな大会があるほうがすごく見えてしまうので、リアルレースが注目され、上に見られてしまうのではないでしょうか。今後大会が増え、スポンサーなど企業も増えていけば、リアルに近づいていけると思います。
あと、現状では選手の資質というか、活躍する土壌の違いもありますね。eモータースポーツだと、大会で結果を残せば、それだけで大きな大会に出ることができます。例えば、国内大会で優勝すれば、世界大会には出場ができます。
リアルレースの場合、チームを運営するには相当のコストがかかるので、スポンサーが投資をしたいと思えるチーム、そのチームが契約したいと思える選手でないと、いくら速くてもレースに出場できないんです。なので、“レーサーとしての佇まい”がまだまだシムレーサーには足りず、そこがスポンサーや企業に信用されていないところなので、その点をもっとシムレーサーに浸透させ、シムレーサーもリアルレーサーと同じであることをアピールする必要があると思います。
――今回、イベントを共催するフィリップスですが、たくあん選手はプロモーションビデオに出るなど、すでにコラボレーションが始まっています。印象はいかがですか。
たくあん選手:私はあまりヒゲが濃いほうではなく、肌も強くないので、カミソリを使うと肌を切ってしまうことがあったんです。シェーバーは初めて使いましたが、肌に優しくて簡単に剃れていいですね。今日も使ってきました(笑)。コードレスのバッテリーなので、持ち運びやすさもいいです。掃除も簡単ですし、私のような初心者にはオススメです。見た目もカッコイイですしね。
宮園拓真選手:専用ケースがあって、いつも持ち歩いています。あと、センサーがあって、うまく剃れているときは緑色に光るんですよ。実は手先が不器用なので、光の色でうまく剃れているか確認できるのはありがたいです。画面の表示があったり、音が出たり、髭剃り自体が楽しくなるのはいいですね。先進的な感じがします。
――今回のイベントはいかがでしたか。
たくあん選手:思った以上に多くの方々にお越しいただき、感謝しています。コーチングは、初心者から日頃プレイしている上級者まで、幅広いレベルの方が参加してくれて、とても充実した時間でした。初心者の方は徐々に慣れていき、コーチング終了時にはスキル向上を感じとれたと思います。上級者も自分の走りを客観視するのは難しく、私や宮園さんの第三者視点でのアドバイスによって、改善点を発見でき、さらなる上達ができたのではないかなと思います。
宮園拓真選手:来場者がどれくらいくるか予想つきませんでしたが、満席になるほどお越しいただけてうれしかったです。コーチングも満足していただけたみたいで、こちらもやりがいがありました。このような「SCARZ」のイベントやコーチングは続けていきたいですね。次回は別の場所でも開催できたらと思います。
――最後に今後の目標をお聞かせください。
たくあん選手:現時点ではあまりいい結果を残せていないので、今後は結果を残せるようにしていきたいです。あとは個人もeモータースポーツも注目度を上げられるような活動をしていきたいですね。大会や配信だけでなく、イベントにも積極的に参加していきます。
宮園拓真選手:今年の世界大会、ネイションズマニュファクチャーで好成績が残せているので、優勝できるようにがんばりたい。マニュファクチャーは、たくあん選手と一緒にがんばります。eモータースポーツの『グランツーリスモ』の活動のほかに、実車のレースにも出ているので、そちらも活躍したいですね。
――ありがとうございました。