【2024年2月8日13時51分追記】
※記事初出時、<『モンスト』はベスト4以上で、プロライセンスの取得権利を得る>との記載がありましたが、称号の獲得のみでライセンスの付与はありませんでした。該当箇所を修正しています。大変申し訳ございません。
1月26日から28日までの3日間、東京ビッグサイトにて第5回目となる「東京eスポーツフェスタ2024」が開催されました。
主催は、東京都や日本eスポーツ連合(JeSU)によって構成される「東京eスポーツフェスタ2024実行委員会」。会場では「eスポーツ競技大会」「eスポーツ関連産業展示会」「eスポーツのセミナー・学習企画」が展開されます。
eスポーツ競技大会は、『WBSC eBASEBALL パワフルプロ野球』『グランツーリスモ7』『太鼓の達人 ドンダフルフェスティバル』『パズドラ』『ぷよぷよeスポーツ』『モンスターストライク(モンスト)』の6タイトルで実施されました。
今回は、最終日である28日に取材に行ったので、その様子をお伝えします。
親子参加が特徴的なeスポーツ競技大会
東京eスポーツフェスタのeスポーツの見どころといえば、やはり「親子部門」があることです。『太鼓の達人』と『モンスト』の2タイトルは親子ペアで参戦。ほかのタイトルでも、すべてオープンの部は小学生以上が参加対象となっており、子どもが参加しやすいイベントとして定着しています。
参加対象年齢が低めに設定されているとはいえ、選手によっては小学生でも十分戦えるのがeスポーツ。親子大会は、どちらかというと子どもが親を引っ張り上げる展開が多く、親は付いていくのが精一杯といった感じです。
『モンスト』の親子部門では、以前の東京eスポーツフェスタの『モンスト』大会で優勝した親子も参加していました。数年経っても親子で一緒に同じゲームをプレイしているのは微笑ましく、『モンスト』やゲームの力の大きさを感じました。
それとは対照的に、成績によってはJeSUのプロライセンスを取得できる大会としての側面もあり、『パズドラ』と『ぷよぷよeスポーツ』で優勝すると、プロライセンスの取得権利を得ることができます。いずれもプロライセンスを得る機会はかなり少ないので、ガチ勢としても重要な大会と言えます。
結果として、『ぷよぷよeスポーツ』はプロのともくん選手が優勝したため、新たなプロライセンス保持者は生まれませんでした。一方で『パズドラ』はとなかい選手が優勝。プロライセンス認定権利を獲得しました。
関連産業展示会では企業独自のイベントもあって活況
今回は関連産業展示会も賑やかでした。eスポーツに関わる都内の企業を中心に、専門学校やeスポーツチーム、行政などが参加していました。ブースには所属選手やゲストで呼んだ選手、タレントなどもいて、ファンミーティングの様相がありました。会場自体にもeスポーツイベントに参加しているプロゲーマーがそこかしこにいたので、ファンにとってみれば、貴重な機会となったことでしょう。
そのなかでも注目を集めていたのが京王電鉄です。京王電鉄は自社ブースにおいて『スト6』の大会である「KEIO CUP STREET FIGHTER6」を開催。出場選手や実況のアールさん、解説のふり~ださん、ゲストのNOモーション。の2人が参加しており、企業ブースで行うイベントとしては豪華すぎるほどでした。
大会は、27日にオープン参加のトーナメントを開催し、勝ち上がった7名と招待選手のプロゲーマー9名が28日の決勝トーナメントに進出します。
決勝トーナメントは、予選勝ち上がりの選手と招待選手が1回戦で対戦します。基本的にダブルエリミネーションのトーナメントとなっていますが、1回戦のみシングルエリミネーションルールとなっており、負けると即敗退。さすがに招待選手であるプロゲーマーはその強さを発揮し、予選勝ち上がり組を蹴散らします。
そんななか、きしり選手がShuto選手に、くらま選手がヤマグチ選手に勝利。予選組の期待を一新に背負います。くらま選手は最終的に4位の成績を残し、大きな爪痕を残しました。
優勝したのはガチくん選手。前日に開催された「TOPNAGAチャリティー」は日付が変わっての大会終了となり、そこでも優勝をしていたので、1日で2大会優勝するという快挙を成し遂げました。
そのガチくん選手に話を聞くと、「トパチャリ(TOPNAGAチャリティー)では結構緊張していました。それがチーム戦による緊張なのか、大会異自体の緊張かわからず、CAPCOM CUP(CC)に向けてヤバイなって思っていたんです。でも、今日の大会ではまったく緊張しなかったので、チーム戦による緊張とわかって安心しました」と、CCに向けていい弾みになったと話します。
また、「『ストリートファイターV』のときにCCで優勝した日本人選手は僕だけだったんです。なので、今度は『スト6』として初めてのCCで優勝した日本人選手として名を刻みたいと思っています」と答えてくれました。
イベントはトラブル多発。ノウハウ継承ができていない印象
今年は例年以上の参加企業があり、イベントも豊富な印象でしたが、それ以上にトラブルにも見舞われました。多くの参加企業から不満の声があがっており、なかなか厳しい運営だったとのことです。
取材に行った最終日には、メインステージで約3時間のインターバルがありました。機材トラブルにより、進行がままならなくなったためです。『太鼓の達人』の親子部門が終わったあとにトラブルが発生し、一般部門がしばらく開催されませんでした。
なんとか復旧はしたものの、時間が足りず、ベスト8からメインステージで行われる予定だった『太鼓の達人』の一般部門は、決勝戦のみの開催となりました。また、『ぷよぷよeスポーツ』は表彰をメインステージで行うはずでしたが、ぷよぷよeスポーツステージでの実施になりました。
『モンスト』は親子部門、一般部門ともに準決勝からメインステージでの対戦となる予定でしたが、どちらも決勝のみに変更。さらに、『モンスト』でも一般部門の試合途中で機材トラブルが発生し、今度は30分程度でしたが、インターバルを挟むことになりました。それにより18時のイベント終了時間になっても試合は終わらず、会場が撤収作業をしているなかでの決勝戦となりました。
大会参加者は、優勝もしくはファイナリストとなって、メインステージに立つことを目標に参加している人も少なくありません。決勝のみのメインステージ開催になることで、本来メインステージでプレイできたはずの人から、ステージに立つ機会が奪われてしまいます。とても残念な思いをさせてしまうでしょう。
トラブル自体は運営によるものだとは思いますが、どうやら東京eスポーツフェスタ自体の予算や日程が厳しく、さまざまな要因が重なって、今回のような結果を引き起こしてしまったという噂も聞いています。
そして、機材トラブル以外にも問題点は多々あったと聞きます。毎年イベントとしての「東京eスポーツフェスタ」は一応、開催し、無事終了しているようにみえますが、例年取材しているうえに、参加したこともある筆者としても、運営の余裕のなさを感じています。
東京都をはじめとする東京eスポーツフェスタ2024実行委員会には、今回の結果について、無事終了したと考えず、予算、人材、機材不足しているためにうまくいかなかったと判断してほしいと思います。
大会をまともに運営するだけの予算や力がないのであれば、もはや、東京eスポーツフェスタで各種イベントを行わず、参加企業によるイベントのみ実施する方向に切り替えるほうがいいかもしれません。
先に説明した通り、京王電鉄が自社ブースによる「KEIO CUP」は成果をあげています。『ぷよぷよeスポーツ』も結局は専用ステージで開催していますが、内容的には大きめの企業ブースで開催したほうがいつも通り、うまくいく気がします。
公式で開催する意味は、優勝者に贈られる賞が「東京都知事杯であるかどうか」なので、東京eスポーツフェスタで開催するすべての大会に与えてしまえばいいのではないでしょうか。
東京eスポーツフェスタは、毎年のように運営会社が替わっています。これは東京都として、企業との癒着などをなくすためにはいいことですし、健全化をはかれると思います。
ただ、毎年のように同じようなトラブルが発生しているので、東京eスポーツフェスタとしてのノウハウが継承されていないように思われます。業者が入れ替わるのであれば、主催側に継続して管理できる立場の人が必要で、次の業者に引き継がせなくてはなりません。今後、継続していくのであれば、このあたりの改善は必要でしょう。
今回の東京eスポーツフェスタは、コロナ禍後の開催となった昨年に比べ、参加企業も増え、イベントとしての見栄えも格段に良くなっていました。京王電鉄のように、独自イベントを中心として参加する企業も出てきたので、さらなる展開が望めそうな気がします。それだけにイベントとしての体裁がきっちり取れるような運営、そして運営が無理なく開催できるだけの環境を委員会が用意することに期待しています。