2023年11月4日、銀座のゲームコミュニケーション施設「TZ GAME Labs」にて『eFootball』のコミュニティイベント「eFootball全国チャンピオンシップ 江戸川乱歩賞作家 下村敦史presents逆転正義」が開催されました。
このイベントは『eFootball』プレイヤーであるオサムん氏が発起人となって開催されたeスポーツ大会で、今回で3回目です。これまでオサムん氏による持ち出しと人力によって運営されていましたが、より多くの人が参加できるようにクラウドファンディングを取り入れました。
大会の冠となっている下村敦史氏は、オサムん氏の活動に共感して、クラウドファンディングのトップ支援者として多額の資金を提供しています。「大会名を決められるネーミングライツを提供する」というクラウドファンディングの返礼品は辞退しましたが、気持ちばかりと冠に入れたそうです。
クラウドファンディングを取り入れたことで、前回よりも多くの運営資金を得ることができ、個人開催のコミュニティイベントとしては破格の規模で開催できるようになりました。
オサムん氏によると、これまで、年に2回くらいのペースで大会を開催していて、最初は15人程度でしたが、前回の横浜での開催では50人くらいの人が集まったそう。プロゲーマーも10人ほど参加していました。今回、クラウドファンディングを実施することに決めた理由について、次のように話します。
「3回目を行うにあたり、前回以上の規模の大会を継続的にやっていきたいと思いました。ただ、2回とも自腹を切っていたので、より大きくすると金額的に厳しい。そこで今回クラウドファンディングを利用することを決めました」(オサムん氏)
クラウドファンディングを提案したのは、Fusion LCC.の代表を務める新倉敬二郎氏。eスポーツチームや大会運営などを行うFusion LCC.は、eスポーツのコミュニティ大会の運営支援も行っており、かねてから付き合いのあったオサムん氏から、コミュニティ大会の相談をされたことがきっかけでした。
「オサムんさんからX(旧Twitter)のDMがきて、イベントをやりたいので、手伝ってくれませんかとの打診がありました。個人でコミュニティ大会をやっていることに感銘を受け、どうせやるのであれば、配信スタッフを使って、会場もeスポーツ施設を使い、ゲストも呼んでやってみようと考えました。そのためにクラウドファンディングをやってみてはどうかと提案したのが経緯です」(新倉氏)
クラウドファンディングでどれくらいの資金が集まるかは未知数でした。非営利のコミュニティイベントなので、支援金が増えても利益になることはありません。大会を開催するのに必要な最低限の金額は想定しており、それ以上の支援金が得られる場合は、イベントを豪華にするオプションを追加する考えです。
「想定した額はあったのですが、それに満たなくても、とりあえずはTZ GAME Labsで実施することは決めていました。それ以上の額が集まったら、実況と解説を呼んで、さらにTZ GAME Labsのプロの配信チームに配信を依頼しようと。結果的に、想定以上の支援が集まったので、『eFootball』と縁の深いグラビアアイドルの小島みゆさんを呼ぶことができました」(新倉氏)
今回のクラウドファンディングで大きな支援となったのは、先述した作家の下村敦史氏によるものです。最終的に集まった支援金38万4,500円の半分以上となる20万円を支援しています。
さらに、下村氏が連載している地方紙のコラムでも今回のコミュニティ大会、クラウドファンディングのことについて書かれており、大きな追い風となりました。ある種スポンサーに近い存在と言えますが、クラウドファンディングがなければ、下村氏の支援もなかったでしょう。
コミュニティ大会を開くだけであれば、オンラインでも十分可能です。オフラインで開催する場合、会場費、運営費などがかかります。それでもオフラインにこだわるのはオンラインにはないプラス面があるからだとオサムん氏は言います。
「以前、いばらき国体の文化プログラムで『ウイニングイレブン』の大会を観戦したことがありました。多くの人が集まって対戦する様子に感動しまして、自分でもこういったオフラインでの大会を開きたいと思いました。学生時代はいざ知らず、社会人になると、ゲームのためだけに集まれる場所や機会ってなかなかないんですよね。対面で顔を見ながら対戦できるのは、オンラインでは味わえない良さだと思います」(オサムん氏)
クラウドファンディングで大きな資金を得ましたが、最後の最後で招待選手の渡航費で少し足が出たとオサムん氏。それでも前回よりは持ち出しが少なくなったと言います。
今後はより大きな大会を目指すうえで、協力者の増加を目標に掲げています。規模の拡大と継続により、多くの人に知ってもらえますし、支援してくれる人、参加してくれる人も増えるでしょう。実際に、今回の大会はFusion LCC.とTZ GAME Labsの鉄人化計画も賛同してくれています。
「鉄人化計画は元々、『鉄拳7』の鉄拳ワールドツアーのコミュニティ大会であったり、『ぷよぷよeスポーツ』のlive選手主催の大会であったりと、コミュニティ支援をやっています。今回の件も、新倉さんからのお話でしたが、『eFootball』のコミュニティを支援する意味では、特別なことではありませんでした」と鉄人化計画のゲーミングチームTZ GamingのメンバーであるコスプレイヤーのMilaさんは話します。
TZ GAME Labs自体がインフルエンサー向けの有料イベントを開催し、栃木eスポーツの大会の運営などを生業としており、コミュニティ界隈が活性化すれば、回り回って本業が潤う可能性もあるでしょう。今後、eスポーツのコミュニティを支援したいと名乗りでる企業も増えていくかもしれません。
もちろん、大会に参加する選手にも支えられています。今回は、北は北海道から、南は鹿児島まで、全国から参加者が集まりました。オサムん氏がオフラインでの大会を開くことに意義を持っているように、参加する選手も時間とお金を使ってまでオフライン大会に参加したいと考えているわけです。
eスポーツと言えば、世界大会やそこで発生する高額な賞金額に目を奪われがちですが、コミュニティ大会こそ、その本質とも言えます。今後もオサムん氏や同様のコミュニティが多くの人に支援されるよう、影ながら応援していきたいと思います。