対戦格闘ゲーム「ストリートファイター」シリーズの国内プロリーグ「ストリートファイターリーグ: Pro-JP 2023(SFL2023)」。2023年シーズンからは、2023年6月2日に発売された新タイトル『ストリートファイター6(スト6)』を採用したほか、前半と後半に分けて争われる「2シーズン制」で行われます。

その2ndステージが、いよいよ10月10日からスタート。今回は、開幕の前に、1stステージを振り返ってみたいと思います。

  • 「SFL 2023」1stステージは9月12日に終了しました

発売直後のタイトルでスタートダッシュを決めたのは?

1stステージは、2023年7月7日に開幕しました。2022年シーズンに参加した8チーム、Good 8 Squad(G8S)、Saishunkan SOL 熊本(SS熊本)、名古屋OJA BODY STAR(名古屋OBS)、FAV gaming(FAV)、忍ism Gaming(忍ism)、魚群、DetonatioN FocusMe(DFM)、広島 TEAM iXA(iXA)に、CYCLOPS athlete gaming OSAKA(CAG)が新たに加わり、全9チームによるリーグ戦が行われます。

シングルロビン方式で、すべてのチームと1回ずつ、計8試合を戦います。上位6チームのみ2ndステージに進出し、3チームが1stステージで脱落します。

対戦方式は、3対3の星取り戦で、先鋒、中堅で勝利すると10ポイント、大将戦で勝利すると20ポイント入ります。大将戦終了時で同点の場合、延長戦が行われ、勝利したチームに5ポイントが加算されます。ちなみ先鋒、中堅戦はBO3(2本先取)、大将戦はBO5(3本先取)、延長戦はBO1(1本勝負)です。

『スト6』は、2023年6月に発売されたばかりの新タイトルです。SFL開幕まで1カ月程度しか準備期間がなく、プロ選手といえども、仕上げてくるのは難しいのではないかと言われていました。

とくにナンバリングの切り替えをあまり経験したことがない若手選手や、豊富なやり込みによって実力を付けていくタイプの選手は不利だと目されていました。逆にスタートダッシュが得意な選手や、さまざまなタイトルで活躍している選手が有利ではないかとも言われており、CAGや魚群、FAVの下馬評があがっていました。

実際、スタートダッシュを決めたのはFAV。2試合連続の40ポイント、その後2試合連続の30ポイントと文句なしの内容でポイントを稼ぎます。評価の高いケンを操作するときど選手と、仕上がり具合が高い春麗を見せるsako選手、安定感のあるルークで勝ち星を重ねるボンちゃん選手と穴がありません。今シーズンから復帰したりゅうせい選手は勝ち星に恵まれませんでしたが、ほかのメンバーに引けを取らない戦いを見せていました。

  • 下馬評通りの強さを発揮するFAV。初戦で全勝の40ポイントを獲得します

それに追随するのは、使用キャラクターがマリーザ1本ながら、モダンとクラシックの両方で戦うshuto選手の所属するSS熊本。そして、かずのこ選手とふぇんりっち選手の活躍が目立つCAGです。

G8Sも、名参謀である立川選手が初戦で中堅、延長戦で2勝すると2、3、4戦目まで勝利し、チームを牽引します。

逆に調子が出なかったのはiXAとDFMと名古屋OJA。iXAはストーム久保選手のエドモンド本田やキチパ選手のザンギエフが良い戦いを見せながらも勝ちきることができず、低迷します。ただ、じゃじぃ選手の調子が良く、ACQUA選手も良いところで勝利し、上位とのポイント差を保っていました。

同様に名古屋OJAも善戦するものの、あと一歩が遠い印象でした。DFMは2試合連続0ポイント、その後も2試合連続10ポイントとかなり苦しい展開。ナウマン選手以外が勝てない状況です。ポイント的にはほぼ絶望的と言える状況でした。

  • 序盤の注目選手の1人だった立川選手。モダン操作の強さ、魅力を存分に発揮し、その上で勝利を重ねていました

終盤に波乱。順位が大きく変動し、脱落3チームが決まる

このままの順位で最後まで行くかと思われた矢先、終盤に向けて大きく順位が変動します。盤石と思われたFAVが忍ismに10ポイント、魚群に0ポイントと、続けざまにポイントを稼げず、一気に順位を落とします。

その魚群は名古屋OJA戦とFAV戦で40ポイントずつ手に入れ、一気にトップグループに躍り出ます。

さらに、最終的には0ポイントが一度もなく、3敗のうち2敗が延長戦と、負けてもポイントを稼ぐ安定感の高さを見せたSS熊本が首位で終わりました。

首位争いよりも激アツだったのが、2ndステージ残留争いです。一時期3位まで浮上した忍ismが名古屋OJA戦に0ポイントの大敗を食らい急ブレーキ。安泰かと思われた2ndステージ進出に黄色信号が灯ります。

そして、それ以上に危険水域に近づいていったのがG8Sです。昨年の王者ではありますが、新規加入の立川選手以外のプロパーメンバーが勝ちきれず、徐々に順位を落としていきます。

下位にいたiXAは、じゃじぃ選手とACQUA選手の活躍で徐々にポイントを稼ぎ、上位陣を脅かす存在になってきました。

そんななか、飛び出してきたのがDFMです。6試合終了時点で60ポイントと2ndステージ進出は難しい状態にありましたが、上位を狙う同士のiXA戦で40ポイントを獲得。最後のCAG戦も30ポイント獲得し、あとはG8Sのポイント次第というところまでやってきました。

序盤、ダルシムを使っていたふ~ど選手がSFLでDeeJayにキャラクター変更し、練度の問題からか苦しい戦いをしてきましたが、最後の最後で調整しきり、終盤は大将戦でポイントを稼ぎまくり。DFMの躍進の中心選手として活躍しました。

ジェイミーからラシードにキャラクターを変えた竹内ジョン選手も、キャラ換えした初戦は敗退したものの、そこから4連勝と、後半追い上げの立役者となりました。

G8Sは、あと40ポイント稼げばほぼ安全圏、50ポイント取れば確定となる場面で、残り2試合となりましたが、名古屋OJA戦でまさかの10ポイントとなり、最後の忍ism戦にすべてを託すことになりました。

さらに、当落の対象となるDFMが怒濤の追い上げをしたことで、忍ism戦は20ポイント以上獲得しないと進出できない状態。結果、忍ism戦は0ポイントとなり、G8Sはまさかの1stステージ敗退です。また、iXAと名古屋OJAも2ndステージ進出がかないませんでした。

  • 最後はいつもの安定感を取り戻し、大将としてポイントを稼ぎまくったふ~ど選手

1stステージはキャラクターのチョイスも重要だった

総じて、発売から1カ月のタイトルで、プレイヤーの練度もキャラクターの解析もままならない状態での開幕でしたが、さすがプロプレイヤー、SFリーガーといえる戦いを見せてくれました。

また、時間が経つにつれて、キャラクターの評価も変わってきて、どのキャラクターを選んでいたかで結果が変わった印象です。

JPやケン、DeeJayはリリース当初から強いと言われていて、現在もその評価は変わっていませんが、ダルシムやジュリはリリース当初に比べて評価が落ちており、ほかのキャラに変える人が多くみられました。逆にキャミィや春麗の評価は徐々に上がりました。

SFLで成績が振るわなくても、ほかの大会で活躍する場合があるという、毎年見られる状況も起きていました。キチパ選手や板橋ザンギエフ選手はEVOやワールドウォリアーで好成績を残すも、SFLでは1勝もできていません。オニキ選手もワールドウォリアーの第1回大会で優勝しているのにも関わらず、こちらも未勝利で終わりました。実力は十分でもSFLで勝てないこともあるのが、組み合わせやタイミングの妙と言ったところでしょうか。

1stステージの結果としては、やはりG8Sの脱落が予想外でした。元々スタートダッシュに強い選手がそろっていない評価でしたが、器用な立川選手が序盤牽引したことで、2ndステージ進出が安泰に思えただけに、意外といえます。

ただ、オーダーや戦い方に関しては多少疑問点も残る結果であり、終わってみれば納得する部分もあります。ガチくん選手は3戦目以降ラシードを使用し、5連敗しています。前作『ストリートファイターV』ではアイデンティティーとも言える魂のキャラクターであるラシードがリーグの途中から実装されたため、キャラクターを変更を余儀なくされたことはわかります。しかし、それまでに2連勝し、ほかの大会でも結果を残しているマノンを下げる選択が正しかったかは判断が難しいところです。

最終戦に、勝ち頭の立川選手をリザーブにしたのもオーダー的に正しかったのかどうか疑問が残ります。7戦終了時点で立川選手は5勝2敗。直近で連敗しているので下がり調子とも判断できますが、ガチくん選手、カワノ選手、ぷげら選手はそろって2勝ずつしかしておらず、3人で立川選手1人りとほぼ同じ勝ち数しか稼いでいませんでした。

最後はオリジナルメンバーで行きたい、大将はリーダーに任せたいという気持ちがあったのかもしれませんが、プロとして勝負に徹する意味ではそれが正解だったかはわかりません。

  • 序盤調子が出ていなかったとはいえ、最終的には80ポイントの高得点を稼いだもけ選手にも勝利していたガチくん選手のマノン

いよいよ始まる2ndステージ、選手変更のチームも

2ndステージは、昨年のリーグと同様にすべてのチームと2戦ずつ対戦するダブルロビン方式のリーグ戦です。

ホーム&アウェイ方式で、アウェイ側が先にオーダーを提出するため、より戦略性が求められます。また、新キャラクターのA.K.I.が追加されたことや長いブランクの間に別のキャラクターを使用する選手が出てくる可能性もあります。

2ndステージに進むにあたり各チーム1名まで登録選手の変更も可能となっています。1stステージを勝ち抜いた歴戦のメンバーを変えることはないように思われましたが、SS熊本がササモ選手からかべ選手への変更が発表されました。

これは筆者の見解ですが、ササモ選手の1stステージの成績によっての交代ではなく、提携しているプロゲーミングチーム「FUKUSHIMA IBUSHIGIN」との規定事項として、2ndステージはかべ選手でいくと決めていたのではないでしょうか。今シーズンの成績で考えたら、翔選手という選択肢もありながら、かべ選手を選んだのはそこかと思われます。

もちろん、かべ選手が現在ワールドウォリアーでポイントトップという実績とSS熊本のほかの選手とのキャラクターの被りやアウェイ側での出しやすさを考慮しての交代の可能性もありますが。SS熊本もFUKUSHIMA IBUSHIGINも、勝つことと選手に経験を積ませることを同時に行いたいとの考えから、今回の選手交代になったのではないでしょうか。

  • 3勝4敗35ポイント獲得と、入れ替わりの対象になるほどの悪い成績ではなかったササモ選手。特に終盤は大将としても活躍しSS熊本が首位で折り返した立役者の1人と言えます

ともかく、いよいよ10月10日から2ndステージが始まります。より練度が高まったプロのプレイが炸裂するのは間違いなく、これまで以上の戦いを観せてくれることでしょう。

『スト6』は、かつてない盛り上がりを見せており、注目度も高まっているので、さまざまな試合の頂点にあるリーグとして、その本領を発揮することを期待しています。

「ストリートファイターリーグ: Pro-JP 2023」2ndステージに出場するチームと選手(1stステージのランキング順、選手の敬称略)

Saishunkan Sol 熊本
・ネモ
・Shuto
・ひぐち
・かべ

魚群
・マゴ
・まちゃぼー
・もけ
・水派

FAV gaming
・sako
・りゅうせい
・ときど
・ボンちゃん

忍ism Gaming
・ももち
・ヤマグチ
・藤村
・ジョニィ

CYCLOPS athlete gaming OSAKA
・GO1
・フェンリっち
・どぐら
・かずのこ

DetonatioN FocusMe
・板橋ザンギエフ
・ナウマン
・竹内ジョン
・ふ~ど