7月7日より「ストリートファイター」シリーズの国内プロリーグ「ストリートファイターリーグ: Pro-JP 2023(SFL2023)」が開幕しました。今シーズンは前シーズンより1チーム増え、全9チームが参戦。Good 8 Squad(G8S)、Saishunkan SOL 熊本(SS熊本)、名古屋OJA BODY STAR(名古屋OBS)、FAV gaming(FAV)、忍ism Gaming(忍ism)、魚群、DetonatioN FocusMe(DFM)、広島 TEAM iXA(iXA)が昨年に引き続き出場し、新たにCYCLOPS athlete gaming OSAKA(CAG)が加わりました。

また、2023年シーズンからは、『ストリートファイター6(スト6)』を採用します。2023年6月2日に発売されたばかりの新タイトルのため、どのチームがどれだけ強いのか未知数。わずか1カ月の期間で、プロゲーマーがどこまでの仕上がりを見せられるか楽しみな一方、ファンとしては不安な要素とも言えるでしょう。

  • CAGが新たに加わり、SFL2023の参加チームは9チーム

今シーズンは2シーズン制をとっており、1st STAGEでは9チームによる総当たりリーグ戦が行われ、上位6チームが2nd STAGEへ進出します。3対3の星取り戦を行い、先鋒戦と中堅戦の勝利チームは10ポイントを獲得、大将戦の勝利チームは20ポイント獲得します。ポイントが同数になったときのみ延長戦が行われ、勝利したチームは5ポイント獲得します。ちなみに先鋒戦と中堅戦はBO3(2勝勝ち抜け)で大将戦はBO5(3勝勝ち抜け)。延長戦はBO1(1本勝負)で行われます。

  • チーム4名から試合に出場する3人を決めて提出。先鋒、中堅戦が10ポイント、大将戦が20ポイント、延長戦が5ポイント獲得できます

前シーズンまでは「ホーム&アウェイ事前オーダー制」のダブルラウンドロビン方式で、アウェイ側とホーム側に入れ替わり、同じチームと2度対戦するようになっていました。アウェイ側は先鋒、中堅、大将のオーダーを予め提出する必要があり、ホーム側はそれに対して、試合の直前に1人ずつオーダーを発表します。

今シーズンの1st STAGEでは、「ホーム&アウェイ事前オーダー制」ではなく、互いがオーダーを先に提出します。したがって、相手のキャラクターに相性の良いキャラクターを被せるホーム側のアドバンテージはなく、相手のオーダーを予測する必要があります。ただ、現状ではキャラ相性や人相性が不透明で、ベストオーダーを決めにくい状態であると言えます。

2nd STAGEは、勝ち上がった6チームで再びリーグ戦が行われます。このステージでは前シーズンと同様に「ホーム&アウェイ事前オーダー制」を採用。アウェイ側のチームはあらかじめ先鋒・中堅・大将のオーダーを提出し、ホーム側のチームはそれに対して対戦する前にオーダーを決めることができます。

同じチームとの対戦が2回あるダブルラウンドロビン方式なので、それぞれのチームとホーム&アウェイで戦います。また、1st STAGE終了後にチーム登録選手の入れ替えが可能です。

入れ替え可能なのは、1stステージで「SFL2023」に出場していないプロ選手。新たな戦略として今年からの見どころと言えます。

2nd STAGEで好成績を残した上位チームはプレイオフに進出し、そこで勝ち上がったチームがグランドファイナルで優勝を争います。グランドファイナルの1位チームは、2024年開催予定の「ストリートファイターリーグ: WORLD CHAMPIONSHIP 2023」(ワールドチャンピオンシップ)の出場権を手に入れ、「SFL:US」「SFL:EU」のチームと世界1位の座を争います。

  • 2nd STAGEでの結果によりプレイオフへ進出し、グランドファイナルで決着となります

7月7日に行われた第1節では、iXA対FAV、SS熊本対忍ism、G8S対CAGの3戦が行われました。

1試合目のiXA対FAVは、先鋒がキチパザンギエフ対ボンちゃんルーク、中堅戦がストーム久保本田対ときどケン、ACQUAJP対sako春麗の組み合わせです。

現状、もっとも練度の高さが目立つと言われるキチパ選手のザンギエフですが、体験版からプレイしたボンちゃん選手のルークがその練度を上回り、勝利を得ます。

中堅戦のストーム久保選手は、ハイレベルなテクニカルな攻めでときど選手を追い詰めますが、終盤の2度の「投げスカり」で、ときど選手が大ダメージを与え、逆転勝利しました。

大将戦は春麗の機動力でJP得意の遠距離での間合いを許さず、sako選手が一気呵成に攻め立てます。ACQUA選手は今回、SFL初出場ということもあり、いつもの動きが出せていなかった印象も受けました。

これで、FAVが3連勝で40ポイント獲得と、スタートダッシュに成功します。ただ、iXAもかなり良い展開を見せていたので、唯一無二の戦闘スタイルは今年も魅せてくれそうです。

  • 開幕戦の初戦をとりにきたキチパ選手とボンちゃん選手。どちらも大将戦を任せられるほどの練度と強さを見せます

  • 初心者キラーのエドモンド本田ですが、ストーム久保選手はしっかりと上級者としての仕上がりをみせていました

  • 大将戦では、sako選手らしい流麗なコンボと立ち回りをみせ、ACQUA選手を寄せ付けませんでした

2試合目のSS熊本対忍ismは、先鋒がネモJP対藤村ケン。大事な初戦の重責をベテランが背負います。藤村選手がドライブインパクト、ドライブラッシュ、ドライブパリィを巧みに操り、まさに『スト6』の戦い方の手本となるべき立ち回りをみせ、圧勝しました。

中堅戦は、ひぐちガイル対ジョニィマノンの元忍ism弟子対決。1ラウンド目は面白いようにマノンの投げがきまり、メダルを4枚まで溜めるものの(特定の技を決めるとメダルレベルが上昇し、それに応じて技の威力が上がる。最大レベルは5)、その後はガイルのソニックブームに近づくことが許されず、メダルを活かすことができませんでした。2戦目はソニックを嫌ったジョニィ選手が飛びを多用し始めますが、それに対応して的確に対空技を出したひぐち選手。ほぼ何もさせずに完勝しました。

そして大将戦はShutoマリーザ対ももちケン。Shuto選手はモダン操作を選択しています。マリーザとモダン操作は相性が良いと言われていて、プロ選手が使うモダン操作に注目が集まります。

ワンボタンもしくはボタン同時押しのみで必殺技や超必殺技「スーパーアーツ」(SA)が出せる強みを活かすと同時に、クラシックよりも低いダメージや技の数が少ない弱点をどう補えるかが、モダン操作の鍵になるでしょう。

対戦相手のももち選手もモダンの利点を良く理解しており、SAゲージの溜まったマリーザに対する、波動拳などの牽制技を出すタイミングがいつも以上に慎重だった様子が伺えました。

暴れや小技からのSAが決まるShuto選手に対して、差し込みで入れていたSAがガードされることが多かったももち選手。この差が勝敗に影響し、Shuto選手が逆転で勝利しました。

これら結果、忍ismは藤村選手が勝利したものの、後が続かず10ポイントのみの獲得。SS熊本は30ポイント獲得で幸先の良いスタートとなりました。

  • 相手の攻撃をいなすドライブパリィ。出始めの2フレームのみで相手の攻撃を受け流すジャストパリィが成功すると、画面のように青く光る演出とともに大きな有利を取れます。ジョニィ選手いわく、藤村選手はジャストパリィの匠と呼べるほどで、実践でもしっかりと発動させていました

  • 元同門のひぐち選手とジョニィ選手。試合前の表情もちょっと微妙な感じです

  • ダメージが軽減されるモダン操作において、ワンコンボでこれだけの火力を出すマリーザ。しかも開始21秒ですでにももち選手のケンは瀕死状態です

3試合目は、昨年の覇者G8S対新鋭CAGの対戦。先鋒戦はガチくんマノン対GO1ルーク。1セット目をGO1選手がとるも、2セット目にガチくん選手のマノンが対応しはじめ、画面端に追い詰めてから逃げたい相手の飛びを落とします。投げが強化されるメダルも早々に溜め、プレッシャーを与えます。GO1選手は堪らず3セット目に春麗にキャラクターを変更しますが、同じような結果を繰り返し、ガチくん選手が勝利しました。

中堅戦は立川ルーク対フェンリっちJP。立川選手はモダンを選択します。体験版のころからモダンの強さを提唱していただけに、立ち回りにも期待が高まります。試合はフルセットフルラウンドまでもつれ込み、バーンアウトした状態から逆転の一手となるSA1で相手をバーンアウトさせた立川選手が勝利しました。2年前の大会で不名誉な無勝でのシーズン終了から、今シーズン初戦で久々の勝利を獲得しました。

大将戦は、ぷげらディージェイ対かずのこキャミィ。かずのこ選手は競技シーンへの復帰戦となります。ぷげら選手とかずのこ選手はランクマッチやバトルハブなどで勝ちまくっており、もっとも仕上がっている選手同士と言えます。

どちらも機動力に長けるキャラクターですが、ディージェイのほうが、火力が高く、序盤はその火力の高さを活かし、一気に攻め込みます。かたや、かずのこ選手は、手数の多さと相手の対空必殺技が出せないタイミングでの飛びが決まり、一進一退の攻防が続きます。

最終セットは、お互いにすべてのゲージを惜しみなく出し切り、逆転に次ぐ逆転でかずのこ選手が勝利しました。

これで20-20のイーブンとなり、延長戦に入ります。延長戦はG8Sが立川選手、CAGはGO1選手が出場します。G8Sは相手がかずのこ選手の出場を予想し、キャミィに向いていそうなモダンルーク、そして同じチームメイトでかずのこ選手を知り尽くしていることからの立川選手起用でした。

予想外の組み合わせでしたが、使用キャラクターはお互いにルーク。モダンとクラシックの違いやBO1の一発勝負であることで、見応え十分の対戦となりました。結果は立川選手の勝利。見事、1日で2勝を稼いだ立川選手が復活の狼煙を上げたと言えるでしょう。

  • 相手を画面端に閉じ込め、脱出を許さない戦い方は『ストリートファイターV』でラシードを使っていたガチくん選手そのものでした

  • ワンボタンで必殺技が出るモダンといえども、相手のジャンプめくり攻撃は、しっかりと飛び越えたことを確認したうえで、反対方向にレバーを入れないと出せません。立川選手はしっかりと対応しており、基礎力の高さが出ていました

  • 性能がキャラクター随一と言われるディージェイのドライブラッシュを小技でしっかりと止めるかずのこ選手

  • 初日にして延長戦に突入。同キャラ異操作のルークミラーとなりましたが、立川選手の攻撃が噛み合い、一気に倒しきりました

「SFL2023」が『スト6』で行うと発表されてから、「いくらプロ選手とはいえ、わずか1カ月でSFLとしてのクオリティを保てる試合ができるのか」との懸念はありましたが、いざ開幕してみれば、まったくの杞憂であることがわかりました。

対戦は「どれだけやり込めばこの練度が出せるのか」と思うレベルのものばかり。今シーズンのSFLも盛り上がることは間違いないでしょう。

なお、開幕戦前に、魚群のマゴ選手と実況のアールさんの配信による不適切な発言が、eスポーツ界隈、『ストリートファイター』界隈で話題になりました。結果として、開幕戦の実況を担当する予定だったアールさんが自粛。急遽なないさんが実況を担当することになりました。

  • 急遽、登板となったなない氏(写真左)

これまであまり格ゲーに力を入れていなかったeスポーツチームが『スト6』の大会を開催したり、「格闘ゲーム部門」を設立したりと、対戦格闘ゲームの注目度が高まっていたタイミングだっただけに、その勢いを落としかねない今回の件は、残念に思います。

それと同時に、eスポーツに限ったことではありませんが、都合良く切り抜かれた動画で炎上させるような事例や、現在とは状況の違う過去を掘り起こすキャンセルカルチャーがあることも残念です。

注目度が上がれば、それだけ見る人も増えていきます。人が増えれば、いろいろなタイプの人が出てくるので、そういった多様性に対応できるような体勢作りも今後は必要になってくるでしょう。

とにかく、『スト6』で行われる2023年シーズンのSFLが開幕しました。『スト6』は新たなプレイヤー、ファンを獲得し、いつになく注目されています。ストリーマーの配信や大会を観て興味を持った人も多いでしょう。間違いなく世界最高峰レベルの戦いが観られる大会なので、観戦することをオススメします。

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