2023年1月27日から29日まで、eスポーツの魅力発信と東京都の関連産業活性化を目的としたイベント「東京eスポーツフェスタ」が開催されました。会場は東京ビッグサイト。今回は第4回ですが、第1回以来、3年ぶりのオフライン形式です。
ただし、今回はオフラインだけでなく、オンラインの配信として、閉開会式やビジネスセッション、eスポーツ競技大会などメインステージで行われたイベントをメインチャンネルで、セミナー・学習企画、出展事業者プレゼンテーションなどサブステージで行われたイベントをサブチャンネルで放送していました。
会場で用意されていた企画は、大きくわけて、eスポーツ競技大会、関連産業展示会、セミナー・学習企画、ゲーム体験会など。関連産業展示会では、ゲーミングPCを展開する「エルザ ジャパン」や、さまざまなゲーミングアイテムを取り扱う「GRAPHT」をはじめ、音響制作・キャスティング事業、イベント事業などを展開する「声優e-Sports部」、デジタルフォントを手がける「ダイナコムウェア」など、20を超えるブースが展開されていました。
ビジネスセッション「eスポーツビジネスの可能性」では、日経クロストレンド副編集長の平野亜矢氏をモデレータに迎え、東京eスポーツ連合会長筧誠一郎氏、野村不動産ホテルズ 運営統括部長 中村泰士氏、クラウドエース マーケティング部部長 杉山裕亮氏、スポーツシンギュラリティー研究所 永井奈津子氏、トータルビューティー ビジョンリテラシートレーナー 細野智子氏の5人がeスポーツの可能性についてディスカッションしました。
野村不動産ホテルズは、「ゲーミングルーム」を備えるホテル「NOHGA HOTEL AKIHABARA TOKYO」を秋葉原にオープンさせた事例を紹介。クラウドエースは、ゲーム開発の裏方としてシステム支援を行っているほか、eスポーツを社内の交流に使用している例を話します。
スポーツシンギュラリティー研究所は、脳科学に基づいたメンタルトレーニング「ニューロトラッカー」をeスポーツに活用しています。トータルビューティーはプロゲーマーの目を守りたいという想いからレンズを開発した事例を紹介していました。
なお、トータルビューティーの細野智子氏は、関連産業展示会に出展しているeスポーツ関連企業からeスポーツ産業の活性化に向けた新規サービスや製品などに関するプレゼンテーションを行う「ピッチイベント」にも登場します。「デバイス用メガネとVISIONリテラシーの必要性」について提案をしたことで、最優秀賞を獲得しました。
また、ビジネスセッション「障がい者eスポーツの展望」では、日本eスポーツ連合副会長 浜村弘一氏とユニバーサルeスポーツネットワーク代表で北海道医療センター 作業療法士 田中栄一氏、ePARA 代表取締役 加藤大貴氏の3名による障がい者とeスポーツの関わりと今後についてトーク。障がい者でも使用しやすいデバイス、コントローラーなどをはじめとする障がい者へのeスポーツ参加の支援の現状を紹介していました。
今回もコミュニケーションを促進させた「親子部門」のeスポーツ大会
eスポーツイベントでは、28日、29日の両日で『eBASEBALLパワフルプロ野球2022(パワプロ)』『グランツーリスモ7(GT7)』『太鼓の達人ドンダフルフェスティバル(太鼓の達人)』『パズドラ』『ぷよぷよeスポーツ』『モンスターストライク』の6タイトルの決勝大会が行われました。オンライン予選を勝ち抜いた選手が会場で雌雄を決します。
28日に行われた競技は『GT7』『パワプロ』『太鼓の達人』。『GT7』と『パワプロ』は基本的に規定のない一般部門のみの開催で、『太鼓の達人』は小学生以上の「一般部門」と小学生とその保護者の2名1チームで参加する「親子部門」の2部門で開催されました。
『GT7』は8名の選手が決勝大会に進出し、鈴鹿サーキットのフルコースで優勝を争います。ファイナリストには15歳の中学生選手がいたこともあって、レース前から注目を集めていました。
『パワプロ』のオンライン予選は、PlayStation 4版とNintendo Switch版で行われました。参加者は機動力に長けた「スピードスターズ」と長打力に長けた「パワーヒッターズ」にランダムで振り分けられます。それぞれのハードで優勝した4人が決勝大会へ進出。当日の決勝大会では、同じチーム同士が対戦してチーム代表で対戦し、決勝戦で違うチームと争います。
28日3つめの大会は『太鼓の達人』。「親子部門」では、難易度低めの曲と難易度高めの曲の、計2試合行います。どちらを担当するかはチームによって自由に決められるので、子ども対子ども、保護者対保護者だけでなく、子ども対保護者の対決の組み合わせもありました。
「一般部門」では課題曲の難易度も一気に上がりますが、参加者はものともせず、ワンミス、連打の回数などわずかな差で勝敗が決まるハイレベルな戦いを繰り広げます。
28日最後のタイトルは『パズドラ』です。会場予選に集まった32名の選手が4ブロックに分かれ、2試合の合計スコアの上位4名が準決勝に進出します。さらに、準決勝では16名が2つのブロックに分かれ、これまた2試合の合計スコアの上位4名が決勝に進出。決勝戦は3試合行い、合計スコアのもっとも高い選手が優勝です。
優勝の副賞として、日本eスポーツ連合(JeSU)公認プロライセンスの取得権利を得られます。出場選手の中にはアマチュアながら高い実力を持つ選手も多く、例年以上にハイレベルな戦いが予選から繰り広げられました。
29日は『ぷよぷよeスポーツ』と『モンスターストライク』の決勝大会が行われました。『ぷよぷよeスポーツ』は「プロ部門」と「一般部門」、「キッズ部門」の3部門、『モンスターストライク』は「一般部門」と「親子部門」の2部門です。また、eスポーツ競技大会体験企画として『GUNDAM EVOLUTION』の学生対抗戦、『ぷよぷよeスポーツ』のシニア&小中学生等2世代ペア対抗戦も行われました。
『GUNDAM EVOLUTION』で行われた学生対抗戦は、ルネサンス高等学校と東京アニメ・声優&eスポーツ専門学校が対戦。eスポーツに力を入れている両校だけに、エキシビションマッチとはいえ、ハイレベルな戦いを繰り広げます。
『GUNDAM EVOLUTION』はガンダムをモチーフにした6対6のタクティカルシューティングゲーム。対戦はBO3で行われ、2連勝でルネサンス高等学校が勝利しました。
『ぷよぷよeスポーツ』のシニア&小中学生等2世代ペア対抗戦では、小学生と母親のペアと中学生と父親のペアが対戦します。4人同時対戦で3勝勝ち抜けのルールでした。
『ぷよぷよeスポーツ』eスポーツ大会の「一般部門」と「キッズ部門」では、スイスドロー形式のオンライン予選を勝ち抜いた4名が本大会のトーナメントに進出。「プロ部門」は同じくスイスドロー形式のオンライン予選を行い、上位2名が本大会に出場し、優勝を競いました。
2日間通して最後の競技となったのは『モンスターストライク』。今回は久々にゲーム内称号、フレームが賞品となっており、『モンスト』ファンにとっては是が非でも優勝したい大会です。
「親子部門」は4ブロックに分かれて予選を行い、ブロックごとの勝者が決勝トーナメントに進出します。「一般部門」は3ブロックに分かれてスイスドロー形式の予選をオンラインで行い、6チームが決勝トーナメントに進出し、また、会場でも予選を行い、2ブロックに分かれたトーナメントで勝利した2チームが決勝トーナメントに進出。オンライン、当日予選を合わせた8チームが、決勝トーナメントで優勝を争います。
モンストグランプリやモンストプロツアーなど、通常の『モンスターストライク』の大会では4人1組のチームですが、「東京eスポーツフェスタ」では2人1組で、1人が2体のキャラクターを操作します。
東京eスポーツフェスタのeスポーツイベントは、親子大会があるのがやはり大きな魅力です。親子で協力し合いながらプレイする様子は微笑ましく思えます。かといって、プレイに関してはゆるくなく、やり込んでいる印象。特に子どもはかなりの腕前で、親御さんが子どもの足を引っ張らないようにしているのは、いつもの生活と逆転しているような感じです。
参加している子どもからも「お父さんやお母さんと一緒に遊べてうれしい」といった意見があり、親子のコミュニケーションとして大いに役立っているのではないでしょうか。
筆者もブースを出展。セミナーにも登壇するなど、さまざまな形でイベントに参加
実は今回の「東京eスポーツフェスタ」、取材対象としてだけでなく、さまざまな形で関わっています。その1つが、eスポーツに関連する製品やサービスを提供する都内の中小企業や学校を対象とした「関連産業展示会」への出展です。会場のブース展示のほか、オンラインでの展開も行っており、商談につなげるためのサポートを行ってくれます。
筆者は、eスポーツ関連の記事を取り扱うライターとして登録。格闘プロゲーマーの「ネモ選手」の著作である『思い込む力』の編集、構成を行った稲垣宗彦氏と一緒に参加しました。
ブースでは、2人が執筆した書籍の販売をしましたが、目的は販売ではなく、eスポーツ関係者とのつながりを増やすこと。書籍も数冊売れましたが、それ以上にほかの出展社やeスポーツに興味のある来場者と交流できたことが大きな収穫になったと思います。今後、実際にビジネスが成立するかはわかりませんが、さまざまな業種、業態の方々と知り合えることはとても大事なことです。また、個人的には、「自分専用のプレスルーム」として、「東京eスポーツフェスタ」の取材が快適にできたのも良かった点です。
もう1つはセミナー・学習企画での登壇です。筆者は、29日にサブステージで行われた「プロゲーマーだけじゃない。eスポーツに関わる隠れた職業」に出演しました。
日本Esports教育協会理事長、滋慶学園COMグループ名誉学校長の馬場章氏とeスポーツイベント運営のTechnoBlood eSports 代表取締役社長森島健文氏と一緒に、さまざまなeスポーツの職業やその内容について、話をしました。
筆者は、eスポーツの基本となる職業、プレイヤー以外に、配信や大会、施設の運営、学校などの教育関係、ライターやカメラマンなどのメディア系など、eスポーツに関わる人の職業が多岐にわたることを紹介。森島氏からは、複数のプレイヤーが違う視点によってプレイするゲームの配信で、どのプレイヤーの視点、もしくは俯瞰で観られる視点などを選択し、より試合をおもしろく見せるオブザーバー(ゲーム内カメラマン)の存在をeスポーツならではの職業として紹介します。そして馬場先生は、筆者が説明した業種をさらに掘り起こし、どのような教育を必要とするのか、eスポーツが拡大していった場合に増えていく業種や仕事などについて述べていました。
詳しくは東京eスポーツフェスタのYouTubeチャンネルにアーカイブが残っているので、「東京eスポーツフェスタ2023 1/29 DAY3 サブステージ」の動画を確認してみてください。
第1回の開催から3回ぶりのオフラインになった東京eスポーツフェスタですが、本格的にオフラインの展開がなされたとは言えない印象でした。業態や業種によってはオフラインイベントに参加しにくいところもあるでしょうし、来場を敬遠する人もまだ多いでしょう。
eスポーツイベントとしては、4回目ということもあり、それぞれのタイトルのプレイヤーたちに認知されている様子です。ハイアマチュアやプロゲーマーなども多く参加、もしくは観戦にきていました。それと同時に先述した親子大会もあり、まさにeスポーツイベントらしい幅広い層が注目しているイベントだと感じます。
筆者もブースを出展してみて感じましたが、何かしらのつながりや得るものはあると思いますので、東京のeスポーツ関連中小企業の担当者であれば、来年の出展を考えてみてもいいのではないでしょうか。eスポーツチームはファンミーティングの場としても使えそうですし、eスポーツ関連のメディアもファンや選手とよりつながる場として活用できると思いますよ。