2023年1月21日、対戦格闘ゲーム『ストリートファイターV チャンピオンエディション』のeスポーツ大会「ストリートファイターリーグ: Pro-JP 2022(SFL)」のグランドファイナルが、東京・有明にあるTFTホールにて行われました。
ライブの配信は、「ZAIKO」によるペーパービューにて実施。1月28日18時からは、YouTubeチャンネル「Capcom Fighters JP」でも配信されました。
「SFL 2022」は、2022年8月の1on1トーナメントを皮切りに、9月から12月にかけてリーグ本節が行われました。出場全8チームのうち1位がグランドファイナルへ進出し、2~5位がプレイオフに進出します。プレイオフでは上位2チームがグランドファイナルへの出場権を獲得。グランドファイナルには3チームが出場します。
グランドファイナルでは、まずプレイオフから進出した2チームが対戦し、勝利したチームがリーグ本節1位のチームとの決勝戦を行います。
リーグ本節の成績は以下の通りです。
1位:Good 8 Squad
2位:名古屋OJA BODY STAR Mildom
3位:Saishunkan Sol 熊本
4位:v6プラス FAV gaming
5位:忍ism Gaming
6位:魚群
7位:コミュファDetonatioN
8位:広島 TEAM iXA
プレイオフでは「Saishunkan Sol 熊本」が1位で通過、「名古屋OJA BODY STAR Mildom」が2位で通過。プレイオフのMATCH 1で敗退した「忍ism Gaming」がリーグ5位、MATCH 3で敗退した「v6プラス FAV gaming」がリーグ4位となりました。
グランドファイナルは、先鋒・中堅・大将戦の3戦を行い、先鋒・中堅戦の勝利チームに10ポイント、大将戦の勝利チームに20ポイント入るルールです。これを繰り返し、先に70ポイント到達したチームの勝利。そのため、最短で2巡目大将戦、最長で4巡目先鋒戦まで行われます。
「ホーム&アウェイ事前オーダー制」を採用しており、リーグ戦、プレイオフでの順位上位チームがホーム側、下位チームがアウェイ側として1巡目を戦い、2巡目以降はホームとアウェイが入れ替わります。アウェイは出場する3人のメンバーと出場順を先に提出しなくてはならず、ホーム側は相手の出場選手、出場順に合わせてメンバーを決められます。
初戦はプレイオフからの進出チームが対戦
初戦となる準決勝は、プレイオフで争った2チーム、「Saishunkan Sol 熊本」と「名古屋OJA BODY STAR Mildom」の対戦。プレイオフ1位抜けの「Saishunkan Sol 熊本」がホーム、2位抜けの「名古屋OJA BODY STAR Mildom」がアウェイで開始です。
1巡目は、「名古屋OJA BODY STAR Mildom」が、先鋒ウメハラ選手、中堅あきら選手、大将ふ~ど選手の布陣で挑みます。これに対して「Saishunkan Sol 熊本」は先鋒にダルシム使いのYHC-餅選手を当ててきます。
ウメハラ選手は、リーグ本節、プレイオフと、ダルシム戦に1度も勝利しておらず、予想された展開。しかし、プレイオフよりダルシム対策を重ねてきたウメハラ選手がYHC-餅選手を退けます。
中堅は、リーグ戦であきらキャミィに勝利しているネモ選手がギルで登場。ここでは、苦戦しながらも、あきら選手が勝利します。
大将戦は、今や「Saishunkan Sol 熊本」の絶対的なエースとなったShuto選手。リーグ戦、プレイオフでは、ふ~ど選手を下しています。しかし、こちらもShuto選手対策をしてきたふ~ど選手がリベンジを果たしました。その結果、1巡目はアウェイ側の「名古屋OJA BODY STAR Mildom」が40-0と大幅なリードを取ります。
2巡目は、先鋒ネモ選手のユリアンに対してふ~ど選手がレインボー・ミカを選択。ここも勝利し、チーム4連勝となります。中堅戦では、「Saishunkan Sol 熊本」からひぐち選手が満を持して登場しました。あきら選手を倒し、「Saishunkan Sol 熊本」がようやく初勝利。ポイントを獲得します。
この勝利が「Saishunkan Sol 熊本」の浮上のきっかけとなり、大将戦のShuto選手対ウメハラ選手戦、3巡目先鋒のYHC-餅選手対ウメハラ選手戦まで3連勝と巻き返しを見せます。しかし、中堅戦のひぐち選手対あきら選手戦は、2巡目のリベンジとばかりに、あきら選手がひぐち選手を下します。
これでリーチをかけた「名古屋OJA BODY STAR Mildom」ですが、大将戦でエースのShuto選手が出場することは誰の目にも明らか。4巡目までいった場合、そこでもShuto選手が登場することが予想されます。
つまり「名古屋OJA BODY STAR Mildom」は、Shuto選手を必ず倒さなければなりません。1巡目にふ~ど選手が一度倒しているとはいえ、リーグ本節終盤では最強格の選手の1人と言える存在だっただけに、かなり厳しい道のりです。
「名古屋OJA BODY STAR Mildom」にとって最大の壁であるShuto選手。3巡目の大将戦では、ふ~ど選手の前に立ちはだかりますが、セットカウント3-2の僅差で勝利します。
さらに、最後の1戦となる4巡目先鋒。Shuto選手とウメハラ選手の対戦です。ここでもShuto選手の勢いは止められず、「Saishunkan Sol 熊本」が逆転勝利。これで「名古屋OJA BODY STAR Mildom」がリーグ3位確定となりました。
なお、グランドファイナル準決勝では1勝3敗という結果に終わったウメハラ選手ですが、リーグ本節では10勝2敗の勝利数1位の成績を残し、グランドファイナル進出の立役者として活躍していました。
「G8S」と「SS熊本」による頂上決戦
決勝戦は、リーグ本節1位抜けの「Good 8 Squad」が1巡目ホーム側となり、グランドファイナル準決勝を勝ち上がった「Saishunkan Sol 熊本」を迎えて戦います。「Good 8 Squad」は、リーグ本節終了後から試合がまったくなく、1カ月以上ブランクのある状態。しかも「Saishunkan Sol 熊本」は準決勝で体が温まっています。
ホーム側からスタートできる優位性はあるものの、実戦から離れていた状況は不利と言えます。その反面、準備期間はどこよりもあったので、どれだけの仕込みができていたかが鍵になると言えるでしょう。
1巡目は、アウェイ側の「Saishunkan Sol 熊本」があらかじめオーダーを発表。先鋒がYHC-餅ダルシム、中堅がひぐちガイル、大将がShutoユリアンの布陣です。
これに対して「Good 8 Squad」はホームの優位性を遺憾なく発揮。ダルシム相手に有利に立ち回れると言われているラシードを当て、ひぐち選手が苦手とするぷげら選手を当ててきました。しかし、結果は1勝1敗と痛み分けに終わります。
大将戦はカワノ選手が登場しました。キャラクターはなんとルークです。リーグ本節では1度も使用していないキャラクターでしたが、リーグ本節終了後からグランドファイナルの間に仕込んできたのでしょう。
カワノ選手は、リーグ本節序盤で快進撃を続けるふ~ど選手の対策として、ルシアを短期間で仕込んできた過去があります。一方的な展開でふ~ど選手を撃退しただけに、今回のルークにも期待が持てます。
実際、仕上がりは万全でした。特にShuto選手への対応をしてきたとみられます。飛ぶ鳥を落とす勢いのShuto選手を完全に封じ込め、20ポイントを奪いました。
2巡目は、ホームとアウェイが入れ替わり、「Good 8 Squad」が先にオーダーを発表。先鋒がどぐらベガ、中堅がガチくんラシード、大将がぷげらバイソンです。
先鋒戦はどぐらベガに対してYHC-餅ダルシムで対応。どぐら選手は「ダルシムでいいんですね」と、ダルシムに対して相性がいいと言われているアレックスの存在をちらつかせます。しかし、アレックスを出すことなく、ベガを使ってどぐら選手が勝利しました。
続く中堅戦は、ガチくんラシードにひぐちガイルが立ちはだかります。これは、フルセットフルラウンドまでもつれ込むも、ひぐち選手が勝利。ポイントは40-20となり、準決勝と同じく、相手チームに行きかけた流れをひぐち選手が引き戻しました。
大将戦は、Shutoユリアン対ぷげらバイソン。2022年末に行われた「カプコンプロツアー ワールドウォリアー」でも同じ対戦カードがあり、そのときはぷげら選手が勝利を収めています。ただ、試合内容はShuto選手ペースだったので、今回はどちらに転ぶかわかりません。結果は、ギリギリでぷげら選手が勝利。これで「Good 8 Squad」が60ポイントを稼ぎ、3巡目は先鋒、中堅戦のどちらかで勝利すれば優勝が確定します。
3巡目は、再び「Saishunkan Sol 熊本」がアウェイ。先鋒ひぐちガイル、中堅ネモユリアン、大将Shutoユリアンの布陣です。
「Good 8 Squad」の先鋒戦はどぐら選手が登場。負けられないひぐち選手の気迫が上回り、リーダーネモ選手にバトンをつなぎました。中堅戦はネモユリアンにぷげら選手のバイソンを当てていきます。
2022年のグランドファイナルでも、ぷげら選手は3巡目の中堅に登場していました。奇しくも登場番手も獲得ポイントも同じで、対戦相手は違うものの、対戦キャラクターもユリアン。本来であればまだポイント的に余裕のある立場と言えますが、ここでぷげら選手が負けてしまうと、Shuto選手との2連戦が待っているので、「名古屋OJA BODY STAR Mildom」の二の舞です。「Good 8 Squad」からしてみれば、2022年のときど戦連敗の悪夢が甦りかねません。ぷげら選手にとっては、1年の成果が問われる1戦ともいえるでしょう。
結果はセットカウント2-1でぷげら選手が勝利。これで「Good 8 Squad」の優勝、「Saishunkan Sol 熊本」の準優勝が決まりました。
優勝した「Good 8 Squad」は、賞金500万円と2月18日、19日にハリウッドで開催される「CAPCOM Pro Tour 2022」の決勝大会「CAPCOM CUP Ⅸ」と同時に開催される「SFL: ワールドチャンピオンシップ 2022」の出場権が与えられます。「ストリートファイターリーグ: Pro-US」、「ストリートファイターリーグ: Pro-EUROPE」の代表チームと「世界最強チーム」の座をかけて闘います。
次回「SFL 2023」は新作『ストリートファイター6』で開催
また、大会の準決勝と決勝戦の間には『ストリートファイター6』のプロデューサー松本脩平氏とディレクター中山貴之氏の2名による『ストリートファイター6』の最新情報も公開されました。
新キャラクターのマリーザとマノン、JPに加え、ダルシムとディージェイ、ブランカの対戦動画を紹介。マリーザのアーマーが付与された技や、ブランカの「ブランカちゃん人形」による攻撃、JPのひび割れた空間からの攻撃など、各キャラクターのより詳細な情報が明らかになりました。
現在、予約受付中の3つのエディションについて、通常版の『Street Fighter 6(ストリートファイター6)』のほか、追加コンテンツとして「Year 1 キャラクターパス」がついてくる『Street Fighter 6 デラックスエディション』や、「Year 1 キャラクターパス」に加えてさらに「Year 1 アルティメットパス」もついてくる『Street Fighter 6 アルティメットエディション』も発表されました。
「Year 1 キャラクターパス」と「Year 1 アルティメットパス」は『ストリートファイター6』リリース後の1年間の追加キャラ4体が含まれます。これらのパスがあれば、初期18キャラクターに加え、発売後順次にリリース予定の追加4キャラクターを使えるようになるわけです。
大会のエンディングでは、辻本春弘代表取締役が登壇し、「ストリートファイターリーグ: Pro-JP 2023」を『ストリートファイター6』で行うことを発表しました。まだ「SFL: ワールドチャンピオンシップ 2022」が残っていますが、日本のSFLはこれで終了です。
今回は例年以上に白熱し、盛り上がった1年になったのではないでしょうか。リーグ本節の配信同時接続者数も2万~3万を安定して叩きだし、今回のグランドファイナルのチケットも即完売です。
それも、生活のリソースの大半を『ストリートファイターV』に捧げてきた選手のひたむきなプレイがあったからでしょう。エンディングで勝者となったガチくん選手やカワノ選手、惜しくも準優勝となったネモ選手が涙を見せたのは、それだけ真剣に取り組んできたことの表れではないでしょうか。
「ストリートファイターリーグ: Pro-JP 2023」がどんなレギュレーションで行われるかは未発表ですが、この興奮を間近に感じてもらうためにも、リーグ本節から有観客オフラインでの開催を望みます。
オフライン会場ではさまざまなブースが用意されており、休憩時間もさまざまな楽しみがありました。また、会場にはプロ選手などの姿もあり、快く写真撮影に応じてくれました。このあたりもオフラインイベントならではの楽しみです。
優勝した「Good 8 Squad」にインタビュー!
最後に、優勝した「Good 8 Squad」のインタビューをお届けします。
――優勝した感想をお願いします。
ガチくん選手(以下、ガチくん):すごくうれしいです。どぐらさんに長時間練習に付き合っていただいたのには本当に感謝しています。まだ「SFL: ワールドチャンピオンシップ 2022」が残っているので、もう少しお付き合いいただければ。
カワノ選手(以下、カワノ):超うれしいです。でもすっごく疲れました。これでちょっとひと息付けます。今回は努力が報われてよかったです。
ぷげら選手(以下、ぷげら):みんながんばったからではありますが、今回は勝ちそうだなって気配を常々感じていました。チーム戦ってあまり得意じゃなかったんですよね。個人戦のほうが好きですし。でもSFLだけは別だな、いいものだなって思いました。
どぐら選手(以下、どぐら):正直なところ僕自身の中では『ストリートファイターV』に執着がほとんどなくなっていたんですよ。もはや余生のような感じでした。でも、ドラフトで「Good 8 Squad」に加入したら、メンバーのやる気がすさまじくて圧倒されたんです。前回、惜しいところで優勝を逃したこともあるんでしょうけど、その姿勢を見て、こいつらを勝たせてあげたいって強く思いました。個人的にも優勝は久しぶりだったので、感慨深さがありました。
――リーグを終えて、特にうれしかったことはなんでしょうか。
どぐら:例年だと海外を中心にカプコンプロツアーを回っていたんですけど、新型コロナの影響でSFLが活動の中心になりました。体力的には楽になりましたし、格闘ゲームを観たことがない層にもリーチできたみたいで、いろんな面でSFLはすごいと思います。優勝もできたんで、言うことないです。
ぷげら:年々観てくれる人が増えていて、「応援しています」という声を聞くようになりました。2022シーズンは、キャラバンなどのイベントもあって、ファンの存在を間近で感じられました。
カワノ:うれしかったことも、楽しかったことも、そんなにないですね(笑)。それだけ辛かったです。強いてあげるのであれば、自分がうまくなっていく感覚は楽しかったですね。グランドファイナルで初めて出したルークをやり始めたときは、すでにルーク対策が出回っていたので、誰とやっても勝てませんでした。そこから徐々にうまくなっていく過程を味わえたのは楽しかったです。
ガチくん:優勝したことはもちろんうれしいんですが、今日、カワノがルークで勝ったときにすごく喜んでいたんですよね。1年通してあれだけ喜んでいたのは見たことなかったので、本当に結果が出せて良かったと思いました。
――「SFL: ワールドチャンピオンシップ 2022」に向けて、USやEUROPEの対策はするのでしょうか。
ガチくん:正直、日本でのリーグ本戦やグランドファイナルほどやらなくてもいけるんじゃないかなと思っています。個人レベルで見ても、日本のリーグのレベルが一番高いと思っています。練習もしますし、注目もしますけど、ちょっと一旦休みます。
カワノ選手:カプコンカップがあるので練習はします。一度休んでしまうとそのままやらなくなってしまうので。直前に詰め込むのは自分に合っていないので、普段から積み重ねていく必要があるんですが、ちょっとどうしようかなって悩み中です。
ぷげら:「明日、大会ですよ」っていつ言われても良い状態でないと、勝てないと思うので、やり続けます。ただ、カプコンカップやワールドチャンピオンシップに向けて詰め込むようなことはもうしないですね。今まで通りにやっていきます。
どぐら:何もしません!(笑) チームメイトに「さすがにそろそろ……」って言われたらやろうと思います。やるとなったらきっちりやります。
――いよいよ2023年からタイトルが『ストリートファイター6』に移行しますが、タイトルが変わってもプロ選手を続けていきますか。
ガチくん:プロゲーマーとして継続はしていくつもりですけど、ゲームが新しくなって新しい選手が入ってくると思います。入れ替えはあると思いますので、新しい人の勢いに負けんようにします。
カワノ:基本続けると思いますけど、何かほかに本気でやってみたいことができたら、そっちにいくかもしれません。
ぷげら:僕は今やってみたいことが格ゲーなんで、続けていきたいなと思います。
どぐら:打算的なこと言うと、『ストリートファイター6』を使用しての1年目となるSFLはめっちゃくちゃ盛り上がると思うので、そこは乗っかっていきたいです。まあ、正直プロゲーマーは勝てなくなったら辞めどきかなと思っているので、そうなるまではしばらくやるんじゃないでしょうか。
――ありがとうございました。