3月21日、秋葉原にて「ストリートファイターリーグ powered by RAGE」のファイナルセクションが行われた。同リーグは、『ストリートファイターV AE(ストV AE)』を使って3人1組で戦うチームの大会だ。

昨年は参加者すべてプロ選手だったが、今回は「エクストリームクラス」と呼ばれるクラスに分類されたプロ選手6人が、全国からトライアウトで選抜された「ハイクラス」と、オーディションで選ばれた「ビギナークラス」から、それぞれ1名ずつドラフト指名してチームを組成する。なお、ビギナークラスの選手は、オーディションで初めて『ストV AE』に触れたというレベルだ。

リーグの試合形式は、同じクラスの選手が対戦する星取戦。勝利チームには対戦ごとにポイントが与えられ、ポイント獲得上位3チームがファイナルセクションへ進出する。ポイントはクラスによって異なり、ビギナークラスは1ポイント、ハイクラスは2ポイント、エクストリームクラスは3ポイントだ。

  • ファイナルセクションの大会前の様子。開場前には入場待機列ができていた

  • 司会はRAGEでお馴染みのタレント・八田亜矢子さんと、お笑いコンビ「ノンスタイル」の井上裕介さんの2人。ゲストは自身もストVをプレイする「ゴールデンボンバー」の歌広場淳さんだ

出場チームは全6チーム。リーグは10節まで行われ、それぞれのチームと2回ずつ対戦する。10節終了時点で、板橋ザンギエフ選手率いる「イタザン オーシャン」が1位抜けし、ネモ選手率いる「ネモ オーロラ」が2位、マゴ選手率いる「マゴ スカーレット」が3位で、ファイナルセクションへの進出を決めた。

ファイナルセクションはこれまでのルールと異なり、10ポイント先取で勝ち抜け。同クラスでの対戦やクラスによるポイント数は変わらない。

  • 1位通過の「イタザン オーシャン」。リーダーの板橋ザンギエフ選手(写真中央)と、ハイクラスのもっちゃん選手(写真右)、ビギナークラスの木村圭汰選手(写真左)

  • 2位通過の「ネモ オーロラ」。リーダーのネモ選手(写真中央)、ハイクラスのあんまん選手(写真右)、ビギナークラスの奥村茉実選手(写真左)

  • 3位通過の「マゴ スカーレット」。リーダーのマゴ選手(写真中央)、ハイクラスのさかがみ選手(写真右)、ビギナークラスの国定凉介選手(写真左)

まずは、2位通過と3位通過のチームによるセミファイナルが行われた。2位には2ポイントのアドバンテージが付与されるが、3位のマゴ スカーレットのビギナークラス・国定選手が勝利すると、ハイクラス・さかがみ選手が続き、ポイント差をひっくり返す。しかし、エクストリームクラスの対戦でリーダのマゴ選手がネモ選手に連敗してしまい、マゴ スカーレットは敗退。ネモ オーロラがグランドファイナルに進出した。

グランドファイナルは、リーグ戦1位通過のイタザン オーシャンと、セミファイナルを勝ち上がって意気揚々のネモ オーロラとの対決だ。ネモ オーロラの奥村選手は今大会唯一の女性プレイヤー。リーグ中は未勝利だったが、回を追うごとに動きにキレが出てきていた。グランドファイナルでは、「初勝利も目前」といったところだったが、イタザン オーシャンの木村選手の前に敗れる。ハイクラスのもっちゃん選手、あんまん選手の対戦では、2回の対戦機会で1勝1敗と好勝負を見せるも、リーダー対決を板橋ザンギエフ選手が制し、イタザン オーシャンが優勝を勝ち取った。

  • さかがみ選手にアドバイスするマゴ選手。基本的に個人戦が多い対戦格闘ゲームにおいて、仲間同士でアドバイスできるのがストリートファイターリーグのいいところだろう

  • 奥村茉莉選手を指導するネモ選手。残念ながら未勝利で終わった奥村茉莉選手だが、唯一の女性参加者として気を吐いていた

  • 木村圭汰選手の試合を暖かく見守る板橋ザンギエフ選手。1位通過の余裕を感じさせる

ビギナーが躍動を見せた3カ月間

今リーグの見どころは、なんと言ってもビギナークラス。『ストリートファイター』シリーズはもちろん、対戦格闘ゲームにほぼ触れたことがない選手が、短期間でどれだけ成長できるかにも注目が集まった。

そもそも対戦格闘ゲームは、ほかのゲームに比べてテクニカルな操作が必要で、最初は基本的な必殺技の「波動拳」ですら、まともに出せない人が多い。しかし、同リーグに参加したビギナークラスの選手たちは、必殺技のコマンドを使いこなすだけでなく、「コンボ」や「Vリバーサル」などの特殊なアクションまでしっかりと使いこなしていた。

フィジカルに依存するリアルスポーツを始めようとした場合、普段から体力トレーニングを行っている人を除き、まずは体力づくりを行う必要があるだろう。テクニック面を磨く前に、ある程度基礎を身につけなければならないのだ。

その点、基礎体力を必要としないeスポーツは、3カ月程度の短期間でも成長することができる。今回はそれを実証したのではないだろうか。また、ビギナーで参加した選手は、立派に成長した大人でもある。ある程度、年を重ねてから新たにタイトルをプレイし始めた場合でも、十分成長を期待できるのがeスポーツならではの魅力と言えよう。

次世代スターに期待したい『ストV AE』の新リーグ

今回の大会終了後には、小野プロデューサーから新たなリーグの構想が発表された。

  • 新たなリーグ構想を発表する小野プロデューサー

新たなリーグでは、トッププロまでの道のりとして「ルーキークラス」「ビギナークラス」「ハイクラス」「トップクラス」とクラス分けし、多くの人が参加しやすいように門戸を開いている。

ビギナークラスからトップクラスまでを「ストリートファイターリーグ:トライアル」とし、今回のエクストリームクラスにあたるプロ選手向けを「ストリートファイターリーグ:Pro-JP」とした。また、プロ選手となれば、これまでと同様に「カプコンプロツアー」や「カプコンカップ」など、トップリーグツアーにも参加できる。つまり、プロの活躍の場を増やすとともに、プロへの道をより明確に示したと言ったところだろう。

  • 5つのクラスに分けられ、それぞれのクラスで好成績を残すことで、上のクラスは進出できる

これまで対戦格闘ゲームでは、熟練者と初心者のマッチングが行われることもあり、初心者は入りにくい環境だった。その結果、対戦格闘ゲームのプレイ人口は激減し、ある種選ばれた人のみがプレイできる場となってしまっていたのだ。明確なクラス分けをすることで、実力の近いプレイヤーと戦えるうえに、成長とともに上のクラスを目指せるようになれば、初心者がプレイするハードルを下げることができるだろう。

eスポーツでは、プロを中心としたトップ選手の競い合いに注目しがちだが、初心者、中級者が活躍できる場を作ることも重要だ。それによってプレイ人口は増加し、未来のプロ選手やスター選手が生まれる土壌が育まれるのである。

「ストリートファイターリーグ:トライアル」から、次世代のスターが誕生することに期待したいところだ。