毎日のように変なDVDを観ていますが、飽きません。知り合いの映画ライターさんが「いくら映画好きでも、仕事で観続けてると辛いのよ~」とぼやいていたのを思い出しました。どうして僕は飽きないのでしょうか? もしかして仕事意識が欠落しているのでは? そんな疑念が脳裏をかすめました。深く考えると、大変な事になりそうなので、何も考えずに変なDVDを観続けようと思います。
今回は昔ながらのマニアの世界を紹介したDVDを中心に観てみました。今更ですが、車も犬も鉄道も鳥人間も、本当に奥が深いですね。奥が深いだけでなく、凄くお金がかかります。そして、何よりもマニアの方々のこだわりが半端じゃないです。
蕎麦屋経営(60歳)のカウンタックオーナーも
『スーパーカーと暮らす』を観ました。フェラーリ、カウンタック、ポルシェといった誰でも知っている有名なスーパーカーだけでなく、デ・トマソ・パンテーラ、ランチア・ストラトスといった、めったに走っている所を拝めないレア車が惜しみなく登場します。というか僕なんか一度も生で見た事ないです。「スーパーカーが好きです」とか「なんかスーパーカーってカッコイイよね」とかいうレベルの人はこの作品には登場しません。あくまで「スーパーカーに人生の全てを捧げ、共に暮らす」レベルの人限定です。もう、スーパーカーが生活の一部というか完全に相棒なのです。彼氏(彼女)以上の存在なのです。この作品には子供の頃の憧れだったスーパーカーのオーナーになってしまった人々が、その驚愕のエピソードと共に多数登場します。夢を叶えるという次元では、「アイドルを嫁さんに貰う」とか「プロ野球選手になる」というのと、同レベルの感じがします。
たとえばフェラーリディノ246GTのオーナー。廃車状態のボロボロのディノを900万円で購入。当時の写真を見る限りいくらディノと言っても、900万円の価値があるとはとても思えないほど酷い状態です。レストア(いわゆる修理)に5年半の月日と1,500万円の資金を投入し、晴れてオーナーに。でも、車高が低すぎて高速のICでチケットを取るのも大変だし、しょっちゅうエンストします。それでも、「ディノでドライブするのはとてもスリリング」と満面の笑顔で語ります。キャンプ場で眠る時まで、ディノの近くにテントを張るという徹底ぶりです。
また、30年前の小学生の時に街で見たロータス・ヨーロッパSPが忘れられず、そのままカーデザイナーになった人のエピソードも感動的です。彼は8年の歳月と700万円をかけてレストアしたロータス・ヨーロッパSPのオーナーになります。そして、自分が小学生の時に目撃したロータスのオーナーと30年振りに再会します。そのオーナーは、なんと30年前と同じロータスに乗り続けていたのです。このように、人とスーパーカーにまつわる凄いエピソード満載です。
スーパーカーと暮らす BOX |
もう普通に航空機コンテスト化してます
おなじみの鳥人間コンテストのDVDを観ました。タイトルが『全記録』でなく、『全機録』となっているのがポイントです。優秀な機体とその開発チームにスポットを当て、まとめられています。初期の頃はただ羽根を着けただけの人が、そのまま海にダイブ、という微笑ましい情景もあった鳥人間コンテストですが、最近は完全にプロの世界です。動力なしのグライダーで400メートル以上の飛行は当たり前。足漕ぎ動力をプロペラに伝えて飛ぶ「人力プロペラ機ディスタンス部門」では、4,000メートル飛ぶ機体まで登場します。もう、鳥人間ではなく完全に航空機です。競技内容的にもF1グランプリみたいな感じでハードです。
1年間の開発時間に加え、莫大な費用をかけて製作した機体たちですが、どんなに長い飛距離を出したとしても、最後は琵琶湖に墜落(着水という感じで綺麗に落ちる機体もありますが…)してバラバラに壊れてしまいます。そんな事などお構いなしに、墜落した直後から、もう来年の機体計画を練りはじめる参加者たちの情熱に、琵琶湖の水温も上昇しそうです。
鳥人間コンテスト 2007 全機録 |
無機質なモノに萌えてみる
CGかと思うほど美麗な建造物が夜景に浮かび上がり、もの凄いノイズが聴こえます。そう、ここは工場。世間には色々なマニアがいますが、工場の外観にグッとくる人々も沢山いるみたいです。
とにかく映像は凄いです。工場の外観やパーツがたっぷり堪能できます。ダクト、パイプ、手摺、巨大タンク! とどめは全パーツにこびり付いたオイル!! 男っぽい金属パーツ映像満載です。BGMが流れている部分もありますが、基本はゴーッという工場周辺に響き渡る音がそのまま収録されています。工場の音が、自宅のサラウンドスピーカーから、ただ無常に鳴り響き続けます。一瞬、僕の居る場所は、川崎の工場地帯かと思ってしまいました。でも収録されている場所は四日市、阪神、水島、坂出、だったので全然違いました。もう少し工場の事を勉強しなければと思いました。工場の外観の映像が多いのですが、工場内のメカ類なんかもアップで観たかったです。
工場萌えな日々2 |
耳まで切られ最高の犬を目指します
ドッグショーって、あまり身近な感じはしませんが、実は国内で年間700回も開催されているそうです。その頂点である12月の東京インターナショナルドッグショーに向け、様々な立場の人々、そして犬たちが奔走する様が描かれたドキュメンタリー作品を観ました。華麗に見えるドッグショーの世界ですが、実情はかなり過酷。ドッグショーで勝つためには綺麗な姿勢で歩く事が肝心、とウォーキングマシンで強制的に歩かされる犬まで登場します。犬を厳しく訓練しながら、公園で夫婦喧嘩なんて当たり前の世界です。
ジャパンケネルクラブには180もの犬種が登録されていて、その理想像にどれだけその犬が近いかを、タイプ、クオリティー、コンデション、サウンドネス(鳴き声です)、バランス、キャラクターなどの6項目で競い合うというのがドッグショーです。その理想の姿を目指すのも大変。ドーベルマンは幼い頃に、耳を素敵な立ち耳に整形するために切られます。ショーの休憩中も、良い姿勢の癖をつけるため、犬たちは座る事を許されません。勿論、人間だって頑張ります。ハンドラーという犬を操る資格を所得しようと、六本木のお水のお姉さんも愛犬と共にハードなトレーニングを続けます。ステイという、静止した美しいポーズを作るため、ドッグショーの犬にはお座りを仕込まないそうです。幼少の頃、僕の飼い犬はいくら練習しても、お座りもお手も出来ませんでした。今思うと、ドッグショー向けの犬だったのかもしれません。でも、よく考えたら、雑種でした。ちなみに、犬好きで有名な川原亜矢子がナレーションを担当しています。でも、彼女の愛犬・ソレイユは出てきません。
ドッグショー |
超高度な制作テクニック満載
鉄道模型のエキスパートたちが登場するDVDを観ました。鉄道模型を使った超精巧なジオラマがたっぷり拝めちゃいます。「蒲田に現存する最強造形集団」、「車輌模型一人工場」、「路面モジュールのスペシャリスト」など、格闘家顔負けのキャッチフレーズを持つ鉄道模型マニアが凄いテクニックを見せてくれます。もう完全に全員TVチャンピオンレベルなので、無駄に競う事もなく、各自がテクを披露してくれます。
精巧なジオラマを制作するために、主役の車輌にもこだわります。150分の1の鉄道模型車輌の屋根の配管や、幌部分の特殊パーツまで自作で再現しちゃいます。挙句の果てには、欧米の景色を再現するためと、長崎ハウステンボスまでロケハンで向かい、3DCADを駆使した立体データを元に、建造物パーツを本物そっくりに制作します。爪楊枝や両面テープ、果てはじゅうたんまでを素材として制作される鉄道模型ジオラマには、車両搭載カメラまであり、車窓からジオラマの景色を楽しむこともできます。「相鉄横浜駅周辺は最高です」と満面の笑顔で語り、自分が毎日運転している路線の風景を再現する鉄道模型マニアの運転士まで登場します。
鉄道アイドルとしても有名な豊岡真澄も登場して、かなりマニアックな解説を披露してくれます。単なる車輌紹介ではなく、パネルパーツの角度を計測したり、車輌に印刷された文字の書体や運転席の椅子の色、ブレーキハンドルの形まで解説しちゃうのです。それで最後に「制作の参考にしてください」というのだから、もう太刀打ちできません。
鉄道模型チャンネル DVD-BOX |
今回はマニアな人々の好きな対象への壮絶なこだわりを改めて感じました。僕も負けじと原稿料や貯金の大部分を変なDVD購入に使おうと思います。仕事意識どころか、生活意識も欠落しているような気もしますが、あまり深く考えない事にします。