先日、担当編集の方に「このコラム、意外と読まれてるんですよ」と聞かされ、軽くビビリました。変なDVDばかりを好き勝手に観ては紹介していたので、いつ注意されるかと、本当にビクビクしてたんです。部屋でひとりDVDをひたすら観ながら、自分は正しい事をしているのだろうかと、不安で胸がいっぱいの夏です。ちなみに誕生日を迎えた瞬間には後半で紹介する『カミロボファイト 魔王VSブルーキラー』を観ていました。正しい事をしているのでしょうか。
千の風になって
そんな夏の不安を解消するために、読者人気も意識してメジャーな作品を観ようと思い、NHKで放送され大きな反響を呼んだドキュメンタリー『千の風になって』を観ました。昨年度のNHK再放送希望番組ランキング第1位に輝いたという作品です。不勉強で放送されていた事すら知らなかったですが、まあ、いい機会なので観る事にしました。
世界中の死者を悼む場所で読まれてきた作者不明の詩『千の風になって』。この詩を巡り、女優の木村多江が世界中を旅するという内容です。この詩が最初にどこかの墓標に刻まれた時は、本当に純粋に死を悼むためのものだったはずです。でも、世界の様々な国でこの詩に曲が付けられ、CDがリリースされているという現実に、少しだけめまいを感じてしまいました。もちろん、この詩や曲で癒されている人々には何も問題はないのですが、お金の匂いがします。
木村さんは、10年以上前に亡くなった父親の死に責任を感じ続けていて、それが心の傷になっています。そんな彼女が、日本、アメリカ、イギリス、アイルランドと、この詩に関連した旅を続けていき、旅先で出会う人々に癒されていきます。確かにこの詩は、大切な人を失った人の心には強く深く響くのですが、木村さんはこの詩とはまったく関係なく、ただ単に旅先で会った人の優しさに癒されていたように感じます。本当に木村さんは、全ての訪問国で泣きます。
木村さん同様、僕も多少は傷を抱えているので、癒された木村さんがとても羨ましかったです。僕も癒されたかったのですが、癒しの旅どころか23区外に出かけるお金もないので、とりあえずひたすらDVDを観ながら、自然治癒力に期待しました。
千の風になって |
台本まったくなしの即興劇
またもメジャーな人の作品です。普段はバラエティなどで、まあ無難な立ち位置にいるという感じのドランクドラゴンの塚地ですが、この作品ではちょっと違います。「お笑いの人がマジで演技をする」みたいな感じでもなく、かなりハードルの高い即興劇に挑んでいるのです。
まず、このコントには台本がありません。おまけに、塚地は毎回ゲストに誰が来るのかさえ知らされていません。こう書くと、自由度の高いコントのような気がしますが、設定の縛りが凄いのです。塚地は記憶喪失のライターで、ある殺人事件の真相に迫っていましたが、もう少しで解決! というところで記憶を失ってしまったのです。毎回登場するゲストの12人は、なんらかの手がかりを持っていて、その中に犯人がいる可能性もあります。でも、記憶をなくした塚地は12人の名前も素性も知りません。この厳しい設定の中、塚地は犯人までたどり着かないとならないのです。もちろん、テレビ的に面白い話を展開しながら!
かつて、ドランクドラゴンが、「動物があまりいないから人気の出ない動物園」という漫才をやった時、相方の鈴木が間違えて「動物が沢山いるから人気が出ない」と話を始めてしまったそうです。その時塚地はあわてながらも、アドリブで話を進めて無理やり漫才を成立させたといいます。そんな凄いエピソードを思い出しました。
つかじの無我 ~12人の証言者~ 究極版 第2巻 |
こちらは正統派のコントです
即興劇に対して、こちらは完全に計算されつくしたコントです。現在は活動を休止している伝説のコント集団・ジョビジョバのリーダーとして、全ての公演の構成・演出・出演を担当していたマギー。自身のユニット活動だけでなく、ドラマや映画の脚本家兼俳優としても評価を得ている彼が、人気放送作家の福田雄一と新ユニットU-1グランプリを結成。その最初の舞台がこのDVDです。取調室というシチュエーションにこだわったコントが、複数収録されています。しかし塚地の作品もですが、コントや舞台って、本当に殺人事件を題材にした作品が多いですよね。
U-1グランプリ CASE01『取調室』 |
個人の妄想が世界に旅立つ!
メジャーな作品が続いたので、ややいつものノリでちょっと変わった作品を。『カミロボファイト』って知ってますか? 安居智博というひとりの男が、小学2年生から延々と針金と紙で作った手製の可動ロボでプロレスを楽しんでいました。なんと20年以上に渡り400体ものカミロボを製作、趣味としてそのカミロボで遊び、詳細な設定まで作り続けていたという彼の脳内世界。その世界が演劇やプロレスと共に映像化されました。
満員の後楽園ホールのリング上にはちゃぶ台が置かれ、安居氏が部屋でひとりで遊ぶ時と同じようにカミロボを手にしてプロレスゴッコ。その模様がモニターで場内に流され、観客は歓声を上げる。部屋のひとり遊びが、万人に受けるエンタテインメントになってしまった瞬間がここにあります。
カミロボファイト 魔王VSブルーキラー |
愛情とお金に関して、色々と感じてしまいます
最後はアメリカの凄いバラエティ番組を2タイトル。まずはアメリカ版『あいのり』と呼ばれている『誘惑のアイランド』。最高に中の良い4組のカップルが、男4人、女4人に分けられ、それぞれ別々の場所へ。男の元には水着の美女軍団、女の元にはイケメン軍団が派遣され、恋人と離れた男女をひたすら過激に誘惑します。そしてその模様はすべてモニターされていて、離れた場所にいる恋人に見られているのです。旅立ちの前は、どのカップルも愛し合い、変わらぬ愛を育み続けているように思ったのですが、やはりすべては幻想に過ぎないんでしょうか? そんな悲しい気持ちになりました。
もう1本はお金を巡る愛憎バラエティです。億万長者との結婚を夢見る独身美女が、フランスの古城に集まります。そこに登場したのは、高価な服に身を包んだ若き億万長者。彼との結婚を夢見て、猛烈にアピールする美女たち。しかし、彼には秘密が……。実は彼はただの貧しい青年だったのです。その事実を知った時、果たしてお金目当ての美女たちはどう動くのか? そこらへんの映画よりも凄いドラマが展開されます。やっぱりみんなお金が大好きなんだな、なんてしみじみと感じてしまいました。
誘惑のアイランド DVD-BOX |
ジョー・ミリオネア Love or Money DVD-BOX |
熊方雄二(コミュニティ・アド)
雑文ライター。週刊誌・WEBなど、様々な媒体で活動中。どんな仕事でも引き受けるのが身上。またどんな状況でも楽しみや喜びを見つけるというのが特技。どんな作品の中にも、素敵な部分を見つけ出し、伝えていきたいです。