乾物は常温保存可能で栄養豊富
緊急事態宣言が全国で解除されましたが、ウイルスが消えたわけではありません。新型コロナウイルス感染まん延をきっかけに、日々の食事で健康を保つことの重要性、効率的な買い物や食材使いまわしの大切さを強く意識した人は少なくないでしょう。
そこで、乾物をお勧めしたい。食品をまとめて買っても、冷蔵庫や冷凍庫の容量には限りがあります。
その点、食品を乾燥させることで微生物の働きを抑え、腐敗やカビを防ぐ保存食である乾物なら、保存も常温でOK。保存性だけでなく、栄養価も高く、調理も意外と簡単ですよ。
静岡で生まれ茨城で盛んになった干し芋
干し芋は乾燥芋とも呼ばれ、最近は「紅はるか」や「シルクスイート」、「安納芋」など、さまざまな品種のさつまいもを使ったものが市販されています。コンビニでもお菓子のコーナーで見かけるような安価で気軽なものから、贈答品レベルの高級品までバラエティー豊富。
そんな干し芋の生産量トップは茨城県といわれていますが、干し芋を作り始めたのは静岡が最初だそう。さらにさかのぼると、干し芋の原料のさつまいもは、中国から九州の鹿児島に紹介されました。
静岡で遭難した薩摩藩(現・鹿児島県)の船を、地元の大澤権右衛門(おおさわ・ごんえもん)が助けたのがきっかけで静岡にさつまいもがもたらされ、干し芋の技術が考案されたといわれています。
その後、茨城に干し芋が伝わったのも、静岡の沖での遭難が契機。茨城・阿字ヶ浦の照沼勘太郎が静岡で見た干し芋を地元で作り始め、茨城で生産が盛んになったそうです。
戦争中はさつまいも主食となり、干し芋どころではありませんでしたが、戦後は県の推奨もあり生産が復活。商業的な生産の他、蒸したさつまいもを吊るして干すだけと簡単なため、年々手作りが廃れつつありますが自家製する家庭もあるそうです。
冷たく乾燥した木枯らしが吹く冬が、生産の最盛期です。
ご飯、おかず、おやつに大活躍
市販の干し芋は加熱せずそのまま食べられますが、トースターで軽く焼くと香ばしさが増して、また違ったおいしさ。その他、細切りにしてかき揚げの具にする、薄くスライスして天ぷらにする、ほかほかのご飯に混ぜるなど、アレンジも自由自在なのもいいところ。
パンケーキや蒸しパンなど、お菓子の生地の中に混ぜ入れてもOK。
ちなみに、干し芋は前述の通りに、さつまいもを蒸してスライスし、水分が抜けるまで干すだけ。自宅でも作れますが、時間がかかるのだけが難点。
そこで、炊飯器とフードドライヤー(食品乾燥機)という時短&手抜きアイテムを活用してサクッと作ってみましょう。
蒸す工程は、炊飯器にやってもらいます。よく洗ったさつまいもを適量の水とともに炊飯器に入れ、ご飯のように炊くだけです。ただし、炊飯器の種類により性能が違うので、様子を見ながら水の量と炊飯モード、加熱時間を調節してくださいね。
干す工程は、フードドライヤーにお任せ。ホクホクになったさつまいもは、皮をむきほど良い厚さにスライスして、フードドライヤーにセット。水分が抜けたら完成です。
自家製品は市販品とは違うので早めに食べるか、冷凍保存すると安心です。
乾物は頼りになる
新型コロナウイルス感染症拡大により、保存食の大切さを再確認した人は少なくないでしょう。しかも、常温で保存できる食品は頼りになる存在。
レトルト食品やインスタント食品なども確かに便利ですが、有事の際は真っ先に買い占められてしまいます。それなら、地味な存在ながら滅多に品薄にならない乾物を見直してみませんか。