乾物は常温保存可能で栄養豊富
食品をまとめて買っても、冷蔵庫や冷凍庫の容量には限りがあります。乾物は、食品を乾燥させることで微生物の働きを抑え、腐敗やカビを防ぐ保存食。日本には、大豆や切り干し大根、麩など、さまざまな乾物がありますが、残念ながら最近は地味な存在。
レトルト食品やインスタント食品などは確かに便利ですが、有事の際は真っ先に買い占められてしまいます。それなら、滅多に品薄にならない乾物に、今こそ注目してみましょう。保存性だけでなく、栄養価も高く、調理も意外と簡単ですよ。保存も常温で保存OK!
日本屈指の長寿県・長野県に注目
今回のテーマは、長野の「氷もち」。長野といえば、日本トップクラスの長寿県。自然環境やライフスタイルなど、さまざまな要因が考えられますが、食習慣によるところは大きそうです。昔は、海がなく寒い冬に備えるため塩漬け保存食が盛んで、塩分過多のため平均寿命が短い時代もあったとか。
白く、フワフワして繊細な印象の「氷もち」ですが、いったいどんな食べ物なのでしょう。
長野県民のソウルフード「氷もち」
氷もちといっても、乾物。「氷」というのは、作り方に大きく関係しています。簡単に言うとフリーズドライ食品であり、寒天や高野豆腐、カップラーメンに入っているネギやエビなどもその仲間です。
氷もちの原料は、お餅。杵でついた餅を一定の大きさに切って成形し、紐で結んで一列に。これをしばらく水に浸したのち軒下につるすと、凍ったり溶けたりを繰り返しながら徐々に乾燥していきます。
夜間は氷点下10度以下になることもしばしばの長野ですが、日中は気温が上昇。20日~2カ月ほどの期間で氷もちが完成。
昔は一般家庭でも作られていたようですが、今は市販品が主流。市販品だと、1年や500日、消費期限なしなど、かなりの長期間、常温で保存できるようです。
その起源について調べると、氷もちの始まりは鎌倉時代。江戸時代には、信州諏訪の城主が徳川家光に献上したとの記録もあり、この頃から明治期までは一般庶民による製造が禁止されていたとか。なんだか高貴な食べ物のようですが、果たしてそのお味は……?
氷もちの食べ方あれこれ
そのままかじってみた
口に含むと、唾液でゆっくりとろけていきます。軽く、長期間保存が可能で、餅と同じカロリーがあるということは、災害用備蓄や登山の携帯食に良さそう。火やお湯が使えなくても食べられるのは大きな利点ですね。
牛乳で戻してプリン風
クックパッドの「長野県公式キッチン」で紹介されていた食べ方です。ビニール袋に入れて形を崩し、うつわに移し牛乳と砂糖を加えてレンジで1、2分加熱。冷蔵庫で冷やせばゆるいプリン風。ジャムを加えてもGOOD。
ピザ風
こちらも「長野県公式キッチン」で紹介されていました。お湯で氷もちを戻し、油を引いたフライパンに並べ、その上に具材をのせ、こんがり焼いたら完成。
奥深く謎も多い長野県の乾物文化
お餅自体も保存食なのに、手間暇かけて「氷もち」を作るのはなぜ――。知人の長野県民は、「カビが生えないよう、寒冷地ならではのフリーズドライにしたのでしょうか」とのこと。そうかも。「お湯で溶かして砂糖で甘みを付けたものを、よく祖母が作ってくれました。懐かしい思い出です」と教えてくれました。
「乾燥したてを賽の目に切って油で揚げてあられにしたりもおいしい」とか、「そのまま食べると口がパッサパサになって楽しかったです」など、氷もち談義は尽きないようです。
今でこそカロリーゼロで健康食として人気の寒天も長野の特産品ですが、なぜ海なし県で作っているんだろう。長野の食文化は謎だらけで奥深い。さすが長寿県!