50ccの原付は16歳から簡単に取得でき、自動車免許を取れば自動的に付帯されます。しかし、「30km/hの速度規制」や「二段階右折」といった独自の「原付ルール」があり、わずらわしさを感じる方も多いはず。

しかし、その原付を改造して申請することで「原付ルール」から解放されるのをご存じでしょうか?今回は、ミニバイク愛好家にはよく知られている「50ccバイクを125ccクラスに格上げする方法」について解説します。

■「50cc原付」を改造し、スイスイ走れる「原付二種」に

原付からバイクに乗り始めた人は、慣れてくると30km/hや二段階右折などの規制がわずらわしくなり、上のクラスにステップアップを考える方もいます。その場合、小型以上のバイク免許を取得し、125ccクラス以上のバイクに乗り換えるのが一般的です。お金はかかりますが、こうすれば取り締まりにビクビクせず、交通の流れに乗ることもできるからです。

125ccクラスは「原付二種」と呼ばれますが、これは国土交通省が所管する「道路運送車両法」による区分であり、国家公安委員会や警察庁が所管する「道路交通法」では51~125ccのバイクは「原付二種」とは呼ばず、「普通自動二輪車」に区分されます。

とてもややこしいのですが、つまり交通ルール上は125ccクラスを「原付」とは言わないため、30km/hの速度制限や二段階右折はもちろん、アンダーパスなどの標識などに表示された「原付は禁止」にも該当せず、スムーズに走れるというわけです。

ほかにも「125㏄クラス=原付二種」は税金や保険などの維持費も安いため、50ccの「原付」からステップアップするメリットはとても大きいのですが、実は車輛を買い替えなくても、今まで乗っていた「原付」を改造して排気量をアップさせることで「原付二種」に登録変更するという方法があります。

  • かなりややこしい「原付」の定義

■エンジンの排気量をアップする方法

排気量アップの方法は、パーツメーカーから販売されているボアアップキットを組み込むか、エンジン自体を乗せ換えるのが一般的です。

実は構造が簡単だった2ストロークエンジンの時代は50ccエンジンをベースとした80~90ccのモデルも併売されていたため、これらのパーツを流用したり、エンジンごと乗せ換えることが容易でした。燃料供給もアナログで調整できるキャブレターだったため、高校生でも改造を楽しんでいたほどです。

現在のエンジンは4ストローク化して複雑になり、燃料供給も電子制御インジェクションのため、昔よりもコストや手間、スキルといったものが必要になりますが、中・大型のエンジンよりも構造はシンプルなので、ホンダのカブやモンキーといった小型の4ストを改造した経験がある方ならそれほど難しくはありません。ミニバイクの改造を得意としたショップに依頼することもできます。

エンジンを丸ごと乗せ換える場合、同じメーカーのモデルなら比較的簡単にできることもありますが、原付は搭載するエンジンに対して厳密な規則がないため、他メーカーのエンジンを積むことも可能です。ただし、この場合は大幅な加工が必用になります。

  • 排気量アップの方法

■地域によって差がある申請方法

車輛の改造が終わったら、居住している市区町村の役場で「改造申立て」などの書類のほか、ボアアップキットの場合はカタログのコピー、乗せ換えの場合はエンジンの詳細など、改造内容が確認できる資料を添えて申請します。

しかし、提出する書類や審査基準は地域によって差があり、簡単な書類だけで済むところもあれば、現車確認やパーツ購入時の領収書、シリンダーに刻印された排気量の石刷りなどの提出を求める地域もあります。あらかじめ管轄の市区町村に確認しておいた方がよいでしょう。

これらの審査が通れば、50ccの白いナンバープレートを返納して黄色やピンクの新しいナンバープレートが貸与されます。ナンバーが変わるため、自賠責保険や任意保険を取り扱う保険会社にも連絡して変更や引継ぎの手続きを行います。自賠責のステッカーは再交付されますが、これを貼らないと法律上は30万円以下の罰金が科せられますので注意してください。

また、原付二種には車体の前後にU字と三角のマークが貼られていますが、これは警察官が取り締まりの際に判別するための目印なので、付けなくても違反にはなりません。50ccと間違えた警察官に止められたくない人は自作や市販のステッカーを貼っておいた方がよいでしょう。

  • 変更の申請は市区町村の役場で行う

■原付二種に変更できても、過度な改造には要注意!

黄色やピンクのナンバーが貸与されれば今までの「原付一種」が「原付二種」となり、わずらわしかった「原付ルール」から解放されます。しかし、注意しなければならないこともいくつかあります。

まず、市区町村は軽自動車税の課税客体としてナンバープレートを貸与するため、改造の申立てが通ったとしても『公道を走ることを了承した』というものではありません。改造の程度にもよりますが、市区町村が管理しているのは使用者の登録や納税なので、交通の安全を目的とした道路交通法を所管している警察が『安全に公道を走行する保安基準に適合していない』と判断すれば取り締まりの対象になることもあります。

仮に警察官には何も言われなかったとしても、車両によっては排気量アップによるパワーの増加でブレーキなどの性能が不足します。雑な加工でエンジンを乗せ換えた場合、強度不足や振動で破損したり、操安性の悪化によって転倒や事故を起こすリスクもあります。

また、原付二種に登録変更されても「二人乗り」が可能になるわけではありません。二人乗り車両にはステップなどの「乗車装置」が必要ですが、これに関しても厳格な規定や審査機関が定められていないため、どうしても二人乗り仕様にしたい場合は、管轄の役場や警察、運輸支局などに問い合わせた方がよいでしょう。

そのほか、当然ですが登録変更された車両は「原付免許」では乗ることができなくなり、「小型限定普通二輪」や「AT小型限定普通二輪」以上のバイク免許が必要になります。もしも原付やクルマの免許しか持っていない家族も使っていた場合、原付二種に変更されたことを知らずに乗って検挙されると、「免許条件違反」ではなく非常に罰則の重い「無免許運転」になってしまいます。

ここまで原付二種への登録変更を紹介しましたが、現行モデルは構造が複雑になったため、その個体にかなりの愛着でもない限りは車両ごと買い替えるのが一般的です。しかし、車体を共有する上位機種を持っていた時代の原付なら比較的簡単で、強度的にも大きな問題は出ないはずです。まだまだ個体もパーツも市場に出回っているので、興味のある方はチャレンジしてみてはいかがでしょうか。

  • 法律的には問題なくても、過度な改造はリスクも大きい