バイクの運転で注意したいのは事故や転倒ですが、そのほかにも交通違反の取り締まりがあります。事故のようにケガはしませんが、免許の点数やお財布のダメージは大きいものです。

安全運転を意識していても、つい油断して標識を見落としたり、今までおとがめなしだろうと誤解していた癖が違反とみなされてしまうこともあります。

今回は、そんな「うっかり違反」を防ぐためのノウハウの一部を紹介します。

■反則金や罰金も高額「スピード違反」

交通違反の中でも、免許の点数やお財布にもっとも大きなダメージを与えるのが「スピード違反」。気持ちよく飛ばしていたら、前方の路地から赤い旗を振りながら警察官が出てきたり、突然後方で鳴り響くサイレンの音で真っ青になった……という経験はないでしょうか?

スピード違反で捕まらないようにするには、道路交通法で定められた速度を守ることです。一般道は60km/h、高速道路では100km/hが多く、だいたいの道はこれ位で走っていれば大丈夫……、と考えがちですが、制限速度が低く規制された区間があり、取り締まりはこういうところで行われます。最近は住宅街の取り締まりも強化されていますが、こういった道は子供や老人も多いので十分に速度を落とすべきでしょう。

また、スピード違反で捕まるバイクは単独で飛ばしているケースがほとんどです。周囲に車両がいるときは流れに乗り、単独走行になったときには速度超過に十分に注意しましょう。周囲のクルマが制限速度より速い場合、安全のため流れに乗ることもありますが、他車のペースが落ちるときは取り締まり区間に入ったり、どこかに覆面パトカーが潜んでいる可能性があります。

取り締まりが行われるのは、慢性的に渋滞が発生する区間や連続したカーブを抜けた直線など、いかにも飛ばしてスッキリできそうな場所です。側道などに白バイが待機していることもあり、彼らはものの10秒もあれば死角に入って計測するテクニックを持っています。

あるベテランのバイク便ライダーに聞いた話ですが、彼らは居眠りやあおりなどによる追突事故に巻き込まれたり、うっかり速度超過をして白バイや覆面パトカーに計測されないようにするため、5秒おきにバックミラーを確認しているそうです。

  • 検挙されやすいのは、単独で飛ばしているとき

■判断するのは現場の警察官「一時停止違反」

一時停止違反も頻繁に取り締まりが行われます。ライダーからは見えにくい位置で警察官が監視しており、違反した車両を追跡したり、別の場所で待機している警察官に連絡します。

バイクの一時停止違反で多いのは、足をついたのに『止まらなかった』と指摘されることです。停止時間には何秒間といった明確な判断基準がなく、監視していた警察官が判断します。タイヤが完全に停止してから一呼吸おき、首を大きく振って左右を確認してから発進するくらいの余裕を持てば誤解はされないでしょう。

また、軽微な場合は見逃す傾向にありますが、停止しても線を越えていると違反になります。停止線の位置からでは安全確認ができない道でも、一度は停止線直前でしっかり止まり、確認できる位置まで徐行して進むことを習慣づけたほうがよいでしょう。このほか、最近は信号のない横断歩道での「横断歩行者妨害」の取り締まりも強化されています。『止まれる速度ではなかった』という言い訳は通用しません。

また、停止線に従って一時停止をしっかりしたとしても、肝心の安全確認ができていなければ事故につながります。一時停止が規制されている場所は、それだけ事故のリスクが高い場所というわけです。

  • 一時停止は停止線の前で必ず止まり、一呼吸するくらいの余裕を

■黄色を踏んだらアウト! 「追い越し・通行区分違反」

路上駐車や道路工事など、やむを得ない場合以外は黄色車線をはみ出すことができないのは十分に知られていますが、よく取り締まりが行われるのは交差点における「追い越し・通行区分違反」です。

クルマと違い、車幅の狭いバイクは渋滞時のすり抜けができます。このすり抜け自体もグレーゾーンですが、交差点の手前にある車線境界線が黄色の実線だった場合、これを超えるとほぼ捕まります。

黄色の車線内や一番左の路側帯の場合は見逃されることもありますが、これも道路状況や警察官の判断で変わってきます。しかし、安全面も考慮するなら、車線境界線の色にかかわらず、交差点付近では無理なすり抜けを行わないほうがよいでしょう。相当な渋滞でない限り、スルスルと前に出て割り込まれるはクルマのドライバーにとってもイヤなものです。

また、トラクターや大型特殊車両のような極端に遅い車両が走っていても、黄色のセンターラインを越えて追い越すのはNGです。周囲が広けた農地のような道でも、警察官が監視していることがあります。黙認されるケースもあるようですが、黄色の実線は踏まないようにするのがよいでしょう。

■黄色で慌てると、次に待つのは赤灯とサイレン「信号無視」

直前の信号が黄色になったときは判断が難しいものですが、信号無視で捕まるケースの多くは、前車に続いて急いで交差点に進入し、結果的に交差点に赤で侵入しまったことによるものです。

右折などの矢印信号がある交差点では、次に青に変わるまでは時間がかかってしまうため、赤になっても交差点に進入する車両は少なくありません。公道で黙認されたルールだと勘違いして癖がついてしまうと、いつかは白バイやパトカーに検挙されてしまうでしょう。

また、赤信号の交差点で停止する場合、厳密には停止線を越えると信号無視になります。少しはみ出た程度では見逃される傾向にありますが、警察官も人の子ですので『黄色や赤信号で無理に進入するよりは……』と判断するからでしょう。ただし、信号が青に変わる前の見切り発車は停止線を超えると切符を切られます。

集団ツーリングでは長い隊列を組みますが、隊列の途中で信号が赤になっても突破する人がいます。ほかのメンバーに遅れないためですが、捕まって切符を切られたら余計に時間がかかって迷惑をかけることになります。きちんとしたクラブであれば、メンバーが赤信号にひっかかっても文句など言わず、ペースを落としたり、安全な場所で停車して待っていてくれるはずです。

  • 黄色信号で交差点に入る癖がついている人は注意

■バイクだけが対象になる違反など

そのほか、バイクだけが対象となるものに「二輪車通行禁止区間」の違反が挙げられます。これはバイクの騒音や事故が社会問題になった時代に規制されたもので、現在まで見直しを求める意見が多かったものの、完全に緩和されてはいません。

直前に標識は出ていますが、走行中に規制内容を把握するのも難しいため、土地勘のないライダーはうっかり進入してしまう恐れがあります。二輪車通行禁止区間は「一般社団法人 日本二輪車普及安全協会」のウェブサイトからチェックできるので、初めて行くような地域は事前に確認しておいたほうがよいでしょう。

また、駐車違反はクルマだけでなく、バイクも取り締まりの対象になります。混雑する市街地の駅前や商店街では短時間止めただけで切符を切られますが、交通量の少ない住宅街でも近隣住民から通報されることがあります。

歩道にバイクを止めていることもよく見かけますが、クルマと同じ「車両」なので駐車違反になります。場所によってはたくさんのバイクが違法駐車している歩道や私有地、公開空地もあり、そこなら切符を切られるリスクが減るかもしれませんが、歩行者や土地の所有者にすれば迷惑なもので、イタズラをされることもあります。ライダーとしてのマナーはもちろんですが、愛車を守るためにも駐輪場の利用をおすすめします。

  • 全国に「二輪車通行禁止区間」は数多く残っているので注意したい