「無痛分娩だと愛情が湧かない」「離乳食は手作りがいちばん」――昔から育児当事者を苦しめてきた子育てにまつわる迷信や神話、さらにネット社会で広がる真偽不明の育児情報。
そんな育児の「これってほんと? 」について、ツイッターで人気の小児科医・ふらいと先生をはじめとする専門家たちが答える1冊が登場しました。この連載では、『新生児科医・小児科医ふらいと先生の 子育て「これってほんと?」答えます』(西東社)より、一部抜粋してご紹介します。
離乳食はやっぱり手作りがいちばんなのでしょうか?
A. いいえ。
お世話する人の負担軽減にも離乳食の種類を増やすためにもベビーフードの利用をおすすめします。
離乳食に市販のベビーフードを利用するのはよくないとする背景には、ここまでにも何度か登場した「母性愛神話」があると見て間違いないでしょう。母親が手間をかけることを愛情のあらわれとし、苦労することを美徳とする風潮は、育児中の女性を追い詰めることにしかなりません。
授乳、離乳食についての大規模調査で、「離乳食について困ったこと」をたずねたところ、約3割が「作るのが負担、大変」と回答しました(*1)。
それを受けて、厚生労働省による「授乳・離乳の支援ガイド」では、ベビーフードの利用を「保護者の負担が少しでも軽減するのであれば、それも一つの方法」としています(*2)。ベビーフードを「離乳食を手作りする場合の見本となる」とし、利点と留意点の両方をわかりやすく示しているので、一度読んでみるといいでしょう。
各企業が長年の研究を重ねて開発したベビーフードは、栄養バランスも計算されており、形状も豊富です。離乳食で大事なのは、子どもの発達にあわせて量や種類を調整したり、食べ物の味や触感をいろいろと経験させたり、つかみ食べで手の感覚を養ったりすることです。
それができるのであれば、手作りでもベビーフードでもどちらでもかまいません。負担軽減のために手作りとベビーフードを組み合わせてもよいし、全部ベビーフードに頼ってもよいのです。選択肢のひとつですので、使うことに罪悪感を覚えないでください。
(*1)厚生労働省 平成27年度「乳幼児栄養調査結果の概要」
(*2)厚生労働省 「授乳・離乳の支援ガイド(2019年改定版)」
答えた人:新生児科医/小児科医・今西洋介
新生児科医・小児科医、小児医療ジャーナリスト、一般社団法人チャイルドリテラシー協会代表理事。漫画・ドラマ『コウノドリ』の取材協力医師。作中の今橋先生のモデルでもある。NICUで新生児医療を行う傍ら、ヘルスプロモーションの会社を起業し、公衆衛生学の社会人大学院生として母親に関する疫学研究を行う。SNSを駆使し、小児医療・福祉に関する課題を社会課題として社会に提起。一般の方にわかりやすく解説し、小児医療と社会をつなげるミドルマンを目指す。3姉妹の父親。趣味はNBA観戦。Twitter:@doctor_nw
『新生児科医・小児科医ふらいと先生の 子育て「これってほんと?」答えます』
(西東社刊/1,430円)
もう悩まない、ふりまわされない! Twitterで正確な医療知識を発信しつづける"ふらいと先生"待望の書。子育ての常識は日進月歩。昔は当たり前だったことが今はまったく違う、ということはたくさんあります。また、ネット社会になり育児不安をあおるようなうわさやうそかほんとかわからない情報がSNSなどをつうじて広く拡散されるようにもなりました。いっぽうで、お母さんだけに負担を押しつけるような育児の迷信・神話は変わらず存在し、いまだ「呪い」のように育児当事者を苦しめています。そのひとつひとつについて「これってほんと?」と問い直し、専門家が最新の知見に基づいて科学的に答えていく一冊です。
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