春だ! 花見だ! と浮かれたくなる春。しかし2010年4月期、ドラマ界ではシリアスな雰囲気が色濃くなっているよう。青春モノや恋愛モノ、完全コメディー路線の作品はどちらかと言うと隙間産業的なポジションとなり、サスペンスやミステリーを銘打つ作品が俄然増えているのです。しかも、王道のものだけでなく、コメディーにまで<サスペンス>だの<シリアス>だの、とってつけたような(!?)枕詞が付いていたりして……(詳しくは新ドラマ一覧表の解説を参照)。軽~いドラマが視聴率で苦戦している昨今。比較的好調な大人の硬派なドラマ路線を積極的に取り込んで"連ドラ全滅の事態"を免れたい、というテレビ局側の思いがひしひしと伝わってきます。そんなテレビ局の心願成就を期待しつつ、今回は各局が特に力を入れてそうな新ドラマ5作品をピックアップ!

西島秀俊参入でさらに濃い世界に!? - 『チーム・バチスタ2 ジェネラル・ルージュの凱旋』

骨のある医療ミステリーも"火曜22時枠"の色が出て、意外とハマれる?

妙におどおどした伊藤淳史の演技、「何があった? そんな子じゃなかったよね!?」と問い掛けたくなるような仲村トオルの異様な軽さが意外にもハマっていた前作『チーム・バチスタの栄光』。謎解きのみならず、あの2人の掛け合いと対比にうっかり取り込まれてしまった視聴者も多かったのでは? そんな2人が帰ってくるということで、やはりチェックせずにはいられない『ジェネラル・ルージュの凱旋』。今回は演技派・西島秀俊も参入しますし、さらなる濃い世界を作り出してくれそうです。作品内容的にも大いに期待したいところ。前作に続き、今回も原作&映画をコンプリートした人も改めて楽しめるオリジナルのストーリー展開を用意しているはず! あとは前回同様、次週が待てなくなるような"いい意味で蛇の生殺しのような終わり方"を毎回してくれれば、固定客を確実に掴むでしょう。普通、ドラマや映画のパート2は失速しがちですが、この作品に限っては原作もあることだし、極端に痛い目には遭わなさそう。

さくらの期待度は……☆☆☆

仲村トオルの演技も失速しないでほしい。でも前作以上にチャラくなったら、それはそれで心配(笑)。

完全ビジュアル勝負!? 心でなく目で楽しむべし! - 『怪物くん』

デモリーナを演じることになった稲森。これは思い切った挑戦となりそう

藤子不二雄Aの『怪物くん』が初の実写化!――そのニュースを聞いて、こう思った人も多いでしょう。「月曜ドラマランドじゃあるまいし、なんで『怪物くん』を実写化しようなんて思ってしまったんだろう!?」。だって、怪物くんですよ。どう考えてもビジュアル的にコントにしかならない……。しかし! キャストがコスプレ(!?)した写真を見て、逆に興味が湧いてきました。『歌のおにいさん』で免疫がついたのか、大野智の怪物くん帽子は妙に違和感がない! また松岡昌宏のデキモン、八嶋智人のドラキュラ、上島竜平のオオカミ男、鹿賀丈史の怪物大王――どれも困ったことに(?)ありえないほどのフィット感。なかでも衝撃的なのが稲森いずみのデモリーナ&チェ・ホンマンのフランケン! 稲森にあんな思い切ったコスプレをさせ、まさかのチェ・ホンマンをキャスティングしたプロデューサーにスタンディング・オベーションしたい気持ちでいっぱいです(笑)。原作との違いだの、ストーリーがどうだの、演技力がどうだの、もうそんなことはどうだっていい! 放送前にこれほど割り切った気持ちにさせてくれる作品はそうありません。今をときめく嵐の大野が主演ということもあり、いろんな意味で必見の作品です。

さくらの期待度は……☆☆☆

大ちゃんは今後どこへ向かっていくつもりなのか……。彼の将来も併せて気になります。

これぞNHKドラマの真骨頂! - 『チェイス~国税査察官~』

大人が安心して見られるドラマは貴重!

最近若者に媚を売りがちなNHKですが、やはり専門は"カタいドラマ"。同枠で過去に放送された『ハゲタカ』しかり、『外事警察』しかり。NHKは大人向けの濃厚なドラマを作ってこそ、その手腕をいかんなく発揮できるのです。そして今クール、その流れを汲むのが『チェイス~国税査察官~』。マルサと脱税コンサルタントの攻防劇を江口洋介、ARATA、奥田瑛二ら渋~いキャストが演じます。脚本は当たり外れの落差が激しい坂元裕二(今クールは『Mother』の脚本も担当)ということで、若干安心し切れない部分もありますが、そこはNHKがしっかり手綱を握ってくれていると信じたい! そんなわけで、放送前からどうしても期待に胸が膨らんでしまう『チェイス』。ただし、何ごとも期待しすぎると、"期待はずれ"に終わってしまう結果に……。冷静に鑑賞するのが『チェイス』を存分に楽しむ秘訣かも!?

さくらの期待度は……☆☆☆☆

だけど、やっぱり過度に期待してしまうんですよね……。

東野圭吾パワーで高視聴率を狙う!? - 『新参者』

初の刑事役で主演の阿部寛。再びTBSが"日曜21時枠"で大勝負か?

鉄板とも言える東野圭吾作品。『白夜行』と『流星の絆』のドラマ化でその恩恵を受けてきたTBSが今回目をつけたのが『新参者』です。東野作品ではおなじみの刑事・加賀恭一郎が東京・人形町で起きた殺人事件を紐解いていくという物語。加賀恭一郎には阿部寛をキャスティング。共演には黒木メイサ、向井理、溝端淳平、木村祐一、泉谷しげる、笹野高史、原田美枝子、三浦友和――いや~、局の「絶対に視聴率を取ってやる!」という声が鼻息とともに聞こえてきそうな布陣です。しかも、今回は従来の東野作品が放送された金曜22時枠ではなく、日曜21時枠での放送。数字が取りにくくなっている金曜よりも、『JIN-仁-』で高視聴率がまだ望める枠ということが証明された日曜を選ぶあたり、局が背負う「ハズすわけにはいかない!」というプレッシャーすら感じます。では実際に視聴率を取れるかどうか!? 演出にもよりますが、及第点は取るような気がします。少なくとも初回は原作ファンが様子見でチャンネルを合わせそうですし……。本当の勝負は2話目以降。コメディー以外の主演ドラマではヒットしたことのない阿部ちゃんですが、ここは東野パワーを追い風に一旗揚げてもらいたい!

さくらの期待度は……☆☆☆

前クールのようなバラエティーもどきの演出だけは絶対にやめてほしい……。放送終了時の生電話も要りません(笑)

脚本と演出が"ズレ"ないことが肝心! - 『警部補 矢部謙三』

生瀬勝久のハマリ役・矢部謙三。まさか彼を主人公としたドラマが生まれるとは……

刑事モノ、ミステリーといっても、『警部補 矢部謙三』は全然シリアスではありません。なんせ主人公はあの『トリック』のヅラ刑事・矢部謙三(生瀬勝久)! 当然のごとくコメディーです。そして、矢部謙三といえば生瀬勝久の知名度をグンと上げたキャラクター。しかし! 今やドラマ界で引っ張りだこの生瀬が<矢部謙三で連続ドラマ初主演>とは……。生瀬の遊び心を感じて、なんだか嬉しくなってしまうのは私だけ? ま、それはさておき、肝心のドラマですが、想像どおりバカバカしくなることは間違いないでしょう。ただ懸念すべきは、本家である『トリック』が定期的にSPドラマや映画で復活するたび、バカバカしさを通り越して寒々しくなりつつあること。矢部自体はブレてないと言えばブレてないのですが、脚本や演出が狙いすぎてパート1のころの勢いや面白さを失ってきているため、今回の『警部補 矢部謙三』もそうなってしまったら残念で仕方ありません。せっかく役者も生瀬をはじめ、池田鉄洋、貫地谷しほりといった演技派を揃えているのですから、ぜひ彼らの"カミ"がかり的な芝居を潰してしまわないような脚本と演出をお願いしたいところ!

さくらの期待度は……☆☆

すべては5月公開の映画『劇場版TRICK 霊能力者バトルロイヤル』の宣伝のため……という商魂たくましさが引っかかるので、☆は少なめ。

2010年4月放送スタートの主な連続ドラマ

放送スタート日時 放送局 タイトル 主なキャスト 内容
3月30日(火)22:00 NHK総合 八日目の蝉 檀れい、北乃きい、坂井真紀、岸谷五朗ほか 各方面から絶賛された角田光代の同名小説を実写化。不倫相手の子を誘拐した希和子(檀れい)の逃亡の日々を描く。ドラマを引っ張るのは希和子の心情。原作で抉るように綴られた女の切ないまでの愚かさを、檀がどこまで表現できるかが大きなポイントに!
4月6日(火)22:00 フジテレビ系 チーム・バチスタ2 ジェネラル・ルージュの凱旋 伊藤淳史、仲村トオル、西島秀俊ほか 伊藤淳史演じる心療内科医・田口&仲村トオル演じる厚労省官僚・白鳥のコンビが再び活躍。"ジェネラル・ルージュ(血まみれ将軍)"と呼ばれる天才救命医・速水(西島秀俊)の賄賂疑惑の真相を究明していく。内容・視聴率ともに、2008年に放送された『チーム・バチスタの栄光』を超えられるかどうかに注目!
4月7日(水)21:00 テレビ朝日系 臨場 内野聖陽、松下由樹、高嶋政伸ほか 内野聖陽演じる検視官・倉石が復活。さまざまな殺人事件の検視を通して死者の声を根こそぎ拾い上げながら、事件の真相を読み解いていく。前シリーズで安定した視聴率を記録した本作品だけに、今クールも安泰が保障されているのでは?
4月8日(木)23:58 日本テレビ系 プロゴルファー花 加藤ローサ、片瀬那奈、井上正大、石黒賢ほか 2億円の借金を抱えるプロゴルファー・花(加藤ローサ)が、大金持ちのゴルファー・リコ(片瀬那奈)とバトルを展開。スポ根コメディーと銘打つからには、ありえないゴルフの離れ業なんかも登場してほしいところ。
4月9日(金)23:15 テレビ朝日系 警部補 矢部謙三 生瀬勝久、池田鉄洋、貫地谷しほり、姜暢雄、原幹恵ほか 生瀬勝久の連続ドラマ初主演作は、人気ドラマ『トリック』のスピンオフ・ドラマ。"ヅラ刑事"として大人気を博した矢部謙三(生瀬)が難事件に挑む。おなじみの頭部ネタはもちろん、『トリック』シリーズならではのバカバカしい小ネタやチープ感に期待!"
4月9日(金)24:15 テレビ東京ほか トラブルマン 加藤成亮、岩佐真悠子、寺島進ほか 保険会社員・徳田(加藤成亮)が次々とトラブルに巻き込まれていく"巻き込まれ型シリアスコメディー"。脚本・演出はテレビドラマ初進出となる映画監督SABU。シリアスコメディーという定義の意図するところがイマイチ分からないが、本編を見たら掴める……かも。
4月13日(火)21:00 フジテレビ系 絶対零度~未解決事件特命捜査~ 上戸彩、宮迫博之、山口紗弥加、北大路欣也ほか 警視庁捜査一課内に新設された、未解決事件捜査を専門とする「特命捜査対策室」を舞台にした社会派ドラマ。主人公の新米刑事・泉役を上戸彩が演じる。上戸にとっては初の刑事役。うまくハマるかどうか見もの。
4月14日(水)22:00 日本テレビ系 Mother 松雪泰子、山本耕史、田中裕子ほか 虐待を受ける教え子を誘拐して母親代わりになろうとする小学校教諭・奈緒(松雪泰子)が主人公のヒューマンドラマ。母性とは何かを問う作品。昨年同枠で放送された『アイシテル~海容~』のように、衝撃と話題性を生む作品に成長する予感大。
4月15日(木)20:00 テレビ朝日系 おみやさん 渡瀬恒彦、櫻井淳子、七瀬なつみほか 京都を舞台に、窓際警察官・鳥居(渡瀬恒彦)が迷宮入り事件を解決していくシリーズの第7弾。初回は2時間スペシャル。特別なリニューアルもなく、いつもの通り安心して観られる作品。
4月15日(木)12:00 フジテレビ系 素直になれなくて 瑛太、上野樹里、ジェジュン、関めぐみ、玉山鉄二、風吹ジュンほか いま流行中のTwitterで知り合った男女5人が友情を育んでいく様を描く青春群像劇。W主演の瑛太と上野樹里をはじめ、安心できる役者が揃っている。脚本は北川悦吏子。久々の連ドラ執筆となるが、Twitterのように多くの人を取り込める作品になるか!?
4月16日(金)21:00 テレビ朝日系 警視庁失踪人捜査課 沢村一樹、遠藤憲一、北村有起哉、小日向文世ほか 堂場瞬一の小説『警視庁失踪課・高城賢吾』シリーズを実写化。失踪人捜査課の刑事・高城(沢村一樹)がさまざまな失踪事件を追う。高城の相棒となる刑事・愛美には、オーディションで選ばれた新進女優・森カンナを配役。
4月17日(土)19:56 TBS系 タンブリング 山本裕典、瀬戸康史、三浦翔平、大東俊介、国仲涼子、大塚寧々ほか 高校の男子新体操部で繰り広げられるスポ根コメディー。新体操部に仮入部したヤンキー・東航(山本裕典)が部員たちと共に成長していく――って、熱血教師のいない新体操版『ROOKIES』!? ともあれ、スポ根好き&イケメン好きには引きのある作品になりそう。
4月17日(土)21:00 日本テレビ系 怪物くん 大野智、松岡昌宏、稲森いずみ、鹿賀丈史ほか 漫画とアニメでおなじみの『怪物くん』を実写化してしまうという、ある意味ムチャなチャレンジ精神が眩しい! 怪物くんを演じる嵐の大野智をはじめ、主要人物たちのコスプレは必見。特に、フランケン役のチェ・ホンマンはヤバすぎ(笑)。
4月17日(土)21:00 NHK総合 チェイス~国税査察官~ 江口洋介、ARATA、麻生久美子、奥田瑛二ほか 国税査察官・春馬(江口洋介)と天才脱税コンサルタント・村雲(ARATA)が、6000億円もの巨額資産をめぐる攻防を展開するサスペンス。脚本は坂元裕二が手掛ける。この手の硬派なドラマはNHKの十八番ということで、その完成度に期待したいところ。
4月18日(日)21:00 TBS系 新参者 阿部寛、黒木メイサ、向井理、溝端淳平、三浦友和ほか 原作は東野圭吾の同名人気小説。卓越した推理力と洞察力を誇る新参者の刑事・加賀(阿部寛)が、東京・人形町で起こった殺人事件に挑む。事件を取り巻く人間たちの心の闇にも深く斬り込む本作品。サスペンスとしても、人間ドラマとしても見応えのある作品だ。
4月21日(水)21:00 TBS系 IRIS-アイリス- イ・ビョンホン、キム・テヒほか イ・ビョンホン主演の韓国ドラマ。朝鮮半島南北分断を背景に、陰謀や運命に翻弄されるスパイたちの人間模様を描く。日本製作の連続ドラマ以上に大プッシュするTBSの姿勢は本作品の面白さに対する自信ゆえか、韓流ブームに頼ろうという消極的理由ゆえか……。いずれにせよ、それなりの魅力が本編自体にもあるはず。
4月22日(木)21:00 テレビ朝日系 同窓会~ラブ・アゲイン症候群 黒木瞳、高橋克典、斉藤由貴、三上博史 同窓会で30年ぶりに再会した45歳の男女4人が織り成す大人のラブミステリー。45歳の現実と本音を赤裸々に描いていく。人物描写に定評のある人気脚本家・井上由美子が描くキャラクターを、黒木ら4人のメイン俳優がどう膨らませて演じるのかに期待したい。
4月23日(金)22:00 TBS系 ヤンキー君とメガネちゃん 成宮寛貴、仲里依紗ほか 学校一のヤンキー・品川(成宮)と超天然のメガネ女子・花(仲里依紗)を中心とした学園青春コメディー。ちなみに、花は周囲に隠しているが、実は元ヤンキーという設定。『タンブリング』といい、今クールのTBSはヤンキーがお好き!?
5月11日(火)22:00 NHK総合 『離婚同居』 阿部サダヲ、佐藤江梨子ほか 離婚を切り出された竜次(阿部サダヲ)が、何の因果か元妻・春美(佐藤江梨子)と同居。復縁を目指しながらも空回りしてボロボロになっていく竜次と、日に日に美しくなっていく春美のバトルを描くサスペンス・コメディー。阿部の演技は今回もハズれなし!?
今春スタート(月)21:00 フジテレビ系 月の恋人~Moon Lovers~ 木村拓哉、篠原涼子、リン・チーリン、松田翔太、北川景子ほか 木村拓哉が若手社長に扮し、10年ぶりに本格ラブストーリーに挑戦。木村と女性3人の恋の駆け引きを描く。相変わらず豪華出演者が集う木村ドラマ。昔に比べてラブストーリーが視聴率を取りにくくなっている昨今、視聴率王・木村に勝利の女神は微笑んでくれるのか!?

さくら

"ドラマを見てはセリフを覚え、友人とドラマごっこをする"という幼少期からの趣味が高じ、大学卒業後は流れ流れてエンタメ雑誌業界へ。テレビドラマなどの特集担当記者を経て、現在はフリーライター。テレビ番組を中心とした特集やインタビュー記事を手がける。