原作モノに人気ドラマの続編……安全パイが目立つ!? 2009年10月期

世の中はすっかり秋。少～しヒンヤリとした風が吹くようになりました。そんな中、いよいよ始まる10月クールですが、こちらも少～しヒンヤリしたものがあります。というのも、前クールまでしばしオリジナル作品が増えて"アツい心意気"をちらつかせていたドラマ界でしたが、10月クールは一転して再び原作モノが増加。その数、なんと19作品中11本! さらには、『相棒』や『ライアーゲーム』など続編モノが5本(初の連続ドラマ化となる『浅見光彦～最終章～』は除く)。 "オリジナル作品を増やしても視聴率が取れないなら、安全パイに頼った方がいいんじゃね?"という、冷ややかで後ろ向きな姿勢が感じられなくもありません……。しかし! やると決めたんなら、視聴者も覚悟を決めて見るしかない!! 業界の将来を考えると少し寂しい気もしますが、安全パイの中でも目を引く5作品をご紹介したいと思います。

"豪華キャストで話題をさらえ!"攻撃!? - 『JIN-仁-』

豪華キャストで大作ぶりをアピールした『官僚たちの夏』に続き、日曜21時枠は今クールも話題を呼ぶキャストを揃えました。連続ドラマ出演が8年ぶりとなる大沢たかおを筆頭に中谷美紀、綾瀬はるか、内野聖陽……。 "とりあえず見てみたい"と思わせる顔ぶれで、キャスティング的には成功と言えるでしょう。肝心のドラマの内容に関しては、まずは原作が人気コミックということで、ある程度の水準はクリア。しかし、問題はSFモノという点です。なんせ、主人公の脳外科医がタイムスリップしてしまう。意識がすでに月曜からの現実社会に向かっている日曜の夜、視聴者がSFというファンタジーに浸りこめるかどうか微妙です……。しかも、行き先は幕末ときた! 幕末が好きな歴史マニアは多くいても、幕末モノのドラマはあまり視聴率が取れないのが現状。率直に言うと、制作サイドが期待するほどの視聴率には達しない予感が……。視聴率よりも、キャストがどんな芝居をするのかに期待すべき作品のような気がします。

さくらの期待度は……☆☆☆

中谷、綾瀬、内野の芝居に特に注目したいところ。彼らのポテンシャルに☆3つを進呈!

水谷豊×及川光博で出た勝負! その結果やいかに!? - 『相棒 season8』

右京(水谷豊)の親相棒が及川光博かぁ……。それってどうなの!? と思った『相棒』ファンも多いはず。『相棒』は事件の謎解きはもちろんですが、絶大な人気を支えていた大きな柱は右京と薫(寺脇康文)の凸凹コンビぶりだったわけです。マンネリ化を防ぐ意味もあったのでしょうが、なぜにその名コンビをリニューアルしてしまうのか……。しかも前シーズンの最後にチラリと出演したのでご存知でしょうが、ミッチーが演じる神戸尊はクールで冷静な男。キャラの大まかな方向性が右京と被ります。コンビものって対照的なキャラを組ませるから面白いと思うのですが……。しかし、この不安要素が否めない組み合わせで視聴者の心をつかむことができれば大したもの! どんな脚本を用意してくるか、そしてそれに役者たちがどう味付けするか……。『相棒』の真の力が問われるシーズンとなるでしょう。超人気シリーズだけに視聴者の目も一層厳しくなると思いますが、何とかいい意味で裏切ってほしいものです。

さくらの期待度は……☆☆

個人的に、本気で今回のリニューアルが成功するのかどうか読めません……。なので☆2つ。

鉄板の大作ドラマでコケる方が難しい!? - 『不毛地帯』

山崎豊子原作、この秋いちばんの超豪華キャスト陣、フジテレビが「開局50周年」の冠を掲げて半年も放送する大作、海外ロケもてんこ盛り――これだけ条件が揃っている『不毛地帯』、コケるわけにはいきません。しかも、主演は唐沢寿明。『白い巨塔』のリメークで「田宮二郎を越えられるわけがない!」と散々言われながらも、それまで強く残っていたトレンディー俳優のイメージを払拭する合格点の演技を見せ付けた、あの唐沢です。「同じ大作でも『白い巨塔』は良かったのになぁ……」なんて言われるわけにはいかない! というわけで、いろんな意味で120%の力を注ぐ作品に仕上がることを期待せずにはいられません。今回のドラマ版では、原作で膨大なページを割いて描かれている壹岐(唐沢)のシベリア抑留がかなり短くなっているため、第1話では少し駆け足気味のストーリーに感じられるかもしれませんが、腰を据えて見ていきたいところ。というのも、脚本を担当するのは橋部敦子。登場人物たちの渦巻く心理をキッチリ入れ込んで書いてくれるはずですから……。

さくらの期待度は……☆☆☆☆

最終的に32.1%もの視聴率をマークした『白い巨塔』。それを越える視聴率を取るのは難しいかもしれないけど、いわゆる高視聴率は取りそう。

今回はどれだけストーリーを練れるかがカギ! - 『交渉人～THE NEGOTIATOR～』

2008年1月クールで第1弾が放送された際には、"米倉涼子が下着姿になる!"という事前ニュースで盛り上がった『交渉人』。しかし、今回はもはやスポーツ紙が大好きそうな話題で煽る必要はない!? 意外と言っては失礼ですが、『交渉人』は放送が始まるや、ちゃんとしたサスペンス・ドラマとして視聴者の心を掴むことに成功しました。しかし、"あんまり期待してなかったけど、見たら面白かった"という前シリーズと違い、今回はそれなりの期待を背負ってのスタート。視聴者を満足させるようなストーリーの捻りが必要となってきます。前回は男社会であるSIT(特殊犯罪捜査班)に投げ込まれた主人公・宇佐木玲子(米倉)と組織の確執、玲子の父の殉職に関わる謎解きなど、毎回起こる事件以外の見どころもふんだんに用意されていましたが、今回はそこに頼るわけにはいきません。そこで、今シリーズは大きな軸となる"人の心の闇を操る組織サマー・クロースとの戦い"をどれだけスリリングに描くかが重要に! 大掛かりなアクションや爆破もいいですが、サスペンスとして鑑賞に堪えうる心理ドラマをしっかりと作って頂きたいものです。

さくらの期待度は……☆☆

SPドラマ版では最高視聴率17.1%をマークしたけど、連続ドラマ版だとやはりそこまでの視聴率は望めないかも……!?

視聴率も話題性も前シーズンよりアップ!? - 『ライアーゲーム シーズン2』

土曜ドラマの第1作として制作された『ライアーゲーム』。爆発的な高視聴率を記録したわけではありませんが、大きな話題を呼んだ作品です。そのシーズン2ということで、期待が高まるのも当然。松田翔太の髪の毛がウザいとか、最早そんなことは気にならないくらい、大金を賭けた人間のドロドロ劇はドラマとして魅力的です。そのことは松田&戸田恵梨香という当初は地味だったキャスティングにもかかわらず、多くの客を惹き付けるドラマに成長したことが証明しています。しかも、今となっては松田も戸田もメジャーな役者。前シリーズはスルーしていたけど、今回は見てみよう"と思う視聴者も増えるに違いありません。また、シーズン2は2010年公開の映画版への布石となるストーリー。今回どれだけ視聴者を取り込むかが興行成績にも影響するし、制作サイドの意気込みも半端じゃないと見た! 普通なら「続編モノは基本的に失速する」というドラマ界の常識が頭をよぎって否定的な見方をしてしまいますが、この作品に限ってはなぜか肯定的に見てしまいます。それほどシーズン1の完成度が高かったということでしょう。

さくらの期待度は……☆☆☆☆☆

ドロドロ心理ゲームの加速ぶり、松田翔太の髪型がどうなるのかも含めて、ものすごく期待してます!

10月クールは従来の人気作の続編や原作モノの作品を見ながら、失敗してしまうドラマには何が足りないのかを改めて考えてみるのも、ひとつの手。なんせ食欲と芸術の秋ですからね～。食わず嫌いにならず、とりあえず片っ端から作品を賞味してみては?

2009年10月放送スタートの主な連続ドラマ(一部ドラマは11月より放送スタート)

放送スタート日時	放送局	タイトル	主なキャスト	内容
10月9日(金)23:15	テレビ朝日系	『マイガール』	相葉雅紀、優香、村上信五ほか	忘れられない恋人が遺した娘を育てることになった正宗(相葉雅紀)。突然、親子になった2人は戸惑いながらも心を通わせていく……。金曜ナイト枠では珍しい正統派ドラマかつ究極のラブストーリー。しかも、相葉は連続ドラマ初主演! 物珍しさだけで終わらないことを祈りたい。
10月10日(土)21:00	NHK総合	『チャレンジド』	佐々木蔵之介、富田靖子ほか	病気で失明した教師(佐々木蔵之介)が復職し、生徒たちに愛の大切さを説いていく学園ドラマ。NHKらしい派手さはないけど心に響く王道ドラマになりそう。ドラマに質を求める人向けの作品。
10月11日(日)21:00	TBS系	『JIN-仁-』	大沢たかお、中谷美紀、綾瀬はるか、小出恵介、内野聖陽ほか	脳外科医・南方仁(大沢たかお)が幕末の江戸へタイムスリップし、不十分な医療環境の中で人々の命を救っていく。8年ぶりの連続ドラマ出演で大沢がどんな演技を見せてくれるか、坂本龍馬を演じる内野聖陽がどんな怪演ぶりを披露するかに期待!
10月13日(火)21:00	フジテレビ系	『オトメン(乙男)～秋～』	岡田将生、夏帆、木村了、瀬戸康史、佐野和真ほか	乙女心をもった男子高校生のラブ・コメディー『オトメン(乙男)～夏～』が枠を移動。岡田将生ら注目のイケメンを配したにもかかわらず、土曜深夜枠では苦戦した本作品。 笑いを狙いすぎてチープになってしまった演出を軌道修正すれば、視聴率も少しは上がるのでは……?
10月13日(火)22:00	フジテレビ系	『リアル・クローズ』	香里奈、黒木瞳、高岡蒼甫、加藤夏希、小泉孝太郎ほか	老舗百貨店で布団売り場のエースだったダサい販売員(香里奈)が、ファッションエリートだらけの婦人服売り場に異動。フランス帰りの鬼部長(黒木瞳)らと対立しながらも、成長していく姿を描く。似たような題材の大ヒット映画『プラダを着た悪魔』を真似たような演出にならなければいいが……。
10月14日(水)21:00	テレビ朝日系	『相棒 season8』	水谷豊、及川光博ほか	もはや説明は要らないほどの超人気シリーズ。今シーズンから、及川光博演じる神戸尊が右京(水谷豊)の新相棒として本格的に始動する。右京×薫(寺脇康文)に匹敵する名コンビとして成長できるかどうか……。まずは第1話でお手並み拝見といったところか。
10月14日(水)22:00	日本テレビ系	『ギネ 産婦人科の女たち』	藤原紀香、上地雄輔、松下由樹ほか	医師不足などで崩壊の危機にある産婦人科の問題に斬り込む医療ドラマ。藤原紀香が演じるのは、無口で無愛想だが腕は確かな産婦人科医。何を演じても出てしまう紀香オーラをどれだけ抑えられるかがカギ!?
10月15日(木)20:00	NHK総合	『ROMES/空港制御システム』	大倉忠義、安田章大、国仲涼子ほか	世界最先端の施設警備システム・ROMES(ロメス)を駆使して空港を守る警備チームとテロリストの攻防を描くサスペンス。題材のよさと、NHK制作という点は安心要素。前クールの某ドラマのように、単なるジャニーズ若手売り出しドラマになりませんように……!
10月15日(木)20:00	テレビ朝日系	『アンタッチャブル』	船越英一郎、田中美里、的場浩司、本田博太郎、萬田久子ほか	船越英一郎演じる副署長・池永が独自捜査で、犯人を自首に導く人情系刑事ドラマの第3シリーズ。良くも悪くも、特別心配する点のない作品。あえて心配な点を挙げるとすれば、50歳目前の船越が番組定番の全力疾走シーンを最後までやり遂げられるかどうかということくらい!?
10月16日(金)21:00	テレビ朝日系	『アンタッチャブル』	仲間由紀恵、要潤、寺島進ほか	三流週刊誌の記者(仲間由紀恵)が、社会の闇を暴くために奮闘するミステリー作品。仲間が演じる主人公は元同僚を自分の彼氏と思い込んだり、恨みノートを所持するなど、少々変わり者。笑いの要素もあるので、バランスよく楽しめる作品になりそうだが、なんせ枠自体が弱いので高視聴率は期待できなさそう……。"
10月16日(金)22:00	TBS系	『おひとりさま』	観月ありさ、小池徹平ほか	才色兼備な独身教師(観月ありさ)と10歳年下の臨時教員(小池徹平)のラブコメディー。恋模様をコメディータッチで描く。ずいぶん前に流行った格差恋愛を今さら扱うとは、かなりの冒険……。ただし、観月はコメディーに出るたび高い視聴率を取る女優なので、それなりの結果は出すかも!?
10月17日(土)19:56	TBS系	『小公女セイラ』	志田未来、林遣都、樋口可南子ほか	無一文になったお嬢様高校生・セイラ(志田未来)が全寮制学校の使用人として虐げられながらも、持ち前の明るさで乗り越えていく姿を描く。志田の演技力には何の問題もないが、題材は「?」。何も往年の児童文学をムリヤリ日本版ドラマにしなくても……。ヘタすると、とんだ茶番になる可能性も!?
10月17日(土)21:00	日本テレビ系	『サムライ・ハイスクール』	三浦春馬、城田優、杏ほか	草食系ヘタレ高校生(三浦春馬)が、窮地に陥るとサムライに変身して問題を解決する痛快学園エンターテインメントドラマ。なんだか設定が奇をてらいすぎて、痛快というよりはイタイ気が……。サムライ・ヒーローがサムいヒーローにならないよう、真っ当な創意工夫を凝らしてほしいところ。
10月19日(月)21:00	フジテレビ系	『東京DOGS』	小栗旬、水嶋ヒロ、吉高由里子ほか	月9初の本格刑事ドラマ。ニューヨーク警察のエリート刑事(小栗旬)と暴走族上がりの警視庁刑事(水嶋ヒロ)がコンビを組んで、事件を解決していく。本格刑事ドラマと銘打ってはいるが、脚本の福田雄一をはじめ基本『33分探偵』のスタッフが勢ぞろい。小ネタを重視して、本筋が弱くなりそうな予感も……。
10月21日(水)21:00	TBS系	『浅見光彦～最終章～』	沢村一樹、風間杜夫ほか	ルポライター・浅見光彦(沢村一樹)が日本各地で事件に巻き込まれる2時間ドラマシリーズが連続ドラマに! 裏番組の『相棒』が強いだけに、視聴率的には苦戦を強いられそう。が、その『相棒』もどこまで人気を維持できるか読めない今シーズン。ひょっとすると、わりといい勝負をするかも!?
10月22日(木)21:00	テレビ朝日系	『交渉人～THE NEGOTIATOR～』	米倉涼子、筧利夫、笹野高史、城田優、陣内孝則ほか	女性交渉人・宇佐木玲子(米倉涼子)と凶悪犯罪の戦いを描いた人気ドラマの第2弾。2010年2月には映画版の公開も控えているため、今クールは絶対にコケられない! ということで、今回は事件もスケールアップ。人の心の闇を操るサマー・クロースなる敵も、玲子の前に立ちはだかる。
10月22日(木)23:58	日本テレビ系	『傍聴マニア09 裁判長!ここは懲役4年でどうすか』	向井理、南明奈、六角精児ほか	人間の本性があらわになる裁判の傍聴にハマったフリーター・北森夫(向井理)を中心としたコメディードラマ。コメディーは役者の演技力が大きなカギを握るが、向井の演技力を考慮するとビミョーかも……。六角精児だけが上手すぎて、逆に浮いてしまいそうな予感!?
10月中(木)22:00	フジテレビ系	『不毛地帯』	唐沢寿明、和久井映見、柳葉敏郎、小雪ほか	終戦後、11年ものシベリア抑留を経て帰国した壹岐正(唐沢寿明)は総合商社に入社。未経験となるビジネスの世界で葛藤しながらも、世界を相手に戦う姿を描く。山崎豊子原作＋豪華キャスト陣という鉄板の組み合わせ。『白い巨塔』を超えられるかどうかが見もの!
11月中(火)21:00	フジテレビ系	『ライアーゲーム シーズン2』	松田翔太、戸田恵梨香ほか	2007年に深夜枠で放送されて高視聴率を獲得した『ライアーゲーム』の第2弾。今回は大金を賭けた心理ゲームの準決勝を描き、その結末は2010年2月公開の映画版に持ち越しとなる。商魂たくましさが鼻にはつくけど、視聴率を確実に取る作品のひとつになることは間違いない!

さくら

"ドラマを見てはセリフを覚え、友人とドラマごっこをする"という幼少期からの趣味が高じ、大学卒業後は流れ流れてエンタメ雑誌業界へ。テレビドラマなどの特集担当記者を経て、現在はフリーライター。テレビ番組を中心とした特集やインタビュー記事を手がける。