暑いんだか、寒いんだかよく分からない日々が続く今日この頃。ドラマ界の7月クールも理由は何だかよく分かりませんが、男性主人公モノが大多数(今回ラインアップした18本のうち、W主演モノを含む15本!)。しかも、特筆すべきはその年齢層の幅広さです。若いイケメンや中堅どころの連ドラ常連俳優は当然のことながら、佐藤浩市や舘ひろしの名前も……! 高年齢層向けの『新・警視庁捜査一課9係』で主演を飾る渡瀬恒彦を加えると、連続ドラマではかなりの高さのオジサマ比率なのです。いまの時代、視聴率を取れるのは若手のイケメンか、中堅どころか、はたまたベテラン俳優か!? そんなところも視野に入れつつ、堪能したい7月期。中でも注目したい男ドラマを中心に、期待できそうな5作品をご紹介します。
単発ドラマでは実証済みの"おじさまパワー"に期待! - 『官僚たちの夏』
大作映画の常連となっている佐藤浩市。ドラマでも存在感を示せるか? |
ここ数年不調な連続ドラマに対し、元気なのが単発ドラマ。2007年放送の『点と線』しかり、先日放送された『刑事一代』しかり……。高視聴率を叩き出す単発ドラマで目立つ要素として、長いキャリアを持つ中高年男優がメインであることと、舞台設定が昭和であることが挙げられます。その両要素を詰め込んだ連続ドラマが『官僚たちの夏』! こちらは、昭和30年代に国内産業の振興を目指して闘った官僚たちの物語。佐藤浩市ら熟練俳優らが名を連ね、骨太なドラマを展開するということで、作品としての完成度にはかなり期待できる一作になることは間違いないでしょう。ただし、セットや小道具、あるいはCGで時代背景をきっちり反映できないと、視聴者が興ざめして離れてしまう可能性も……。ちなみに、主演連続ドラマ『高原へいらっしゃい』(2003年)で視聴率に恵まれなかった過去をもつ佐藤浩市ですが、現在は映画を中心に大活躍中。そのパワーを今回の主演ドラマでも発揮してほしいところ!
さくらの期待度は……☆☆☆☆
こういう"内容のあるドラマ"が視聴率を取ってほしいという願いを込めて、☆4つ!
コメディーになると一際輝く長瀬×深キョンの強力タッグ - 『華麗なるスパイ』
"ドロンジョ熱"が冷めやらぬうちに…なんですかね? |
コスプレ満載のスパイ・コメディー『華麗なるスパイ』。"絶対ドロンジョと掛けただろ!?"と思わせる深田恭子の役名(=ドロシー)にも、遊び心を感じずにはいられません。しかも、キャスティングが抜群! 長瀬智也は『マイ★ボス マイ★ヒーロー』(2006年)で突き抜けたコメディー演技を披露して高視聴率を叩き出した実績をもっていますし、一方の深キョンもコメディーは十八番中の十八番。相乗効果で相当ナイスな笑いを提供してくれることでしょう。さて、そこで肝心の内容ですが、脚本を担当するのは君塚良一。『踊る大捜査線』シリーズなど数々の大ヒット作品を手掛けてきた人気脚本家ですが、『役者魂!』(2006年)など不発に終わった作品もあるので、微妙に不安。今回は遺憾なく実力を発揮してくれれば問題はないのですが……。
さくらの期待度は……☆☆☆☆
深キョンにはぜひともドロンジョ様のコスプレもしてほしい!
広げた大風呂敷をどう処理するかがカギ!? - 『救命病棟24時』
江口の事故からどう立て直すか、ここはスタッフの腕の見せ所でしょう |
4年ぶりの新シリーズ、松嶋菜々子の女優本格復帰作ということで注目が高まる中、クランクインした途端に江口洋介のバイク事故……。決して幸先の良いスタートとは言えません。が! やはり人気シリーズとしての実績を持つ作品。ドラマファンなら、必ず押さえておきたいところです。ただ、懸念材料があるのも事実。というのも、今回は"切迫する救命医療の崩壊"という体制までもが絡むメイン・テーマ。"東京大震災が起こったら……"という設定で展開した第3シリーズに続いて、またも大風呂敷を広げてしまった感は否めません。テーマを大きくしたことで、もしも登場人物の描き方が記号的になってしまったら、ドラマとしての面白さが半減するのは必至。テーマの描き方と人間の描き方のバランスをうまく取れるかどうかが、人気維持のカギとなるのでは?
さくらの期待度は……☆☆☆
事故の関係で放送回数が予定より減少。何もかも中途半端な描き方で終わらないことを祈る……。
旬の市原隼人、ここ一番の正念場!? - 『猿ロック』
市原の"やんちゃキャラ"が全開する? |
今いちばん勢いのある若手俳優のひとり・市原隼人。注目ポイントは何と言っても、大ヒットした『ROOKIES』では放送開始前やや不安視されていたものの、見事に安仁屋を演じきった彼の演技力です。『ROOKIES』で掴んだ本格ブレイクへの足がかりを今後へつなげていけるのか!? すべては今回の作品に懸かっていると言っていいでしょう。なにせ今回はすでに映画化(2010年春公開予定)が決定済み。ドラマ版で視聴者の心を掴まなければ、興行成績にも響きます。市原は将来が期待される"いい役者"なので、ここはぜひ成果を挙げてほしいところ! 番組公式サイトの動画を見るだけでもイヤというほど伝わってくる気合と情熱を3カ月維持し、人の心の鍵までも開けるという役柄同様、視聴者の心に入り込む演技を展開してくれることを願います。
さくらの期待度は……☆☆
イッチーへの期待度は高いですが、放送枠的に視聴率は"?"。というわけで、☆は少なめで……。
地味な枠だけど、手堅さは今クールNo.1 - 『科捜研の女』
木曜20時という地味枠での放送でありながら確実に視聴率を伸ばし、平均視聴率13%台をマークするまでに成長した『科捜研の女』。科学捜査の面白みはもちろんのこと、沢口靖子の法医学研究員・榊マリコぶりもすっかり安定。最近では沢口を見ると、良くも悪くも(!?)マリコにしか見えないくらいです。というわけで、今回の第9シリーズでも"ブレないマリコ"の活躍が、従来の『科捜研』ファンをガッチリ取り込むはず! また、今シリーズでは「若い人にも興味を持ってもらえるよう、海外ドラマを意識したリアルな画作りにも挑戦する」とのこと。"海外ドラマって……まさか『CSI:科学捜査班』シリーズ風だったりして!?"というツッコミはさておき、その画作りがうまく功を奏せば新たなファン層も増えるかも!?
さくらの期待度は……☆☆
安定した番組なので、本来は☆ひとつといきたいところだけど、"海外ドラマを意識した画作り"が気になるので1つ追加!
"男ばっかりでイマイチ華やかさに欠けるな~"なんて言わずに、とりあえずいろんな作品を見比べてほしい7月期。これだけ同時期に男性主人公が集中しているのは珍しいですし、俳優の実力を比較するために視聴というスタイルもアリなのでは?
2009年7月放送スタートの主な連続ドラマ(一部ドラマは8月より放送スタート)
放送スタート日時 | 放送局 | タイトル | 主なキャスト | 内容 |
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6月26日(金)23:15 | テレビ朝日ほか | 『メイド刑事』 | 福田沙紀、原田龍二、的場浩司ほか | "メイドと刑事という2つの顔をもつ若槻葵(福田)が、掃除用具・キューティー☆クリーナーを武器にして悪に立ち向かう。金曜ナイトドラマらしい題材は○だが、舞台を原作の東京からわざわざ京都に移す意味って!? という、かすかな疑問も……。 |
7月1日(水)21:00 | TBS系 | 橋田壽賀子ドラマ『となりの芝生』 | 瀬戸朝香、大倉孝二、泉ピン子ほか | 次男の嫁・知子(瀬戸)と、世界一イヤな姑・志乃(泉)の嫁姑バトルを描く。'76年にNHKで放送された作品のリメイク。泉ピン子×とんでもない姑の組み合わせは文句ナシ! 泉の新たな代表作になる予感大だ。 |
7月1日(水)21:00 | テレビ朝日系 | 『新・警視庁捜査一課9係』 | 渡瀬恒彦、井ノ原快彦、羽田美智子、中越典子、吹越満、原沙知絵ほか | 捜査本部に不在がちで"昼行灯"と呼ばれる係長・加納倫太郎(渡瀬)、その相棒・浅輪(井ノ原)をはじめとする個性派刑事たちの活躍を描く。今シリーズから監察医・真澄(原)が加わり、警視庁内の人間関係にも変化が……。 |
7月2日(木)20:00 | テレビ朝日系 | 『科捜研の女』 | 沢口靖子、内藤剛志、若村麻由美、小野武彦、田中健ほか | 法医学研究員・榊マリコ(沢口)が科学捜査で事件を解決していく人気シリーズ。今回で第9弾ということで、沢口をはじめとする出演者の演技も作品内容もすでに安定期に突入。視聴者も安心して見られること間違いナシの作品だ。 |
7月3日(金)21:00 | テレビ朝日系 | 『コールセンターの恋人』 | 小泉孝太郎、ミムラ、松重豊、安田顕、柴俊夫、名取裕子ほか | テレビショッピングの裏側を描くコメディー。『ハケンの品格』でもおなじみの中園ミホが脚本を手掛けるため、職業モノのドラマとしての質は高そう。ちなみに、小泉は連続ドラマ初主演。お父上に「感動した!」と言わせるよう、頑張ってほしいところ。 |
7月5日(日)21:00 | TBS系 | 『官僚たちの夏』 | 佐藤浩市、堺雅人、高橋克実、佐野史郎、西村雅彦、杉本哲太、高橋克典、船越英一郎、北大路欣也ほか | 城山三郎の同名タイトル小説をドラマ化。昭和30年代の通商産業省を舞台に、日本を高度成長期へと導く官僚たちの奮闘を骨太に描く。佐藤浩市をはじめ、いま脂が乗っている中高年実力派俳優たちの加齢……もとい、華麗なる競演に期待! |
7月7日(火)22:00 | フジテレビ系 | 『恋して悪魔~ヴァンパイア☆ボーイ~』 | 中山優馬、加藤ローサ、近藤真彦、伊東四朗ほか | 吸血鬼の少年・ルカ(中山)が人間界で禁断の恋に落ちるラブストーリー。この少女マンガ臭漂う設定……昔懐かしい月曜ドラマランド!? ま、内容はお子ちゃま向けということで、大人は11年ぶりの連ドラ出演となるマッチの存在を楽しむべし。 |
7月8日(水)22:00 | 日本テレビ系 | 『赤鼻のセンセイ』 | 大泉洋、香椎由宇、神木隆之介、上川隆也、小林聡美ほか | 熱血教師・石原参太朗(大泉)が院内学級で奮闘! 石原は生徒を笑いで癒そうとするが、いつも空回りする設定。大泉にピッタリかも!? 余談だが、どの役をやっても劇中で「モジャモジャ」と言われる大泉。飽きてきた視聴者も多いはずなので、今回は潔く卒業してほしい……。 |
7月9日(木)21:00 | テレビ朝日系 | 『ダンディ・ダディ?~恋愛小説家・伊崎龍之介~』 | 舘ひろし、南沢奈央、平山あや、石黒英雄、鹿賀丈史ほか | いまをときめく恋愛小説家・伊崎龍之介(舘)の親バカぶりをコミカルに描く、父と娘の物語。劇中に出てくる伊崎の恋愛語録は、まさに舘ひろし語録!? カッコつけてるんだか、笑いを取ろうとしているのか分からない言動は一見の価値アリ! |
7月9日(木)22:00 | フジテレビ系 | 『任侠ヘルパー』 | 草なぎ剛、黒木メイサ、山本裕典、薮宏太ほか | あらゆる悪事に手を染めてきたと噂されるヤクザの組長(草なぎ)らが、老人介護施設のヘルパーに!? 一風変わった設定で介護問題を扱うコメディー。番組スポットで見せた草なぎのパンチパーマ姿はインパクト大! スポットに負けない衝撃度をドラマ本編にも期待したい。 |
7月11日(土)21:00 | NHK総合 | 『リミット~刑事の現場2~』 | 森山未來、武田鉄矢、加藤あいほか | 正義感あふれる若手刑事・加藤(森山)と、悪魔と呼ばれるベテラン刑事・梅木(武田)が衝突しながら事件解決に挑む。前シリーズよりも事件関係者の心理、刑事たちの思惑が複雑化し、ヘビーな内容に。テンポもいいので、グッと引き込まれる。 |
7月13日(月)21:00 | フジテレビ系 | 『ブザー・ビート~崖っぷちのヒーロー~』 | 山下智久、北川景子、相武紗季、貫地谷しほり、伊藤英明ほか | 草食系のバスケットボール選手(山下)と、素直になれない女性(北川)の爽やかラブストーリー。前クールといい、流行を取り入れようと躍起になっている感のある"月9"……。主人公が前半で婚活しなくなった『婚カツ!』みたいに、草食系男子という設定が宙ぶらりんにならないことを祈る! |
7月18日(土)21:00 | 日本テレビ系 | 『華麗なるスパイ』 | 長瀬智也、深田恭子ほか | 政府の秘密諜報部員となった天才詐欺師(長瀬)が国際テロ組織と戦うスパイ・コメディー。脚本を手掛けるのは、『踊る大捜査線』など数々の話題作を提供してきた君塚良一だ。定評ある長瀬のコメディーセンスは然ることながら、絶世の美女スパイを演じる深キョンのコスプレも必見! |
7月23日(木)23:58 | 日本テレビ系 | 『猿ロック』 | 市原隼人、芦名星、渡部豪太、高岡蒼甫ほか | 通常の鍵だけでなく、人の心の鍵までも開ける天才鍵師・猿丸耶太郎(市原)が人助けにいそしむ! 原作は芹沢直樹の同名コミック。『ROOKIES』で根強い原作ファンをも納得させる演技を披露した市原だけに、今回も期待が募るところ! |
7月24日(金)22:00 | TBS系 | 『オルトロスの犬』 | 滝沢秀明、錦戸亮、水川あさみほか | 触っただけで病を治す"神の手"を持った悪のカリスマ(滝沢)と、触っただけで人を殺める"悪魔の手"を持った心優しい教師(錦戸)の対決を軸にしたサスペンス。今回初めて悪役に挑む滝沢。共演の錦戸が『ラスト・フレンズ』で見せた悪役ぶりを超えられるのか!? |
8月1日(土)23:10 | フジテレビ系 | 『オトメン(乙男)』 | 岡田将生、夏帆、木村了、瀬戸康史、佐野和真ほか | 累計250万部越えの売り上げを記録する大人気コミックが遂に実写化! 内容は乙女心をもつ男子=オトメンのラブ・コメディー。岡田将生を筆頭に、注目株のイケメンが多数登場する。イケメン好きにはたまらない作品! |
8月放送スタート(土)19:56 | TBS系 | 『こちら葛飾区亀有公園前派出所』 | 香取慎吾、香里奈、速水もこみち、伊武雅刀ほか | 下町人情たっぷりの超人気ギャグ漫画が、満を持してドラマ化。ハットリくんや孫悟空など国民的キャラクターを数々演じてきた香取が、両津勘吉をどう演じるのか。熱烈なファンが多い原作だけに、評価を得るには相当綿密な役作りが必要!? |
放送スタート日未定(火)21:00 | フジテレビ系 | 『救命病棟24時』 | 江口洋介、松嶋菜々子、木村多江、北乃きい、ユースケ・サンタマリアほか | 救命医療の現場を臨場感あふれる演出で描き出す、言わずと知れた人気シリーズの第4弾。今回はユースケ・サンタマリアや北乃きいを新レギュラーに迎え、救命医不足などによる医療崩壊問題に斬り込む。また、脚本家と演出家も一新。 |
さくら
"ドラマを見てはセリフを覚え、友人とドラマごっこをする"という幼少期からの趣味が高じ、大学卒業後は流れ流れてエンタメ雑誌業界へ。テレビドラマなどの特集担当記者を経て、現在はフリーライター。テレビ番組を中心とした特集やインタビュー記事を手がける。