『相棒』から薫ちゃん(寺脇康文)も消え、ちょっぴり寂しげな2009年を迎えた連続ドラマ界。1月期といえば、例年は月9などの枠で確実に高視聴率を狙う大作が目立つものですが、今年はキャスト・内容ともに地味な印象が否めません。じゃ、各テレビ局はどこで勝負を賭けようとしているのか!?――と思いながら、ざっと新ドラマ15作品を見渡してみたところ、ある共通点が見つかりました! それは、新旧含めイケメン主人公の作品が圧倒的に多いということ。思えば、2008年はイケメン・ブームが再燃した年でもありました。ならば、2009年は「イケメンに心を奪われた層をごっそりドラマに向かせて、視聴率を稼いじゃいましょう」ということなのでしょう。つまり、ここで結果を出せるかどうかがイケメンの今後の分かれ道! というわけで、結果を残せそうなイケメン・ドラマを中心に、その他の注目作品をご紹介します。

2009年1月放送スタートの主な連続ドラマ

放送スタート日時 放送局 タイトル 主なキャスト 内容
1月6日(火)22:00 フジテレビ系 トライアングル 江口洋介、稲垣吾郎、広末涼子ほか 新津きよみの同名タイトル小説をドラマ化。25年前に殺された初恋の少女を救えなかったトラウマに苦しむ刑事・亮二(江口)、彼の相棒となる刑事・黒木(稲垣)、世界的な画家・サチ(広末)が中心となって織り成すヒューマンサスペンスミステリー
1月8日(木)20:00 NHK総合 Q.E.D.証明終了 高橋愛、中村蒼、石黒賢ほか おっちょこちょいの女子高生(高橋)と数学の天才(中村)が数々の事件に挑むサスペンス。コンビものは演者のリズムやテンポがいかに合うかが重要。演技経験の少ない2人がそこをカバーできるかどうかが懸念材料だ……
1月8日(木)21:00 テレビ朝日系 特命係長 只野仁 高橋克典、櫻井淳子、永井大、蛯原友里、梅宮辰夫ほか ダメ会社員と凄腕の特命係という2つの顔を持つサラリーマン・只野仁(高橋)が活躍する大人気シリーズ。連ドラ版では初のゴールデンタイム進出となるが、放送枠変更による失速という"ありがちな降格路線"に陥らないことを願いたい
1月8日(木)22:00 フジテレビ系 ありふれた奇跡 仲間由紀恵、加瀬亮ほか 山田太一が書き下ろすラブストーリー。人には言えない"過去の秘密"を共有するOL・加奈(仲間)と左官職人・翔太(加瀬)を中心に恋愛や家族関係、心の傷など人間とは切り離せないテーマを描く
1月9日(金)21:00 テレビ朝日系 必殺仕事人2009 東山紀之、松岡昌宏、大倉忠義、水川あさみ、藤田まことほか 大好評を得た2007年放送のスペシャル版と同じメイン・キャストでの連ドラ化。 「必殺」シリーズに関わってきたスタッフらによる映像、涼次(松岡)のバージョンアップした殺し方など、見どころ満載だ
1月12日(月)21:00 フジテレビ系 ヴォイス~命なき者の声~ 瑛太、生田斗真、石原さとみほか 法医学ゼミに所属する5人の医大生の青春ドラマ。若者の奮闘物語と、彼らが直面する"生と死"の重みをどううまくバランス付けていけるか!? 同じようなジャンルの海外ドラマ『グレイズ・アナトミー』の焼き直しにならなければよいが……
1月13日(火)21:00 フジテレビ系 メイちゃんの執事 水嶋ヒロ、榮倉奈々、佐藤健ほか 同名タイトル漫画のドラマ化。普通の女子高生・メイ(榮倉)がイケメン執事・理人(水嶋)のもとでスーパーお嬢様に成長していく姿を描く。よくも悪くも"コテコテの軽いドラマ"。大人は物足りなさを感じるかも……
1月13日(火)22:00 日本テレビ系 神の雫 亀梨和也ほか 究極のワイン"神の雫"をめぐる義兄弟バトル。人間ドラマを軸に、ワインの知識も随所に盛り込んでいく。原作が220万部の売り上げを叩き出したコミックだけに、うまく実写化できれば亀梨ファン以外の層も取り込めるかも!?
1月15日(木)23:58 日本テレビ系 リセット 田中直樹ほか 毎回主人公が変わる1話完結モノ。主人公がピンチに陥ると、謎の人物・アンリ(田中)が現れ、人生の分岐点に戻るかどうかの提案をする。設定こそ違うが、基本軸は田中が以前1話だけ出演した某深夜ドラマに酷似!? 演出がまったく違うことを願う!
1月16日(金)22:00 TBS系 ラブシャッフル 玉木宏、香里奈、松田翔太、DAIGO、貫地谷しほり、谷原章介ほか 同じマンションに住む男女4人が次々と恋人を交換しながら"運命の人"を模索していくラブコメディー。脚本は野島伸司。顔見知り間での恋人交換という一見エグい行動をどんなタッチで笑わせるのか!?
1月16日(金)23:15 テレビ朝日ほか 歌のおにいさん 大野智ほか 教育番組の"歌のおにいさん"に転身したダメ男・健太(大野)のサクセスストーリー。大野のダサダサ衣装から察するに、金曜ナイトドラマ枠王道のバカドラマになる予感大! 『スシ王子!』よろしく"ジャニーズ伝説のドラマ"になるはず!?
1月17日(土)21:00 日本テレビ系 銭ゲバ 松山ケンイチ、ミムラ、宮川大輔ほか 不幸な生い立ちゆえに金しか信じなくなった"銭ゲバ"の物語。徹底した役作りに定評のある松ケンが、久々の連ドラでどんな豹変ぶりを見せてくれるのか!? おそらくその1点に尽きる作品
1月18日(日)21:00 TBS系 本日も晴れ。異常なし~南の島 駐在物語~ 坂口憲二、松下奈緒ほか 沖縄の離島に赴任した駐在と島民たちとのふれあいを描く。内容としては非常にシンプルで派手なエンターテインメント性はないが、素朴なストーリー&オールロケによる絶景は日々お疲れ気味の視聴者にはオススメ!?
1月21日(水)22:00 日本テレビ系 キイナ~不可能犯罪捜査官~ 菅野美穂、平岡祐太、塚地武雅、沢村一樹ほか 女性捜査官・キイナ(菅野)が常識や科学では解明できない超常現象にまつわる事件を追っていくサスペンス。情報バラエティー番組などでも取り上げられた事実をベースにした事件の数々、菅野が初の刑事役にどう挑むのかに注目!
1月24日(土)19:56 TBS系 RESCUE~特別高度救助隊 中丸雄一、増田貴之、山本裕典ほか 大規模災害や事故現場で人命救助にあたる特別高度救助隊にスポットを当てたドラマ。奮闘する隊員の姿と命の尊さを描くということで、職業モノとしては王道中の王道。ただのイケメン鑑賞ドラマにならないことを祈りたい……

深夜の帝王は果たして21時台で大暴れできるのか!? - 『特命係長 只野仁』

主演の高橋克典。21時台という思い切った編成を組んだテレビ朝日だが……

金曜ナイト枠で過去に3シリーズを放送し、23時台にもかかわらず最高視聴率17%を叩き出したお化けドラマ『特命係長 只野仁』。人気のカギを握る要素のひとつ・お色気をやや抑えたスペシャル版でも、昨年2月放送の第4弾では20.2%を記録し、深夜の帝王・只野はゴールデンタイムでも十分通用する吸引力を持つことを証明しました。そんな中、満を持しての21時台・連続ドラマ版! 『只野仁』、遂に大勝負に出てしまいました……。もちろん、お色気シーンはある程度自粛の向きにあるようで、毎度のお楽しみ・オッパイポロリも封印するそうです。お色気だけが『只野』人気のすべてではないけれど、お色気が『只野』人気を加速させたのも事実。ガッカリして離れるファンもいるはずです。ならば、減ったお色気要素を補う対策が必要。いっそゴールデン進出で徹底的に普通の作品になりかわり、そんな自らの作品を自嘲する演出をしてみるとか……。やりまくりの『只野』ブランドに傷をつけないためにも、視聴率や放送時間帯を気にして躊躇することなく、思いつくままに大暴れすべきでは!?

さくらの期待度は……☆☆

とにかく何かの形でぶっ飛ばしてほしい。『只野』が"ただのドラマ"にならないことを祈る!

瑛太が主演で実力を発揮できるかがカギ! - 『ヴォイス~命なき者の声~』

瑛太が連ドラ初主役。ついに、ハジけてくれるのか?

正直言って、ストーリーにはあまり興味が湧きません。医大生たちが奮闘を繰り返す"青春ドラマ"というだけで、何となく想像はつきます。彼らは死者の魂の声を残されたものの"生"につなげていこうとするそうですが、よっぽど上手い設定と展開でなければ「どこかで観たことあるなぁ」という感想が先に立ってしまうでしょう。じゃ、注目はどこかと問われれば、本作が連続ドラマ初主演作となる瑛太! 演技力では定評のある彼ですが、その評価の対象となったのは主に脇役でした。つまり、今回は主役としてどこまで結果を残せるか――瑛太の腕の見せどころでもあるのです。彼が演じるキャラクターに十分な魅力が滲み出れば、陳腐になりがちな"青春ドラマ"にも独自の味が出てくるはず!

さくらの期待度は……☆☆

瑛太の魅力は繊細な表情の芝居。連ドラ主役の忙しさに負けず、いつものように徹底的に役を追求してほしい。

野島伸司のラブコメ……吉と出るか凶と出るか!? - 『ラブシャッフル』

玉木宏が『のだめ~』路線を継承する?

野島伸司が過去に手掛けたラブストーリーと言えば、『君が嘘をついた』などのトレンディ・ドラマ、もしくは『高校教師』などのタブーもの、『星の金貨』などの純愛モノを思い出します。そんな彼が『ラブシャッフル』ではラブコメを書くというではありませんか! 確かに彼は『ひとつ屋根の下』などでコメディー的なノリも一部手掛けていますが、昭和の香り漂うベタベタのやりとりが多かったような気が……。平成21年に突入した今、あのノリのコメディー要素で迫られても、果たして視聴者がついて来れるのか!? 少々疑問が残ります……。知らない間に野島伸司のコメディー・センスが猛烈に発達しているか、あるいは『のだめカンタービレ』で証明した玉木宏のコメディー演技センスが炸裂しない限り、少々イタい作品いなってしまうのでは!? それはさておき、恋人交換というテーマは面白そうですし、どれだけ多くの角度から斬り込むかに期待する価値はありそうです。

さくらの期待度は……☆

もしかしたらDAIGOの演技がいちばんのコメディー要素かも!? 個人的にやや期待してます。

山田太一最後!? の連ドラ作品に期待大! - 『ありふれた奇跡』

山田太一×仲間由紀恵コンビで良作は確実?

前クールの倉本聰に続き、今度は山田太一が放送前にしてテレビドラマから手を引く発言! といっても、山田太一の場合は連ドラに限ってのようですが、ドラマ界にとっては大きな痛手を予感させる発言です。日本のドラマ界を引っ張ってきた巨匠の最後の作品になるかもしれないとなると、もうそれだけで期待度はグンとアップ! 主演の仲間由紀恵もそつなく役をこなすでしょうし、相手役を務める加瀬亮の演技にも期待していいでしょう。派手ではないけれど安心して見られる、それでいて心に深く染み入る作品になるのでは!? ぜひとも高視聴率を取って頂いて、つまらない作品が増えた日本ドラマ界に"ドラマの真髄"を見せつけてやってほしいところです。

さくらの期待度は……☆☆☆

最終回までに山田先生にはぜひ心変わりしてほしいもの……。その期待も込めて☆3つ!

菅野美穂の"普通の女の子"刑事役は成功するか!? - 『キイナ~不可能犯罪捜査官~』

昨年末にはプライベートにおける一部報道で賑わせた菅野美穂だが、演技への影響は?

どの役をやらせても魅力的に演じる女優・菅野美穂。彼女が初の刑事役に挑むということで話題の作品です。ただ、よくありがちな喧々した女刑事なのかと思いきや、見たものを一瞬で正しく記憶する特殊能力はあるものの、基本的な性格は"普通の女の子"。アクの強さがないぶん、どの部分で視聴者を魅了させるキャラクターに作り上げるかが、彼女にとっての大きな課題となりそうです。内容的には「実際に起こった超常現象をベースにした不可能事件を解決していく」ということで、セリフの中にも数々の事実データが登場。会話のネタ集め的なノリで観るのもアリでしょう。基本的には1話完結なので気楽に観られる反面、つまらなければ視聴者が一気に離れる可能性も大。そういう意味でも、菅野美穂のキャラクター作りとストーリーの完成度に頼る部分が多いかも……。

さくらの期待度は……☆

期待してないわけではないけど、海外ドラマのパクリみたいなタイトルがちょっと……。

イケメンが好きな人も嫌いな人も、今クールはとにかく青田買い的な気持ちで鑑賞してみては? 主役に限らず、脇役の中に今後のドラマ界を牽引していく可能性のあるイケメンが潜んでいるかもしれませんよ。もちろん、作品自体の質を吟味することもお忘れなく! イケメン・ブームが今クールの流れを生んでいるように、視聴者の反応と世の中の流れが今後のドラマ作りに影響を及ぼすのですから……。

著者さくら プロフィール

"ドラマを見てはセリフを覚え、友人とドラマごっこをする"という幼少期からの趣味が高じ、大学卒業後は流れ流れてエンタメ雑誌業界へ。テレビドラマなどの特集担当記者を経て、現在はフリーライター。テレビ番組を中心とした特集やインタビュー記事を手がける。