同じような「強み」では差がつかない
就活の書類の自己PR欄や面接で自分の「強み」を書く時、負けず嫌いで勝ち気な人であれば、「自らリードした」「困難を乗り越えた」など、その強みに関するエピソードを具体的に添えることで、他者との差別化をはかろうとするでしょう。
ここに大きな落とし穴があるのです。表と裏、陰と陽のように物事には二面性があります。「強み」を強調しようとすればするほど、逆に、面接官の心には「ここが弱いのでは」と弱みを見透かされてしまうのです。
あなたも、広告でいいことばっかり書いてあっても、それを鵜呑みにせず、ネットで確認することと一緒。強みの連打は、メリットだらけのうさん臭い広告と同じなのです。
「強み」の反対をエピソードに忍ばせると無敵になる
では、どうすればいいか。強みの反対「弱み」がボトルネックになるなら、自己PRで伝えたい強みに加え、「弱みを補完」するエピソードを加えればいいのです。これで完璧です。
例えば
「人の意見をあまりきかないのでは?」反対面をみると→「協調性がないのでは?」反対面をみると→「人がついてこないのでは?」など
強みが強いほど、反対面の弱みもいろいろ出でくるでしょう。まとめると、弱みは「独断やゴリ押し」「人がついてこない」が想定されます。なので、弱みをカバーするために、「柔軟性」があることをエピソードとして盛り込むといいでしょう。
具体的には「結果だけでなく、プロセスを伝え、その中に柔軟性があること」を盛り込むのです。
「文化祭のコンテストで優勝した」のであれば、その結果を導いたプロセスの中で、「何に苦労し、何を克服し、どんな努力をしてきたのか」を語るでしょう。この中に柔軟性あるエピソードを入れるのです。
すべてが当初に予定・計画した通りに進むことは少ないでしょう。自分がリードしたエピソードはそのままでいいので、(1)状況をみて「柔軟」に目標や手段を変更したこと、(2)特に異なる意見を取り入れたエピソードを入れることが大切です。
・「途中から計画通りにいかず、ついてこられないメンバーがいたけど、腹を割って話したらついてきた」→これは自分がリードしたことしかPRしないエピソード。
・「途中から計画通りにいかず、メンバーが離れた時、自分の考えややり方だけではダメだと気付き、メンバーの一人ひとりに、「自分のやり方含め、何が問題か教えてほしい」とフィードバックをもらい、××に気付き……」→柔軟性があることを加えたエピソード。
いかがでしょうか。「負けず嫌いで勝ち気」な人であれば、周りの意見を受け入れた経験はなかったことにしたい、自分の手柄だけを伝えたいと思うものが普通でしょう。
「柔軟に意見を受け入れ、計画や打ち手も柔軟に対応したことで成功した」というエピソードを言える勇気を持てる人は極少数。なので、頭ひとつ抜き出せるのです。
弱みのPRは強みと「セット」で説得力が増す
自己PRのテクニックを教える書籍では、ギャップがある方が人間の幅や懐の深さを伝えられ、魅力度が増すと書かれています。強みと弱みではなく、弱みを強みのように置き換えて話すといいと言われますが、面接官の立場で考えてみてください。
散々強みを語った結果、面接官に「強みの裏には、こんな弱みがあるのでは?」と勘ぐられた状態で「自分の弱みは~」と答えると、取ってつけた言い訳っぽく聞こえませんか?
ましてや、用意したエピソードが強みを示した時と違うものであれば「はい、はい、面接対策用に用意したものですね」と見透かされてしまいます。
いい意味で強みと弱みでギャップを示そうとするのであれば「一貫性」が必要です。同じエピソードの中で、そのギャップを示すことが一番相手の頭にすんなり入ります。
面接官は強みを先に聞き、弱みから聞いてくることはありません。強みを話す時に、強みと弱みを活かしたエピソードで伝えてあれば、その時点で「強みを生かし、弱みも克服した人材」であると判断してくれます。
もし「弱みはなんですか?」と聞かれても、「先ほどのエピソードでもお伝えした通り……」と弱みを克服したことを伝えればOK。また、経験から学んだことを他に生かしたエピソードがあれば完璧です。
自己PRのエピソードを練る時、「強み」をPRするエピソードの中で、強みの裏側で面接官が弱みと想定することをクリアする部分を深掘りして用意することをお勧めします。