こんにちは、人事・戦略コンサルタントの松本利明です。私はPwC、マーサー、アクセンチュアなどの外資系大手のコンサルティング会社で24年以上、600社を超える企業の人事コンサルティングをしてきました。
その経験から就職活動の現場をみると、「就活のセオリー」と言われている内容には、実はドツボにはまってしまうものもあるのです。
就活生が「やりたいこと」が見つからないのは当たり前
就活を始めた時、誰もが悩むことがあります。それは「本当になりたいことが分からない」ということですが、ご安心ください。それは当たり前のことだからです。
プロのスポーツ選手が小学校の卒業文集で「将来プロになり海外で活躍」と書くなど、小さい頃からやりたいことを見つけ、夢をかなえられることは、現実ではごく一部。初恋の人と結婚する人が1%しかいない※ことと一緒です。
※出典:ITmedia ビジネスオンライン「初恋の人とゴールインする確率、100人に1人」
人生が進み、賢くなるにつれ、思考、好みが変わることは成長の証しでもあるからです。なるほど、確かに、やりたいことってどんどん変わるな~と納得しても、現実の就活では「やりたいこと」を問われます。
そもそも、「やりたいこと」が見つからない、「やりたいこと」を叶えられない人生はつまらないものです。ゆえに、悩むのです。
「やりたいこと」の正体は情報
実は「やりたいこと」の正体は情報です。YouTuberという仕事の情報を知って初めて、YouTuberをやりたいか、否かが分かります。そもそも、YouTuberという仕事を知らなければ仕事を検討する土俵にも乗りません。
さらに、情報はアップデートされます。5歳の女の子が「プリンセスになりたいの」と言うのは可愛いですが、就活で「プリンセスになる」という人は皆無なことと一緒です。年を重ねるごとに、入ってくる情報がアップ―デートされるので、やりたいことも変化するのです。
「あのベンチャー企業がかっこいい」「ベンチャー企業はいろいろ任されるから成長する」「大企業は昔の体質で終わっている」「大企業はベンチャー企業より倒産リスクが低い」など、すべてが情報です。
「やりたいこと」をつかみたくて情報を取ればとるほど、選択肢が増える分、余計迷いが生じるのも事実です。
「やりたい」ことより「楽しいこと」に着目する
明確にしましょう。やりたいことの情報に振り回されるのではなく、「楽しいこと」に注目しましょう。「楽しい」は動機すべての原点です。
サークルの行事でも楽しいと感じる人と、そうでない人もいるでしょう。同じ「楽しい」でも、「企画するのが楽しかった」「みんなが喜んでくれたのが楽しかった」など、楽しいポイントは違うものです。この楽しいポイントが、あなたが「向いていること」の原点になります。
・楽しいポイント→楽しく結果が出ている→向いていること
そう、「むいていることを、やりたいことにすれば、楽しいし、結果も出しやすい」のです。「やりたいこと」は外にある情報ではなく、「楽しくて向いている」ことを中にあるのです。
実は「やりたいこと」を情報で判断した結果、後悔する就活生は沢山います。就職してみたら、期待と違った、楽しくなかった、結果が出せなかったでは後悔先に立たず、です。
転職という選択肢もありますが、やりたいこと情報で振り回されると、結局同じ歴史が繰り返されます。「新卒カード」を切れるのは1回だけです。
なので、楽しく結果を出せて向いていることが何かをつかむのが真実のセオリーなのです。
「向いている」ことは、あなたの根幹となる強みにもなる
向いていることを洗い出すのは簡単です。まず、「楽しい」と感じることを思いつくまま書き出しましょう。次に、なぜ楽しいと思えたのかの感想を書きます。この感想が「楽しいポイント」であり、「向いていること」になります。
子どもの頃から楽しかったことを思い出しながら、とにかく数多く出してみるといいでしょう。三つ子の魂百まで、ではないですが、楽しい対象は変わっても、楽しいポイントは意外と変わらなかったりします。
楽しいこと | 楽しいポイント |
---|---|
どろけい(けいどろ) | 作戦通りに、仲間を動かして成功した時がたまらなく楽しい |
ロールプレイングゲーム | 攻略法をみずに、自分で考えて攻略することが楽しい |
この人は「戦略的に物事を考える」策士的なことが楽しく、向いていることが分かります。
例えば、正解があり手順手続きをきっちり守る「鉄道運転手」より、自分で正解を考え、試し、実現させスゴイと思われる「ゲームプログラマー」の方が向いてそうですよね。
もしくは、仮説をもとにAIを活用して、ビッグデータから新しい法則を導く「データサイエンティスト」もイメージに合うでしょう。
このように、楽しいポイントを沢山洗い出し、その中で共通項である「むいていること」と、情報として入ってきているやりたい仕事に当て嵌めてみればフィットするかどうかがみえてくるのです。
ここまでくれば分かるでしょう。
自己PRの志望動機も、この楽しいポイントを組み立てれば、「御社のグローバルで共通するコンテンツ……」的な一般論から、「御社のゲームの……を小学生の時、攻略方法を見つけて雑誌に投稿して~」のように、体温が通い、自分のむいていることを自然にPRできるようになります。
急がば回れではないですが、「やりたいこと」の情報をかき集めて、うーんと悩むより、楽しいことから、向いていることを見つけ出した方が、結局は最速でやりたいことが見つかります。