就活での面接官からの質問は、「言葉通り素直に受け取り、直球で答える」と失敗します。なぜなら、その質問の「裏」に面接官が聞きたい本音の質問が隠れているからです。

前回は『面接対策で用意した質問を「挫折や失敗の経験を教えてください』を解説しました。今回は「転勤がありますが大丈夫ですか?」です。

転勤の可否や勤務地の希望を聞くには裏の意図がある

面接で転勤や勤務地の希望を聞かれたら、こちらの願いが叶うのではないか。こう考えるのも分からないではないですが、面接でこれを聞くのは裏の意図があります。  それは、

・我社への就職の覚悟の本気度の確認
・家族の説得ができているか

この2つになります。幾つかの日系企業は、会社の都合で転勤・異動があります。本人の希望は「聞く」のではなく「確認」です。配属の希望を出せる場合もありますが、最終的に配属を込めるのは会社の都合なので甘い期待はしない方がいいでしょう。

多様な働き方を受け入れ、時短勤務や勤務地限定の人事制度が用意されているケースが増えましたが、これはあくまでもどうしても時短勤務でなど、その働き方でないと働けないかただけへの対応策なのが現実です。

さらに、勤務地限定になると勤務地の報酬水準がベースとなり、全国勤務可能の総合職より報酬も落ち、出世も遠のくことになります。外資系企業のように「ジョブ型」を謳う日系企業も増えつつありますが、会社都合で配属先や転勤が決まる運用は実は今も変わらず行われています。

ただし、100%ではないですが配属先の希望を有利に伝えることはできます。「志望動機」と合わせ、「〇〇の仕事がしたいので△△に配属を希望します」と伝えることです。

これは志望動機をより強く面接官に伝えるには効果があります。ただ配属はあくまでも会社都合と割り切りましょう。「東京か地元」「TV局なら制作をやりたい」等、希望する勤務地や配属先はだいたい他の就活生と被るからです。

就活の面接で一番大事なことは希望を伝えることではなく「内定」を貰うことです。ゆえに、「転勤がありますが大丈夫ですか?」という問いの答えは「Yes」一択です。新卒採用は「総合職」で「全国転勤可能」な方を採用したいと多くの会社が考えているのでしょうがないのです。

まず、内定を多数の会社から得て、選択肢の数を増やすことに集中しましょう。

数ある内定の中から、最後に1社に絞ればいいのです。今は二人に一人が転職する時代なので、就職した後に意にそぐわない配属先や転勤になったら、その時に転職を検討すればいいのです。

もう一つ、面接官が気にしているのは「両親が納得しているか」です。就活生本人がいくら「Yes」と言っても、親が納得せず、最終的に辞退されてしまうことを恐れるからです。ここは「両親も納得済で応援してくれています」と一言添えればいいでしょう。

ポイントは、

(1)「Yes」一択ですが、前向きな志望動機と理由をセットにして伝える
(2)両親も納得していることをきちんと伝える

になります。

今回も失敗例とお手本で解説します。

失敗例:
はい、もちろん転勤があることは承知しています。若い時にジョブローテーションでいろいろ経験を積ませていただけたら嬉しいです。ただ、(1)もし可能なら両親は高齢なので東京の自宅から通えるところが嬉しいです。将来的に両親を介護する必要がでてくるかもしれないので、その時に会社に迷惑をかけたくないからです。

「Yes」と返事をしていますが、両親のことを出汁にして東京に勤務したいという下心がみえみえです。福利厚生で介護面の制度が充実していたとしても、それは将来の話です。介護などが必要になった時、勤務地を考慮してくれる会社は多くありますが、あえて面接の場で聞く必要はないでしょう。

本当に将来の介護に応じて勤務地を考慮してくれるかを知りたい場合は、面接の場ではなくOB・OGや人事に介護で勤務地を考慮してくれた割合やケースを聞けばいいでしょう。これも「内定」を貰ってからでも遅くはありません。数多く内定をもらった上で、条件面の精査の一つでいいでしょう。

お手本:
はい、もちろんです。(2)技術職を希望しているので、大都市だけでなく地方や海外にも工場や研究所が多数あることを承知しています。専門性を磨けるのであれば勤務地はこだわりません。せっかくであれば親元を離れ、経験したことのないアウェイな地域で生活してみたいです。

父親が商社勤務で転勤族だったので、国内外、いろんな国や地域に引っ越し、その場でなじみ、新しい経験をすることが大好きだったので慣れています。両親も新しい土地に住むことが大好きだったので、グローバルに展開している企業はそういうものだと理解しています。(3)両親も「自分がやりたいことをやればよい。できれば海外勤務は経験したほうがいい」と応援してくれています。転勤については全く問題がなく、可能であれば海外も経験してみたいです。

(2)で希望する職種の勤務地をきちんと事前に調べている上、転勤可能な理由も経験則から述べているので納得感が高まります。

(3)で両親も納得済であることを伝えてあるので、面接官は安心してくれます。

いかがでしょうか。勤務地や転勤は気になることは当たり前ですが、採用する立場になって考えると面接で配属先の希望や保証を問われても、確約できないのが本音です。

全国転勤が前提の日系企業なら、配属先へのこだわりや転勤NGはマイナスでしかありません。

ちなみに、ジョブ型と呼ばれる外資系企業でも、出世するエリートは全世界を対象に異動します。実際に働いた上で生活基盤をどこに置くかは、その時の家族も交えて総合的に決めていきます。「どうしても日本がいい」となれば、その時に転勤を断るか、同じかそれ以上の条件で働く企業に転職するのです。

いずれにしても面接時にあえてマイナスの印象を与える必要はありません。まずは「内定」をとるため、大人な対応を心掛けましょう。

この質問も必ず就活の面接で聞かれるので、事前に用意しておきましょう。