折りたたみPCって誰向けなの?

原(PC部)───今回は、各メーカーから投入が相次ぐ折りたたみPCについて見ていこうと思います。というのもノートPCのフォームファクターってほとんど完成に近いようなものなのに、折りたたみモデルはそこで新しいことをやろうっていうわけじゃないですか。こういうとあれですけど、個人的にはなかなか難しい製品開発・マーケティングが行われてるんじゃないかなと思っておりまして。

細田(モバイル部)───たしかにスマホでは折りたたみもじわじわ増えてきましたが、ノートPCではどうなんでしょうね。これまでのスタイルが完成に近付いてきて、新しいアプローチとして折りたたみが注目されているのはどちらのジャンルも同じなのかなと思います。PCだと折りたたみはLenovoとASUSとHPぐらいでしたっけ?

  • ThinkPad X1 Fold

  • Zenbook 17 Fold OLED

  • Specte Foldable 17

───あと国内投入はされてませんが、LGもありますね。各々若干仕様が違うんですけど、だいたい16~17型で長辺が折れるのは変わらないです。第12世代~第13世代Coreシリーズを搭載しているものしか見られず、ディスクリートグラフィックスの採用例もありません。

  • LG gram Fold

細田───最初に出してきたのはLenovoだったと思いますが、初代ThinkPad X1 Foldは普通のノートPCに近い13.3型で、現行機種は他社もそろって16~17型でだいぶ大きくなりましたね。でも、各モードでの使い分けを考えるとこれぐらいの画面サイズがあった方がいいのかなと思ったり。

───「折り曲げたら画面ちっちゃいなコレ」というシンプルな改良点が見つかったんでしょう。そのLenovoでいえば、このあいだ発表会に参加してきたんですけど、どうも法人利用を企図しているようだったのが印象的でした。コンテンツ消費用の民生向けではなく、まさかの業務効率改善を見込んでいるらしいです。普通のPCを何台も買えるような超高級先鋭デバイスの法人利用、だいぶ飛躍してるように感じたんですが、売り手側はそうでもないんでしょうか。

細田───60~80万円もする風変わりなPCを導入する企業、本当にあるんでしょうか……。値段の問題をクリアできれば、営業先でそのまま大画面で何か見せたりとか、使いどころが無くはないのかもしれませんが。

───個人的には、まだ見ぬガジェットへのあくなき好奇心を持ったアーリーアダプター的ユーザーに向けていると言われたほうが納得しやすいです。

細田───買うお金があるかは別として、最新技術や機能をこれでもかと詰め込んだ感じでワクワクしますもんね。

HP「Spectre Foldable PC」実機で折りたたみPCを体験

───百聞は一見に如かずというわけで、HPから「Spectre Foldable PC」を借りてきました。市場における折りたたみPCとしては最後発にあたる製品なので、いわゆる最新モデルです。実機を見ていけばわかることもあるんじゃないかなと。

  • HP「Spectre Foldable PC」。開いた状態だと17型です

  • キックスタンドを内蔵していて自立可能

細田───第一印象としてはやっぱり、17型は大きいね。

───デカいですね。アスペクト比が一般的なものより縦に長いのもあって、だいぶ“広い”ように感じます。ちなみにこの開いた状態でのアスペクト比がIMAXのプレミアムなフォーマットの最大スケールと近いらしく、パネルは「IMAX enhanced certification」仕様。B&O監修のスピーカーを内蔵して、コンテンツ消費に訴求している……と発表会で聞いてきました。

細田───へぇー。2,560×1,920ドットだと、開いた状態ではちょっと珍しいバランスですね。一方、半分に折った状態で使うとサイズ的に普通のノートPCよりちょっと小さいぐらい(12.3インチになります)でイイ感じのサイズに見えます。1,920×1,280ドットになるのも最近の流行りのアスペクト比に近いですよね。

  • 半分に折った様子

  • 付属の物理キーボードを載せたところ

───そうなんですよ。それに、下半分に同梱の物理キーボードを据え付けた状態だと、手元の13.3型ノートPCよりも断然小さく見えます。常用するであろうこのスタイルでこのコンパクトさを実現しているのはだいぶ便利そう。もちろんデスク等ではキーボードを取り外して、開いた状態で横向きにすれば大画面になるわけですから。ちなみにHPは5-in-1であることをアピールしていて、タブレット・ノートブック・デスクトップ・伸長画面・拡張画面の5つで使えるとのことでした。

細田───その中だと、ノートブックの状態からキーボードを手前にちょっとずらした拡張画面モードが気に入りました。VAIOの「無限パームレスト」みたいに机とパームレストの段差がなくなってタイピングしやすいし、キーボードの上にASUSのZenbook Pro 14 Duoみたいなちょっとしたサブ画面ができるのも面白いです。

  • 「拡張画面モード」。キーボードの上にちょっとした表示領域があります

───これめっちゃ面白いですよね。キーボードをぴったり折り目に添わせるんじゃなくて、微妙にずらして使ってみようという。一見するとキーボードがだいぶ不安定に見えるんですが、マグネットがぎゅっとポジションを固定していてとても好感触。しかもキーボードは本体から無線充電できるという業界初のギミック付きで、いちいち充電のためにケーブル接続が必要ありません。

細田───キーボードの充電は快適なんですけど、本体の外部端子はUSB Type-Cが1つあるだけなのがちょっと不便ですね。充電しながらUSBのアクセサリを接続したい時は付属のドックで補う形になっているのですが、充電のパススルー用とは別にもう1口ぐらいType-Cがあるといいなと思いました。

  • USB-C端子はここ。開いて使うと上に、たたんで使うと上画面の右側にくる微妙な位置

  • HDMI、USB-A×2、USB-C×1のドックが付属します

───ペンの充電も本体にくっつけて行えて便利なのに、本体への充電が一番ややこしいという。Lenovoの二号機であるThinkPad X1 FoldはこだわってType-C端子をあちこちに搭載していたので、HPも次があれば改良してほしいところです。

  • ペンはもちろん筆圧検知に対応。替え芯も付属していました

思ったより製品の完成度が高くて敗北。ケチの付け所があんまりない

───ここまでぐにゃぐにゃと折り曲げたりしながら、さらっとHP「Spectre Foldable PC」を見てきましたけど、これもしかしてすごくちゃんとした製品じゃないですか? 文句をつけて話を進める算段だったのに、見ていくうちにだんだん気に入ってきました。広げると大きく、たたむとコンパクト。重さも“普通”の範疇に収まっていて、キーボードの打鍵感もなかなか悪くありません。無線充電のギミックも実用性に寄与しているし、いやこれ欲しいかも。

細田───「とりあえずフォルダブルOLEDでPC作ってみました」という域から脱していて、ちゃんと高級モバイルPCとして価格相応の価値があるなと思いました。有機ELで映像も綺麗だし、クアッドスピーカーもちゃんとした音。電車内やカフェなんかの狭いスペースで軽く作業する時は半分開いた状態、ホテルなどに着いたら大画面で……という使い分けは便利そうで、ちゃんと折りたたみのギミックに意味があって良いです。

───よし、じゃあ買おうかな! ところでおいくらなんでしたっけ? 手頃なら細田さんの分も買ってきますよ。

細田───お値段なんと798,600円から!今なら36回まで分割手数料無料です!

───えっ、それだと月々でも22,184円か……。ちょっと考えさせてください……。