ハシビロコウという動物をご存じでしょうか?
見てください、この圧倒的な存在感。この風貌で、れっきとした鳥なんです。ちょこまか動いたり、あちこち飛び回ったりする小鳥とは、まったく違う次元の風格が漂います。
アニメ『けものフレンズ』(テレビ東京)にも登場したことからさらに広く知られるようになりましたが、ネットユーザーは10年以上前からハシビロコウに夢中でした。
ハシビロコウは動かない
木靴を思わせる大きなくちばし、それから鋭い目! 見れば見るほど心ひかれるのですが、この鳥あまり動きません。見た目がおもしろくて何枚も写真を撮ってしまっても、結果すべて同じポーズの写真ばかりに(笑)。
こんなに動かず、じっとしている鳥が、自然界でえさを獲ったり敵から逃げ出したりなどできるの……? ハシビロコウの飼育員さんに聞いてみました。答えてくれたのは、ハシビロコウ展示が評判の「高知県立のいち動物公園」です。
一瞬のチャンスを逃さない
「のいち動物公園」の展示コンセプトは、「なるべく自然に近づけること」。ハシビロコウの展示場には、湿地帯を模した池を中心として木などを配置しています。オスの「ささ」と、メスの「はるる」が暮らしているのですが、ウワサ通りほとんど動かないのでしょうか。
飼育員の小松さん:野生に近い捕食行動を見ていただけるように、活きた魚を池に入れています。生息地のアフリカでは肺魚(ハイギョ)を食べますが、動物園ではコイを与えています。おもしろいのが、魚が水面に上がってくるまで水辺でじーっと動かずに待ち続けることです。
体も大きく、体長は約120センチ、全体的にコンクリートや石を思わせるグレーの体色。いかにも重々しい感じですが、ハシビロコウは飛べるのでしょうか?
飼育員の小松さん:もちろん飛べますよ。助走しなくても大きな翼をひと振りでフワッと飛び上がれます。そして、旋回して飛ぶ様子は力強いです。ハシビロコウが自由に飛べるように、展示場は高さが6.5メートルもあるんですよ。
ぼーっとしているだけかと思えば、意外と身体能力は高いんですね!
飼育員の小松さん:それから、えさの魚を捕まえるときはかっこいいです。魚が上がってきたら一瞬で捕まえるんですよ!
「動かない鳥」として知られていますが、それは、獲物に存在を気付かれないようにするためなんですね。魚を捕まえるために水辺でじーっと動かずに待ち続け、チャンスが来たら一瞬でモノにする……。ハシビロコウ先輩、さすがです。
メリハリつけた働き方
わたしたちだってできるものならいつでも100%の能力を発揮したいですが、集中力には限界があります。個人差がありますが1、2時間で集中力は切れてしまいがち。だから、長時間働き続けるよりも適度に休憩を挟んだほうがよいパフォーマンスが発揮できるというもの。
本当に大切な「勝負のとき」に全エネルギーをぶつけることが大事。ハシビロコウを見習ってメリハリつけて働きたいものです。
最後に、飼育員さんからおまけ情報をいただきました。「ときどき、枯れ枝を運んで巣を作ったり、虫やカエルをつかまえるところが観察できることも。歩くときは意外と速足だったり、人間をきちんと見分けて対応を変えたりと、意外と人間みたいなところが観察しているとおもしろいです」とのこと!
●取材協力
高知県立のいち動物公園
高知県香南市野市町大谷738
0887-56-3500