「結婚・子育て資金の贈与」というフレーズを聞くと、何か違和感を覚えませんか? そもそも、自立できるからこその結婚であるはずで、子育ても同様でしょう。思い描く教育が可能だからこその子づくりであるはずです。

もちろん、どのようなことにも例外はあります。災害や事故に遭遇したなどで子育てが厳しくなってしまうケースは、誰にでも起こりえます。しかし、そうした事態に親などが支援することに、別段特例を設ける必要があるとは思えません。厳密に考えれば贈与と言えるかもしれませんが、はたしてそうしたケースを探し出し課税されるでしょうか。

政府の意図は他の贈与の特例と同様、父母・祖父母の財産を社会活動の中に拠出させることでしょう。使う側はそれに振り回されず、しっかりとした生活設計の元、生活を立て直すために上手に活用するにはどうしたらよいでしょうか。生前贈与の連載も終盤ですが、今回はこの「結婚・子育て資金の贈与」について考えてみましょう。

  • 結婚・子育て資金の贈与の特例の仕組みを理解しよう

    結婚・子育て資金の贈与の特例の仕組みを理解しよう

結婚・子育て資金贈与の特例の概要

まずは「結婚・子育て資金贈与の特例」の制度をきちんと理解しましょう。そもそも、「結婚・子育て資金」とは具体的に何が含まれるのか気になる方もいらっしゃいますよね。

「結婚」に係るものは、結婚資金(限度300万円)として「挙式費用」「衣装代」「結婚披露費用(婚姻の日の1年前の日以降に支払われたもの)」「家賃・敷金などの新居費用(一定の期間内に支払われるもの)」を指します。

一方の「子育て」に係るものは「妊娠・出産・育児の費用」として、「不妊治療」「妊娠検診費」「分娩費」「産後ケア」「子の医療費」「幼稚園・保育園などの費用」が該当します。

結婚・子育て資金贈与の特例の手続きは「教育資金贈与の特例」とほぼ同じとなります。下に簡単にまとめましたのでご参照ください。

・特例の期限:平成31年3月31日まで
・受贈者の年齢:20歳以上50歳未満
・贈与者:受贈者の直系尊属

「結婚・子育て資金」に充てるために、金融機関などとの一定の契約のもと、次の (1)から(3)までのいずれかの契約を金融機関とかわせば、非課税となります。

(1)信託受益権を付与された場合(信託銀行などが主として行っている)
(2)書面による贈与により取得した金銭を銀行などに預け入れした場合(祖父母らと書面をかわし、一括贈与を受けた金銭を受贈者が預け入れる)
(3)書面による贈与により取得した金銭などで、証券会社などで有価証券を購入した場合(父母らと書面をかわし、一括贈与を受けた金銭を受贈者が運用する)

非課税枠は1,000万円で、金融機関を通じて「結婚・子育て資金非課税申告書」を提出する必要があります。