女友達がみんな結婚していく、というのは、独身女性の不安としてよく語られるものの一つです。私の経験では、30代で一番、独身の友人が結婚していくということが多かったです。それでもまだまだ独身女性の友達はいるし、そういう部分で「取り残された」とは感じていません。

でも、先日、昔つきあっていた人に子供が産まれたというニュースと、昔好きだった人が結婚したというニュースが同じ日に飛び込んできました。あわよくば戻れるとか考えていたわけではないのに、鈍い衝撃がボディブローのように徐々に効いてくるのを感じました。ひどく疲れて、帰宅するなり寝てしまうと、悪夢を見てうなされ、目が覚めました。

夢の中で私は、知らない国で犯罪を犯し、警察に追われていました。捕まれば拷問のような取り調べが待っている。捕まっていたぶられるくらいなら、ここから飛び降りて死んだほうが……と、ビルの上から地面を見下ろし、追っ手の足音を聞いていました。目が覚めてからは眠れず、その日ピークだという双子座流星群でも見ようかとベランダに出ましたが、流れ星はひとつも見えませんでした。

誰もいなくなっていく孤独

なぜこんなことが、それほどまでにショックなのでしょうか。それは、年々恋愛をすることが困難になっていくのを肌で感じているからです。過去の人とよりを戻そうとは思っていなくても、恋愛に関することが何も起こらない毎日を過ごしていると、「でも、前はあんなこともあったんだし」と、過去の恋愛を思い出すことが増えます。その思い出を飴のように舐めて心を慰めるのです。

でも私は最近、ぞっとすることに気がつきました。今までの豊富じゃない思い出を、このペースでねぶっていたら、40歳までに心を慰める効果がすりきれてしまうのでは……。そうなったら、どうすればいいのでしょう。

そんなことを言っていたら、友達が「こないだ読んだんだけど、その日に会った人、見かけた人の中でいちばんいいなと思った人は誰か、って考えて、男の人を意識する習慣をつけると、恋に落ちやすくなるらしいよ」と教えてくれました。

早速、今日会った人の中でいいなと思った人は……と考えてみましたが、1位から3位まで全員結婚指輪をしていました。指輪をしていなくても結婚している人もいるわけで、考えれば考えるほど恋愛の可能性というのは、低いんです。

ときめく相手かどうか、そういうことを考える前に、「結婚していない」という条件で検索するだけでほんの数人しか残らなくなってしまう。もう選ぶとか、そういう問題ではありません。それでも残っていればまだいい。それを逃してしまえば、自分がもう恋愛対象として見られる年齢ではなくなってくるのです。

こんな状態で、どうしたら恋愛や結婚のことを考えるのが楽しくなるのでしょうか。孤独なババアになるのだったら、もう結婚のことなんか諦めて、孤独な老後への準備に専念したほうがいいのではないか、と私は思い始めています。

<著者プロフィール>
雨宮まみ
ライター。いわゆる男性向けエロ本の編集を経て、フリーのライターに。その「ちょっと普通じゃない曲がりくねった女道」を書いた自伝エッセイ『女子をこじらせて』(ポット出版)を昨年上梓。恋愛や女であることと素直に向き合えない「女子の自意識」をテーマに『音楽と人』『POPEYE』などで連載中。

イラスト: 野出木彩