映画の脚本も書くけど、基本はひとりの映画好きという僕が、今月から、注目の新作DVDタイトルを紹介します。
まずは今月の目玉作品。第1作から半世紀近くを経て、今なおエンターテインメント映画の王道を走り続ける『007』シリーズ、その最新作であり第21作目となる『007/カジノ・ロワイヤル』がDVDで登場! 話題の中心はなんといっても新ボンドの誕生だろう。最近4作で主演を務めたピアース・ブロスナンに代わって、英国の実力演技派ダニエル・クレイグがジェームズ・ボンドに大抜擢。さらに今回のテーマは"原点回帰"ということで、冒頭でボンドはまだ"00(ダブル・オー)"=殺しのライセンスを持っていない。これはボンドという男が、どのようにして"007"になってゆくのかという、エピソード1。ブロスナンに比べて荒削りな印象を受ける新ボンド=クレイグだが、それはまさに"狙い"なのだ。
ボンドに下された最初の過酷な任務、そしてその後の人生を決定付ける運命の愛……といっても小難しいことは何もない。建築中の高層ビル上でのアクションに空前絶後のカースタントなど、シリーズ名物の世界中を舞台にした派手な見せ場は健在だ。しかも映像特典を見れば、ビル上のアクションが、特殊効果ではないとわかって呆然とするはず。これはストリートの壁や障害物を乗り越えるイギリス発祥の新スポーツ="フリーランニング"の第一人者による指導のものであり、さらに実に7回横転するカークラッシュ(ギネス認定!)も。これぞ、"生身"と"本物"のアクションにこだわってきたこのシリーズならではの醍醐味だ。過去にパロディ版で一度映画化されてもいる『カジノ・ロワイヤル』だが、今回が正真正銘の決定版! 映像特典にはほかに歴代ボンドガールを紹介する最新ドキュメンタリーも収録されている。
『007/カジノ・ロワイヤル』 |
"生身"のアクションもいいが、映画はやはり空想の世界を堪能したい、という人には『エラゴン 遺志を継ぐ者』がオススメ。少年が森の中で見つけた石はドラゴンの卵。やがて少年は自分が伝説の種族=ドラゴンライダーであること知る。『ハリー・ポッター』『ロード・オブ・ザ・リング』に続くベストセラー・ファンタジー小説の映画化最新作。ドラゴンの声を『ナイロビの蜂』で昨年、アカデミー賞助演女優賞に輝いたレイチェル・ワイズが担当しているのも話題である。
『エラゴン 遺志を継ぐ者』 |
そして今や飛ぶ鳥落とす勢いのスカーレット・ヨハンソン出演のあの作品もついにお目見え。現代アメリカを代表するハードボイルド作家ジェームズ・エルロイの小説を、『アンタッチャブル』のブライアン・デ・パルマが映画化した『ブラック・ダリア』。1940年代のLAを震撼させた猟奇殺人事件、その真相とは?
『ブラック・ダリア』コレクターズ・エディション |
アレっ、あの名作、まだDVDになっていなかったのか!? 今月、初DVD化の旧作にオリバー・ストーンの『トーク・レディオ』がある。最近も『ワールド・トレード・センター』などで健在ぶりを発揮したストーンだが、1988年に手がけたこの作品はラジオの毒舌DJとリスナーの関係の中に現代社会の闇を描き出し、ストーン作品中でも最もエッジの効いた作品だった。衝撃的な結末に受ける衝撃は、ネット時代の今にあってさらに増している。
『トーク・レディオ』 |
旧作の再発売ながら注目しておきたいのは、『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズで大人気のジョニー・デップが、アル・パチーノと共演した『フェイク』。20分もの未公開場面を加え、装いも新たに『エクステンデッド・エディション』として再登場する。組織に潜入し、老マフィアと固い絆で結ばれ苦悩するFBI覆面捜査官。海賊船船長とは違う、若きデップのシリアスな演技を堪能したい。
『フェイク エクステンディッド・エディション』 |
パチーノといえば、1970年代の代表作『狼たちの午後』『スケアクロウ』が、かなりお求め安い価格で再発売される。題して「団塊の世代キャンペーン」。パチーノ主演作のほか、『俺たちに明日はない』といったアメリカン・ニュー・シネマ、『ワイルドバンチ』『ゲッタウェイ』などサム・ペキンパー作品が8作品、"最強オヤジ"スティーブン・セガールが大暴れする"沈黙"シリーズなど12作品が、なんと期間限定で全て980円! こういった低価格DVDも用チェックだ。発売はすべてワーナー・ホームビデオ。
プロフィール 新田隆男
映画ライター。脚本家や小説家としても活躍。あらゆるジャンルの映画全てを溺愛する。脚本代表作は映画『うずまき』、TVドラマ『ほんとにあった怖い話』、『怪奇大家族』など多数。現在、週刊誌『SPA!』(扶桑社)にてDVDコラムを連載中