離婚を考え始めたとき、各種手続きにお金がどのくらいかかるのか、まず気になるところですよね。今回は、日本における離婚の大半を占める「協議離婚」と「調停離婚」の手続費用の目安についてお話ししたいと思います。
離婚届を出す前にしておきたいこと
まず、協議離婚の場合から見ていきましょう。
お互いが離婚に合意しており、親権や養育費、慰謝料、財産分与などについて具体的に取り決めができた場合には、離婚届の「提出前」に、その内容を「公正証書(強制執行認諾文言付)」にすることをおすすめしています。
公正証書とは、法律実務の経験豊かな専門家である「公証人」が、当事者から託されて作成する文書のことです。たとえ自分たちで取り決めを書面にまとめていたとしても、万一養育費などの支払いが途中でストップしたとき、残念ながら、これだけでは法律的に取り立てることができません。
しかし公正証書があれば、万一相手が取り決めを守ってくれないとき、あらためて調停や裁判を起こさなくても、「強制執行」(給料の差し押さえなど)を申し立てることができるのです。
公正証書作成の費用はどれくらい?
公正証書の作成は、全国各地にある「公証役場」で受け付けています。作成には手数料がかかりますが、そのための相談は無料となっています。公正証書の作成費用は法律に基づいて決められており、全国どこの公証役場でも手数料は同じです。
作成費用は「目的価額」によって変わります。目的価額とは、「慰謝料・財産分与」および「養育費」の額のことです。慰謝料・財産分与と養育費は別々に取り扱われるため、それぞれの手数料を算定した合計額が、その証書の手数料の額となります(養育費については10年分の支払金額のみが計算対象)。
離婚調停の申し立てにかかる費用
離婚について、または離婚の条件について、当事者だけで話し合いが困難な場合には、家庭裁判所の調停を利用することになります。調停とは、裁判官や調停委員に援助してもらいながら、話し合いにより解決を図る手続きです。調停申立に当たっては、家庭裁判所に収入印紙1,200円と連絡用の切手を納めます。
弁護士に依頼する場合の費用
調停手続きは自分でもできますが、1人では何かと不安なものです。では弁護士に依頼する場合、どのような費用がいくらくらいかかるのでしょうか。
離婚調停にかかる基本的な弁護士費用は、大きく分けて以下の3つです。
着手金
弁護士報酬。依頼時に一括で支払い、結果の成功・不成功に関係なく原則として払い戻しはされません。
報酬金
弁護士報酬。結果の成功の程度に応じて支払う成功報酬で、事案終了時に支払います。
実費
収入印紙代、交通費、通信費、コピー代などの必要経費のこと。
また、裁判所が遠方になる場合には、交通費とは別に日当を請求されることもあります。調停では原則、相手方の住所地で裁判所の管轄が決まるため、相手が遠方に住んでいる場合は弁護士に事前に確認した方がよいでしょう。
弁護士費用の目安はどれくらい?
離婚調停の着手金は、20万円前後から30万円前後、報酬金についても離婚成立で20万円前後から30万円前後としているところが多いようです。そのほか、養育費、財産分与、慰謝料など、相手方と合意できた額によって成功報酬が加算される場合もあり、報酬の決め方は事務所によってさまざまです。
なお、弁護士費用は地域性、手間と労力、事案の複雑さなどによって相当な金額の幅があります。委任契約前には必ず弁護士に説明を受けましょう。
法テラスの弁護士費用立替制度について
経済的に着手金を一度に用意することが難しい場合は、弁護士費用の立替制度があります。その窓口が「法テラス」(日本司法支援センター)です。法テラスとは、国民がどこでも法的なトラブルの解決に必要な情報やサービスの提供を受けられるようにする、という目的のもと、国によって2006年に設立された公的な法人です。
利用には収入などが一定額以下であることなど、いくつかの要件を満たすことが必要となりますが、離婚事件の場合は配偶者の収入などを除いて審査されるため、比較的利用しやすくなっています。立替費用は返済が必要ですが、事件進行中は月5,000円からの分割弁済が認められています。
無料の法律相談も活用しよう
なお、法テラスには「無料法律相談」制度もあります。こちらも、利用には収入などが一定額以下であることなどの要件がありますが、1つの問題につき3度まで無料で法律相談することができます(刑事事件を除く)。離婚問題は考えることがたくさんありますから、このような公的な制度を上手に利用することも是非検討してみて下さい。
筆者プロフィール: 河村薫
行政書士タイム法務事務所代表
法律事務所に勤務し、破産、相続、離婚など、数多くのお金と法律のトラブルの現場を経験する。破産・再生案件では問題の原因を徹底的に追究することで依頼者の真の経済的更生を支えてきた。現在は、主に相続、遺言、成年後見等をテーマとする講師業、相談業務を行っている。自身のブログ
行政書士/2級FP技能士/マイライフエフピー認定ライター