JR西日本は10月から北陸エリアで新しい観光列車を運行する。列車名は「ベル・モンターニュ・エ・メール」。フランス語で「美しい山と海(Belles montagnes et mer)」という意味だという。
良い名前だけど長い。文字数が多くてライター泣かせ、みどりの窓口で注文するときも面倒だ……という状況はJR西日本もわかっているとみえて、列車名とは別に愛称として「べるもんた」を設定している。トマトジュースのブランドみたいだなと思いつつ、以下「べるもんた」とする。
「べるもんた」の運行区間は氷見線と城端線だ。どちらも富山県内を走るローカル線で、あいの風とやま鉄道の高岡駅から海へ向かって氷見線、山へ向かって城端線という位置になる。北陸新幹線の開業で、富山県内の旧北陸本線が第3セクター鉄道になったから、JR西日本の在来線としては孤立した格好になった。この路線を観光面で売り出す企画が「べるもんた」というわけだ。城端線新高岡駅で北陸新幹線と接続する列車になる。
氷見線は海沿いの景色で人気がある。城端線はチューリップ畑の車窓や世界遺産の白川郷方面へのルートとして知られている。しかし列車ダイヤ好きから見れば、どちらも単線で面白味に欠けていた。しかし、新しい快速列車が走るとなれば話は変わる。既存のダイヤのまま増発できるか、ダイヤ改正が必要になるか。「べるもんた」の報道資料には運行時刻も紹介されていたから、早速現在のダイヤに描き加えてみた。
氷見線のダイヤに「べるもんた」を加えて、始発から夕方まで拡大表示してみた。緑の線が「べるもんた」だ。同列車の始発駅は城端線新高岡駅。北陸新幹線との接続駅でもある。したがって、このダイヤは新高岡~高岡の城端線も加えた。「べるもんた」の停車駅は新高岡駅・高岡駅・伏木駅・雨晴駅・氷見駅だ。伏木駅付近には重要文化財の勝興寺や北前船資料館がある。雨晴は海のそば。富山湾越しに立山連峰を眺められる景勝地だ。
氷見線の「べるもんた」は土曜日に2往復。現在のダイヤの隙間にぴったりとはまっている。高岡駅の停車時間が長い理由は、城端線と氷見線それぞれの運行間隔に合わせたようだ。下り列車・上り列車ともに雨晴駅で普通列車と交換している。下り列車の雨晴駅到着時刻は推測だ。前後の普通列車の所要時間を参考にした。停車時間を長めに取って、海の景色を楽しんでもらおうという配慮かもしれない。
普通列車の間を通すなら、下り列車は1時間ほど繰り上げても良さそうだけど、そうなると列車交換は伏木駅になる。景色の良い雨晴駅で交換して、停車時間を延ばそうという配慮かもしれない。
城端線の「べるもんた」は日曜日に2往復。停車駅は高岡駅・新高岡駅・砺波駅・福野駅・福光駅・城端駅だ。砺波駅は砺波市の中心市街。福野駅と福光駅も町の中心で、過去に運転されていた快速列車の停車駅でもある。どちらも「福」の字があるから縁起が良く、観光列車の停車駅としてふさわしいかもしれない。他に列車交換の都合もあるだろう。
城端線は氷見線に比べると列車の運行本数が多い。単線で路線自体も長いから、快速列車の追加は難しそうだと思ったけれど、こちらも現在のダイヤに「べるもんた」が収まった。すれ違う駅は戸出駅・砺波駅・福野駅・福光駅で、列車ごとに異なる。停車時間も短く、既存の普通列車の時刻を変えないように、かなり苦労したと思われる。
注目は下り2本目「べるもんた53号」の二塚~林間だ。「べるもんた」の資料の発車時刻のみ入力したら、この駅間で上り普通列車と交差してしまった。もちろん単線だから不可能だ。おそらく「べるもんた」は二塚駅で運転停車して普通列車と交換し、発車後はちょっとだけスピードを上げて砺波駅へ到着すると思う。あるいは「べるもんた」が走り始める10月にダイヤを修正して、普通列車の運転時刻を調整すると思われる。
こうした予測もダイヤを作る楽しみのひとつ。実際に設定した担当者の苦労を共感しつつ、実際にはどうなったか見に行きたくなってくる。その意味でも運行開始が楽しみだ。