JR山口線は伝統的なSL観光路線だ。国鉄時代の1979年、「SLやまぐち号」が運転を開始して36年目になる。JR西日本は2017年9月に新車両を投入し、2017年度以降を目標にD51形蒸気機関車を復帰させ、「SLやまぐち号」の牽引機関車に加えるという。2017年といえば、新たな寝台列車「トワイライトエクスプレス瑞風」もデビューする予定。山陰・山陽地域がおもしろくなりそうだ。
今回は「SLやまぐち号」が走る山口線のダイヤを眺めよう。山陽本線新山口駅と山陰本線益田駅を結ぶ93.9kmの路線だ。全線が単線で非電化。中国山地を通って山陽地方と山陰地方を結ぶ「陰陽連絡路線」のひとつ。山の中を行くローカル線だけど、特急「スーパーおき」が3往復も走っている。
列車ダイヤ描画ソフト「Oudia」に山口線の時刻表を入力した。普通列車は灰色、快速列車は黒、特急列車は赤、水色が快速「SLやまぐち号」だ。山口線は平日と休日のダイヤが共通だ。定期列車は曜日に関係なく、毎日同じ時刻を走っている。通勤通学の重要の変動は小さいか、あるいは車両の増減で対応していると思われる。
快速「SLやまぐち号」は3月から11月までの土休日と、夏休みや大型連休の間の平日に運転されている。平日ダイヤに休日の臨時列車を追加する形だ。平日にも沿線の需要に合わせて普通列車が増発されている。
路線全体を眺めると、列車の運行時間帯は5時台から23時台まで。運行本数が最も多い区間は新山口~山口間だ。起点の新山口駅は山陽新幹線の駅でもある。山口駅は山口県庁、山口市役所の最寄り駅。この2駅間を行き来する利用客が多いのだろう。一部列車は山口駅の2つ先の宮野駅まで運行する。山口~宮野間の区間列車もある。宮野駅までが山口市内だから、やはり利用者が多いのだろう。
新山口駅と山口駅が離れていてややこしい。横浜駅と新横浜駅の位置関係に似ている。新山口駅はかつて「小郡駅」という名前だった。当時の行政区域が小郡町だったからだ。山陽新幹線が開通した際、山口県を代表する駅として「新山口駅」などに改称する動きもあったけれど、当時の小郡町が拒否したという。時は流れ、「のぞみ」の停車駅になることと、市町村合併で小郡町が山口市になる予定だったことが改称のきっかけとなった。
宮野駅から益田駅までは運行本数が減り、ローカル線らしい雰囲気になっている。普通列車だけ見ると、運行間隔が3時間以上も空く時間帯もある。それでも2カ所以上の駅で列車交換が行われているから、単線を効率よく使っているといえそうだ。列車すれ違いが可能な駅は多いから、もっと増発できるけれど、需要に合わせた結果といえそうだ。
特急「スーパーおき」は3往復。この列車は2両編成で鳥取駅と新山口駅を結ぶ。山陰方面各都市と山口県内各駅、さらには新幹線に接続して北九州・徳山方面を結ぶ役割だ。鳥取~新山口間の走行距離は378.1kmで、気動車特急列車としては第2位の距離。短い編成の列車だけど、意外にも長距離ランナーだ。ちなみに第1位はJR北海道の「スーパー宗谷」で、札幌~稚内間396.2kmとなっている。
「スーパーおき」は、山口線内では普通列車の追い越しはなく、特急同士の追い越しは三谷駅、津和野駅、徳佐駅で行われている。「SLやまぐち号」と「スーパーおき」のすれ違いは1回だけ。大蔵駅で17時20分頃だ。どちらも時刻表では通過扱いだけど、先に到着した列車が相手を待つ。
単線で特急列車と普通列車がすれ違う場合は特急列車の運行が優先される。普通列車が先に到着し、特急の通過を待つわけだ。この優先順位は他の鉄道路線でも同じ。基本的に速度の速い種別の列車が優先される。
ところが、下りの快速「SLやまぐち号」のダイヤを見ると階段状になっている。快速列車だから本来は普通列車より優先されるはずだけど、二保駅では7分間も停車し、地福駅では14分も停車して上り普通列車を待っている。その理由はいくつか考えられる。
まず、「SLやまぐち号」は臨時列車だから。毎日走っている普通列車のすき間を走っているので、普通列車の運行を妨げないダイヤになっている。「SLやまぐち号」は観光列車のため、停車時間の長い駅では乗客たちがホームで休憩したり記念写真を撮ったりする。その時間を作っているともいえる。
篠目駅でも10分ほど停車しているように見えるけれど、実際の停車時間は2分程度だ。「Oudia」は、発車時刻のみ入力した駅間について、自動的に「最短時間で運行した着時刻を推測する」しくみになっている。しかし、SL列車はディーゼルカーより遅いので、実際は到着時刻が遅くなると思われる。
「SLやまぐち号」の上り列車を見ると、下り列車ほど停車時間は長くないようだ。普通列車とすれ違う三谷駅は、「SLやまぐち号」は通過扱いになっている。実際には先に到着したほうが相手を待つわけだけど、ここだけは普通列車が「SLやまぐち号」の通過を待つかもしれない。
「SLやまぐち号」に乗る場合、快速列車としての「走り」を重視するなら上り列車、途中の駅で休憩時間を楽しみたいなら下り列車がおすすめといえそうだ。
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