列車ダイヤのおもしろさは、列車の追い越しとすれ違いの様子がひと目でわかるところ。そのおもしろさが詰まった路線といえば、有料特急が走り、列車種別が多く、都会から郊外まで長距離の路線だ。小田急小田原線はその条件にぴったり。今回は久々に列車を追跡。新宿~小田原間のロマンスカーを追ってみた。
小田急小田原線は新宿~小田原間を結ぶ82.5kmの路線だ。全線電化で全線複線、うち梅ヶ丘~登戸間は複々線で、登戸~向ヶ丘遊園間は下り1本・上り2本の3線区間になっている。平日は通勤通学輸送、土休日は買い物やレジャー客の輸送に忙しい。そして、いまや国際的な観光地である箱根と新宿を結ぶ特急ロマンスカーが走っている。
まずは平日ダイヤの全体を眺める。停車駅の少ない列車から順に、赤は特急ロマンスカー、オレンジは快速急行、ピンクは多摩急行、青は急行、緑は準急と区間準急、黒の細線は各駅停車だ。
区間ごとの運行本数を見ると、全体的に新宿寄りが多い。都心への通勤通学需要があるから当然だろう。運行本数が最も多いのは代々木上原~新百合ヶ丘間。代々木上原駅から地下鉄千代田線直通列車が乗り入れ、新百合ヶ丘駅から多摩線が乗り入れるからだ。多摩線は多摩ニュータウンなどの大規模なベッドタウンを抱えている。地下鉄千代田線~小田原線~多摩線を走る多摩急行も多い。複々線や3線区間の効果が現れている。
次に多い区間は新百合ヶ丘~本厚木間。都心への通勤通学需要はこのあたりまで続くようだ。本厚木~新松田間が最も運行本数が少ない。新松田~小田原間では運行本数が増える。これは小田原駅、あるいは小田原駅経由で東海道本線へ乗り継ぐ客が多いためだと思われる。
細かいところでは、町田~相模大野間と海老名~本厚木間が細い帯状に見える。町田~相模大野間は運行本数が増えているためだ。相模大野駅から分岐する江ノ島線の一部列車が小田原線町田駅発着になっている。海老名~本厚木間は本厚木駅止まりの列車が多い上に、海老名駅での待避が多く、運行間隔の調整が行われる。だから運行上の境界線のように見えている。
赤い線のロマンスカーは、箱根湯本行の「はこね」「スーパーはこね」、小田原線内の停車駅が多い「さがみ」、江ノ島線に直通する「えのしま」、新松田駅付近からJR御殿場線に入る「あさぎり」などがある。平日の上りは少なく、通勤電車に遠慮しているようだ。その他の時間帯は上下ともまんべんなく走っている。箱根観光だけでなく、長距離利用客の着席サービスという意味合いもあるのだろう。夕刻の下りは「ホームウェイ」という名前の帰宅列車である。
今回、ロマンスカーの中でも新宿~小田原間ノンストップの「スーパーはこね」に注目した。「スーパーはこね」は土休日に2往復しかない。平日は下り1本しかない。これらのうち、土休日の9時ちょうどに新宿駅を発車する「スーパーはこね9号」に"列車ダイヤ上で"乗ってみよう。使用車両はVSE(50000形)だ。
「スーパーはこね9号」をわかりやすくするため、水色の太線に変更している。また、追い越しを見やすくするために下り列車のみ表示した。列車ダイヤ描画ソフト「OuDia」の表示切替機能は便利だ。
同列車は9時ちょうどに新宿駅を出発すると、梅ヶ丘駅を通過した後の複々線区間で各駅停車を追い越している。成城学園前~喜多見間でも走行中の追い越しが見られる。複々線区間は登戸駅で終わるので、次の向ヶ丘遊園駅では各駅停車の停車中に追い越す。
次の追い越しは新百合ヶ丘駅。ここでは各駅停車が急行と「スーパーはこね9号」の2本に追い越される。この駅は各駅停車の2本待避が多い。
新百合ヶ丘駅で各駅停車を追い越した急行は「スーパーはこね9号」に先行しているけれど、逃げきりは相模大野駅まで。海老名駅では本厚木行の各駅停車が待避し、「スーパーはこね9号」と、順序が入れ替わった急行に追い越される。
本厚木駅を通過した「スーパーはこね9号」は、運行本数の少ない複線区間をさっそうと駆け抜ける。追い越しは秦野駅のみ。先行する急行を追い越している。この急行は新宿駅を20分ほど前の8時41分に発車している。時刻表を見ると、急行でありながら秦野駅で3分間も停車していた。その理由はロマンスカーを待つためだった。
「スーパーはこね9号」は新宿駅から小田原駅まで、途中で各駅停車6本、急行2本を追い越していた。ノンストップ便ならではの俊足だ。すれ違う列車は42本。うちロマンスカー同士のすれ違いは6回。内訳は経堂駅付近で「さがみ70号」、狛江~和泉多摩川間で「さがみ72号」、玉川学園~町田間で「さがみ74号」、小田急相模原~相武台前間で「はこね2号」、伊勢原~鶴巻温泉間で「あさぎり2号」、秦野~渋沢間で「はこね4号」となっていた。
ロマンスカーに乗るとき、とくに先頭展望車の指定席が取れたときは、列車ダイヤを調べて追い越しポイントやすれ違いポイントを調べて行くとおもしろそうだ。