JR東日本の気仙沼線は東日本大震災で被災し、一部区間をBRT方式として仮復旧した。BRTは「バス高速輸送システム」の略。気仙沼線BRTはバス専用道と一般道を経由するため、気仙沼線は鉄道とBRTと一般道区間が混在するという珍しい路線になった。
鉄道にダイヤグラムがあるように、バスにもダイヤグラムがある。バスはおもに道路を走るから、すれ違いはどの区間でも可能だ。では、バス専用道区間はどうなっているだろう? BRTは単線の鉄道路盤を使っているから、バスの運行には制約もありそうだ。
2014年9月現在の気仙沼線の状況をおさらいしよう。単線の鉄道区間は前谷地駅から柳津駅まで。柳津駅から気仙沼駅まではBRTによる運行だ。専用区間は陸前戸倉~志津川間と、志津川駅の少し北側から清水浜駅まで、歌津~蔵内間、陸前階上~最知間、そして不動の沢駅付近から気仙沼駅までとなっている。BRTの運行に際して、志津川駅と清水浜駅の間にベイサイドアリーナ駅が設けられた。この駅を経由するバスと経由しないバスがある。
BRTの専用道区間は鉄道線路用地を使っている。もともと気仙沼線は単線だったから、バスのすれ違いは厳しい。地上区間は路盤を拡幅してすれ違い場所や待避所を設けているけれど、トンネル内のすれ違いは無理だ。それでもバス専用道を走る理由は、トンネルを使えば隣の駅まで最短経路になるからだ。
バスになっても単線運行という制約がある中、JR東日本は、「BRT化で運行本数を増やしました」とアピールしている。BRT区間でも各駅はすれ違い可能。一般道はどこでもすれ違い可能として、ダイヤ上で他にどんな工夫をしているだろう?
では早速、気仙沼線の時刻表を列車ダイヤ描画ソフト「Oudia」に入力してみよう。今回はBRT区間をわかりやすくするために、ダイヤを描画した後、ペイントソフトを使ってマークを付けてみた。
鉄道として残った区間と比べて、BRT化された区間の運行本数が増えているとよくわかる。そして予想した通り、BRT区間のすれ違い場所は一般道区間に集中している。歌津駅付近、小金沢駅付近、松岩駅付近だ。志津川~清水浜間は専用道が整備されているけれど、ほとんどのバスがベイサイドアリーナを経由する。だからここもほとんどのバスが一般道ですれ違っているわけだ。
BRT専用道区間内のすれ違いが設定されている場所は、不動の沢~気仙沼間だ。この区間は待避所がいくつも設けられている。BRT区間はバスロケーションシステムによって運行管理されているため、指定された場所でバスが進路を譲り合う。その他のBRT専用道区間も同様だろう。列車交換ならぬ「バス交換」を見たいなら、このダイヤを参考にしてバスを選ぼう。
参考までに、被災前の2009年の気仙沼線の列車ダイヤを見てみよう。
季節臨時列車「こがねふかひれ号」と快速「南三陸81・82号」は省略して、平日の定期列車のみ入力した。被災前の気仙沼線がいかに閑散としていたかよくわかる。もっとも、列車とバスでは乗車できる人数が違う。BRTにするにあたって、「列車なら1本で運べる人数を、バスでは載せきれない。複数のバスを運行するなら、時間差を設けた方が便利」という判断があったと思われる。
運行回数が増えれば、移動する時間の選択肢が増える。かなり便利だ。そして残念なことに、鉄道のままでは、BRTの運行本数を設定できない。列車のすれ違い場所が駅に限られるからだ。ダイヤ上でもわかるように、運行本数の多い現在のほうが便利だといえる。
JR東日本はBRTを仮復旧と称していて、地元自治体も鉄道による本復旧を求めている。鉄道で復旧させた場合、現在のダイヤを維持するには、各駅ですれ違いを可能にしつつ、駅間にも信号場が必要。かなり費用がかかりそうだ。鉄道ファンとしては鉄道の復旧に期待したいけれど、地元の人々の交通手段としてはどちらが良いだろう。列車ダイヤを比較しながら、かなり考えさせられた。