スウェーデンの家電メーカー・エレクトロラックスが6月に発売した「Pure Q9」。北欧ならではのデザイン性の高さと、ハンディ&スティックの2in1仕様の機能性で、日本市場でも2004年に発売されて以来多くの愛用者を持つコードレスクリーナー「ergorapid(エルゴラピード)」を展開している同社が、新しいシリーズとして発売した製品だ。
今回は、新シリーズのコンセプトをはじめ、意匠デザインなどへのこだわりについて、本国の担当者に代わり、エレクトロラックス・ジャパン プロダクト・ライン マネージャーの荒井章太郎氏が話してくれた。
ハンディ&スティック仕様がさらにプレミアムに
既に「ergorapid」によってハンディ&スティッククリーナー市場では確固たる人気を確立しているエレクトロラックス。「Pure Q9」は、その上位のプレミアムモデルという位置づけで発売された。デザイン性はもちろん、機能や操作性も含め、中身も外見もすべてに、同社が持てる最高峰の要素が注ぎこまれている。
コンセプトは、
"踊るように、奏でるように。"
外観においては、アルミフレームを採用したデザインが特徴的だ。
「Pure Q9はエレクトロラックスの掃除機の中でもフラッグシップに位置づけられ、優れたパフォーマンスとデザインを持つ製品です。材質はお部屋のインテリア・空間と一体となるようこだわったものを使用しております」
本製品の本体重量はスティック時2.9キログラム、ハンディ時1.45キログラムと、同社製品の中では一段と軽量化が図られている。アルミフレームの採用は、本体そのものの軽量化とともに、見た目の軽やかさを象徴したものでもあるという。
「美しい家具の一つのようにお家の一部になるようなデザインを目指し、素材もそのことを意識して採用が決められています。開発メンバーによれば、軽くて強いアルミ素材によって軽量化ができるだけでなく、ハンドユニットが浮いてみえるような優雅なフレームを作り出せたとのことでした。このフレームによって、ボタンを押さなくても片手でハンドユニットを取り外すことのできるデザインが実現しています」
流線形のアルミフレームのデザインは、見た目にも軽くて美しい。しかし、その反面、掃除機として求められる堅牢性を両立させるには困難は伴わなかったのだろうか。次のように答えた。
「アルミフレームの採用で難しかった点は、大量生産でも品質と仕上げを高度に保つことでしたが、試作を繰り返すことで実現しました。アルミが持つ材質の強度は、フレームの太さや構造デザインによって担保されています」
コンセプトは充電用のスタンドにも昇華されている。本体同様にフレームを基調としたデザインで、床と段差のないフラットな構造にすることで、掃除開始・終了時は本体を滑り出させるように取り出すことができ、本体を持ち上げる必要がなくスムーズだ。
「デザイン部門では、Pure Q9を使う時の手順を軽減することを目指し、ハンドユニットへのアクセスと、充電台からの掃除のクイックスタートに着目。本国では使いやすさに関するテストを含め、何度も設計をし直して問題解決に至ったようです。多くの試作品を作成し、エレクトロラックスのラボに実際のユーザーを招いたテストも繰り返し行った結果、掃除を開始する時も充電台に戻す時も、本体を滑らすだけで済む、ユニークな充電台が作り出されました」
吸引力と操作性にもプレミアムモデルの価値を
掃除機の肝となる吸引力もプレミアムモデルとしてパワーアップしている。フローリングの溝に対しての吸引力は従来機種と比較すると約7倍にも向上したというが、これは主にクリーナーヘッドのノズルの構造を変えたことで実現したという。「ノズルの構造により、床から速いスピードの空気の流れを作り出すことで吸引力が高まっています」と荒井氏。
さらに、ヘッドが左右に動く機構を採用しており、家具の足回りや部屋の隅などを軽々と掃除しやすい操作性を備えています。また、スティック本体は自立するほか、本体を寝かせた際の高さはわずか14cmなのでソファーやベッドの下にもヘッドが届く。ヘッドのフロント部にLEDを備え、暗い場所でも前方を照らしながら掃除できる仕様はergorapidから継承されている。
ergorapidと同様に、本体の中心部分を取り出すことで、ハンディ掃除機としても利用できる仕組みだ。実際に使用してみると、使いやすさが大幅に向上していることに気が付く。その秘密は形状そのものに仕掛けがある。
「ハンドユニットの形状は、グライダーのスマートな流線型からインスピレーションを得たものです。使い勝手を考え、持ち手の部分はできるだけ重心近くに配置することを目指し、バッテリーをグリップの後ろに配置することによって、最良なバランスを保っています」
もう1つプレミアムな仕様として特筆したいのが静音性だ。本製品は、従来品よりも吸引力がパワーアップしていながら、運転音が穏やかになっている。
「ユーザー調査の結果、掃除機を使う際の音が家の中でも、隣近所にも不満を与えているということがわかりました。そこで、掃除の際に発生する音を明らかに軽減することを目標に、開発が行われました。その結果、ハンドユニットの形状のデザインによる工夫とスムーズな気流の設計により、排気音を抑えることでノイズを最大限に軽減できました。音質にも着目し、なかでも耳障りな金属音を抑えることで、従来型のハンディタイプの掃除機と比較して体感音を半分まで抑えています」
使う人を大切にする、という哲学
全体的な外観デザインのこだわりは、「スウェーデン本社のあるスカンジナビアでは、デザイン哲学として、使う人を大切にすることを重要視しています。Pure Q9は、エレクトロラックスのプレミアムモデルとして、他社と明確に差別化し、住空間に必要とされるブランドとなることを目指したデザインを追求しました。このような考えのもと、ターゲットカスタマーのライフスタイルを支え、最も自然な形で住環境に馴染むようなデザインを心がけてPure Q9が誕生しました」と語る。
Pure Q9は、付属品の異なる3モデルをのラインナップしているが、モデル毎にサテンホワイト、マホガニーブロンズ、インディゴブルーの異なる3色のカラーバリエーションで展開している。色の選定については「プレミアムなモデルの質感をだすため、メタリックでシックな色を採用しました」とのことだ。
1912年に家庭用の真空式電気掃除機を発売して以来、初の家庭用食洗機(1950年)や電子レンジ(1960年代)、世界初の市販の家庭用ロボット掃除機(2001年)など、100年以上にわたり、常に時代をリードする革新的な製品を世に送り出してきたエレクトロラックス。いまや市場においてスタンダードになった、2in1式のハンディ&スティッククリーナーもまさに業界に先駆けて発売し、普及に貢献した。昨今、このタイプの掃除機は各社から多数の製品が登場し、キャニスター型に変わって既に掃除機市場を席巻してはいるが、Pure Q9シリーズが目指した革新は、今後の業界の新たなスタンダードとして市場をけん引する原動力の1つとなりそうだ。