シャープが4月23日に発売した「プラズマクラスター除加湿空気清浄機 KI-LD50」。加湿、除湿のハイブリッドな機能を搭載した空気清浄機に、衣類乾燥機能も追加しながら、従来モデルよりも設置面積を約3割も抑えることに成功した画期的な製品だ。

その開発背景から、コンパクト化を実現するに至った機構・設計上の秘話を伺った前回に続いて、後編では外観デザインについてのこだわりとエピソードを、商品企画とデザイナーの2名の担当者にお話しいただいた。

目に見える「キレイな空気」を目指して

外観のデザインにおいては、キレイな空気が出てくるとユーザーに感じてもらうことを念頭に進められた。商品デザイナーを担当した、シャープ Smart Appliances & Solutions 事業本部 国内デザインスタジオの清水栄一氏曰く、「1つの吹き出し口からルーバーで前方と後方に風を吹き分けるという機能性とともに、浄化された空気が広がっていくイメージ」を表現するために、大きく滑らかな面を意識したデザインが象徴的だ。

  • シャープがプラズマクラスター除加湿空清の「小型化」でやったこと (後編)

    本製品の商品デザイナーを務めた、シャープ Smart Appliances & Solutions 事業本部 国内デザインスタジオの清水栄一氏

「インテリアにフィットすることを意識すると、箱型や円筒ベースのシンプルな形状から風が出るようにしたデザインの製品が多いのですが、本製品は、きれいな空気が出ているというメッセージをデザイン上で伝えたいと思っていました。そこで、デザイナーとしては、大きく滑らかな面を作って表現したいという思いがある一方で、前述のとおり、後方に風が引っ張られてしまうという問題もあり、技術とデザインのせめぎ合いでした。最終的に、機能とデザインが両立するところで現在の形に落ち着きました」

また、「リビングに落ち着いたイメージにするために、全体的にはマットな質感にしました」と説明。その一方で、ルーバー部分がツヤ仕上げになっている理由として「透明なパーツとともに清潔感を際立たせ、空気清浄機や衣類乾燥除湿機としてキレイな空気が出るという機能を表現しています」と続けた。

  • 全体的にはマットな質感だが、空気の吹き出し口周りはツヤ感もある仕上げ。キレイな空気をイメージさせるために、ルーバー部分は透明パーツをあえて仕込んだそうだ

小型化しつつも「使いやすい」ということ

本製品の操作部と表示部は、本体上面に集約されている。これはもちろんインタフェースを統合することよってデザインをスッキリさせるためでもあるが、商品企画担当の同事業本部 国内空調・PCI事業部 PCI商品企画部 主任の松村勇樹氏によると、実は別の理由もあったのだという。

「弊社の空気清浄機は、表示部が正面にあって操作部が上面にあったりして離れている機種が多いのですが、1カ所に集約することで、実は電源基盤をまとめることができ、コンパクト化を図ることにも寄与しました」

ただし、操作部と表示部をまとめたことで、次は「正面からの表示部の視認性が悪くなってしまった」という。そこで、「操作・表示部を斜めにして見えるようにしました。キーと操作部を統合し、数を減らしてサイズを小さくするなど、極力簡単で余分なものがないようなインタフェースを考えました」と清水氏。

  • 本体上面の後方に集約された操作部と表示部。1つにまとめることでスッキリさせると同時に、電源基盤を1つにできるため、本体のコンパクト化には欠かせない要素でもあったという。また、表示を見えやすくするために少し斜めに設計されている

また、"きれいモニター"と呼ばれる空気の状態を表すLED表示部は、本体後方から幻想的にほのかに光る仕様が採用された。松村氏は「後ろ側に掘り込みを作って、間接光を見せるようにしました。その際、空間と調和しやすいように色や明るさなども検討を重ねました」と明かす。

  • 背面からほのかに光が漏れる"きれいモニター"。シンボルでありながらも空間から浮かないように、光の漏れ方や明るさ、色などが細かく調整されているという

本体の形状は、前方から後ろ側に向かって傾斜がつけられ高くなっている。前述のとおり、これは気流のためにつけられたものでもあるが、清水氏によると、サイズをより小さく見せるためのデザインでもあるとのことだ。

「正面の面積を抑えることで、ボリューム感を抑えています。実は、本体幅も少しだけ上に向かって角度をつけて台形状になっています。人の目は上のほうの面積でボリュームを認識する傾向があります。また、見下げる高さのものに対しても同じで、真四角で作ってしまうほうが大きく見えたりします。目の錯覚上、倒せば倒すほど小さくは見えるのですが、不自然にならないようなプロポーションを考えました。衣類乾燥機能も持つ本製品は、キャスターで場所を移動させて使用するシーンも多くなります。そのため一番下の部分は大きめのR(曲げ加工)を施して、物が引っかかったりしないようにすると同時に、全体的にも軽い印象を持たせています」

  • よく見ると、本体は微妙に台形状。角の部分の丸みは、安全性を高めると同時に、本体の印象を軽く見せる効果も担っている

1台4役のマルチユースの除加湿空気清浄機をA4版の雑誌見開きサイズ以下の設置面積で実現した本製品。小型化に伴い、新たに生じる課題・難題にも新しい発想の技術や機構・設計で果敢に克服した上に、その機能を外観上でも表した意匠としてのデザイン性と表現力に驚いた。消費者のニーズに応えるべく、これまでになかった商品として生まれた本製品だが、最初にして、いきなりの"渾身の力作"という完成度の高さとこだわりが詰め込まれている。