製品の性能・機能性とともにデザイン性も両立した、まさに"機能美"とも言える空調家電を展開する日本の家電ベンチャー・カドーが2018年3月に、韓国の財閥グループ・SKマジックと合弁で設立した新会社・カドークオーラ。その第一弾商品として同年12月に登場したのが「ヘアドライヤー BD-E1」。税別価格2万8,000円と製品カテゴリー内においては高価格帯の商品だ。
一番の特徴は、同社が"ノーズレス"と呼ぶ独特の形状。先端部に長いノズルがある一般的なドライヤーとは大きく異なり、本体がアルファベットの"P"の字のような形をしている。見た目だけでもインパクト大だが、これは実は、ドライヤーとしての使いやすさを追求した先にたどり着いた形状なのだ。製品を担当するカドークオーラ クリエイティブディレクターの鈴木健氏は次のように明かす。
「商品開発のスタートは、腱鞘炎に悩む美容師さんたちの悩みを解決する、というのが一番の目的でした。そこで、使う人の負担をかけないドライヤーのあるべき姿とは何か? を考えた際に、"軽さ"と"かたち"の追求に至りました」
ノーズの大きな普通のドライヤーは、どうしても重心が(ドライヤーを握る)手から離れるため、手首にダイレクトに負荷がかかってしまう。そこで、大胆にノーズをカットするという発想に至った。「目指したのは、使い手の負担を最小限に抑えた、軽くて使いやすく、日々の"道具"となる理美容家電。シンプルで、性別や世代を問わずに使いやすい筐体を追求しながら、どこか柔らかさもある、使い手の毎日にストレスなく心地よく寄り添うのにふさわしい姿を探っていきました」と鈴木氏。
しかし、ノーズレスデザインを実現するにあたっては、熱の発生源となるヒーター部の配置が大きな課題だった。中でも、本体のかたち上、ヒーターの熱源とファンモーターユニットが接近するため、"遮熱"をいかに行うかが最大の難点となった。内部のパーツレイアウトの最適化を何度も積み重ねるという地道な努力で、最終的にノーズレス形状を実現できる遮熱設計にたどり着いたという。同時に、その積み重ねが結果として、「プロ仕様としては異例の軽量化にもつながりました」と語る。
ドライヤーの"重さ"の負担などから、美容師によっては、わざわざ柄(え)とノーズ部分を持ちかえながら使う人もいると言うが、ノーズレスかつ軽量であることで、持ち方をかえず、手に負担をかけずシームレスに乾かすことができるというメリットがうまれた。「一般ユーザーが使う際にもノーズ部分がないことで、苦戦しがちな後頭部の髪を乾かしやすかったり、ブロー・スタイリング時にも腕を大きく上げることなく、頭から離さず使うことができたりするようになった。ハードユースな美容師はもちろん、握力の弱い高齢者やお子様、使用時間が長くなりがちなロングヘアの人などにも、より広範なシチュエーションで、一般家庭でも使いやすいドライヤーに仕上がったと思います」(鈴木氏)。
一方、外観上のデザインでは、ドライヤーとしての全体的なバランス感にもこだわったという。具体的には、柄の向きやノズルの出っ張り箇所の調整などだ。「本体上部の特徴的にカーブした部分は、当初水平だったところを下がり目に調整したのですが、これは全体の曲線のバランス感を意識しました。全体で見た時の綺麗な形を追求し、不思議な形だからこそ、絶妙なバランス感を考慮しました」と鈴木氏。
この製品を初めて手にした際に、個人的に感動したのは、その"手なじみ"のよさ。軽さや柄のグリップ感はもちろんのこと、少しザラザラとした質感までもが心地よい。柄の持ち手部分をよく見ると、少し三角形になっていて握りやすくなっているなど、この部分にもこだわりが感じられる。
「持ち手を三角形にすることで、横に振ることが多いドライヤーの回転を防ぎ、軽い握りで操作することができます。これはプロの包丁の肢からインスパイアされました。円柱タイプなど他の形状も検討しましたが、最終的に柔らかい持ち心地の三角形に落ち着きました。持った時の手の収まりをさらにしっかりするために、表面にはくぼみも設けています。このくぼみによって、握りをゆるくしても落ちない程度に優れた安定感を実現しています。質感については、握り心地を最優先にザラっと滑らない質感ながら、優しい風合いに仕上げました」
ちなみに、カドーの理美容家電ブランドとしてスタートした「カドークオーラ」だが、第一弾製品としてドライヤーが選ばれたのは「空気をデザインするというカドーの企業理念とのマッチや、美容機器事業をやろうというと思いのもと、ドライヤーのモーター技術は(カド―の持つ)空気清浄機にも通ずる点があり、比較的参入しやすかった」ことが理由とのこと。
最後に第二弾製品の予定や今後の展望については、次のように語ってくれた。
「昨年12月に初めて世に出したドライヤーを極めていきたいと考えています。その上で、2020年春ごろをメドに、ヘアケアに関する製品のラインナップ強化と美容と健康に関する新製品の企画および開発を行っています」