インテリア性を重視したエアコンの"日本発"の家庭用ルームエアコンとして3月下旬に発売される、ダイキン工業の「risora」。デザイン担当チームの1人である、同社テクノロジー・イノベーションセンター先端デザイングループの中森大樹氏に製品開発に際して克服すべき課題やそれを実現した苦労話を伺った前編に続く後編では、7種類のバリエーションの採用理由や視覚効果のために創意工夫したこだわりなど外観的な面についての話を紹介したい。
「risora」が目指したのは「あくまでも部屋のインテリアの一部として成り立つこと。今回、本体の構造や機構設計にまで大きなメスが入れられたが、「本体を薄くすること自体が目的ではありません」と中森氏は強調する。物理的に薄くするだけでなく、外観のデザインによる視覚的効果によって"軽やかさ"をいかにして打ち出すかも考えられた。
「risora」の形状は、デザインエアコンの第1弾として発売されたUXシリーズの個性的なデザインと比べると、地味な印象がある。直線的な箱型のボディの角を取って少し丸みを帯びたデザインで、一見平凡でもある。デザインのセオリーから言えば、部屋という箱状の空間になじみやすいのはよりストレートに直線的な形状のほうが最適なようにも思えるが、中森氏はこうしたデザインを"未完のデザイン"と表現し、採用した理由を次のように説明した。
「曲面的なデザインや角ばったデザインというのは、インテリアとしてそれだけで完結してしまうんです。しかし『risora』では、部屋にあってしっくりくるデザインを目指しています。ゆえに他の家具と並べ揃えた時に初めて全体のデザインとして完成するように、直線的でありながらも丸みを持たせることでどんな空間でもハマりやすいようにしました」
形状に関しては、あえて個性を廃したデザインが用いられたとも言える「risora」だが、パネル部分で個性を持たせる方法が採られているのが特徴的だ。室内機のボディに色や素材感の異なるパネルを組み合わせることで用意されたバリエーションはなんと7種類。カラーで言うと、ホワイト、ブラック、ブラウン、ゴールド、水色、グリーンの6色だが、ホワイトには質感の異なる2タイプを揃えるなど、それぞれ素材感を違えた加飾を施し、さまざまな空間デザインの要望に応える7種類をそろえた。中森氏によると、7つのバリエーションは単にカラーバリエーションを揃えたというのではないという。
「"どんな空間にするか?"、"いかに暮らすか?"を考えた結果、行き着いたのが7つのバリエーションです。それぞれに意図があり、例えば、ブラックウッドは落ち着いた印象を与えて集中するため。ラインホワイトは空間をピリッと引き締め爽やかな空間を演出。ファブリックホワイトは空間に優しく佇んでリラックスさせる。ソライロは子どもが遊ぶ楽しい空間のイメージといった具合です。」
UXシリーズと同様に、「risora」でも動作の美しさにもこだわられている。特に、空間に違和感なく調和させるために機械的な要素を極力排除するよう配慮がなされた。
「エアコンがインテリアの一要素になると考えると、メカメカしい部分はできるだけ抑えていくよう努力しました。特にセンサーに関しては誇張し過ぎないように、前面パネルではなく下部に収めました。また、フレーム部分にラインをデザインすることによってセンサーを溶け込ませると同時に、内側から柔らかく優しい風が吹いてきそうな雰囲気も持たせているんです。パネル部分が開閉する際には、壁に対して常に平行になるスムーズな動きにして違和感のないようにしました」
空調専業メーカーであるダイキンが手掛けたインテリア性を重視したルームエアコン。第1弾として発売されたUXシリーズに比べると、「risora」は無難なデザインでインパクトが弱い印象を持っていたが、話を伺うと同社の哲学が色濃く反映されたものだと納得できるものばかりだ。中森氏によると、今後もエアコンの性能や機能と並行して、デザインも含めた"エアコンのあるべき姿"を追求し、あらゆる可能性を挑戦的に模索していくとの意向で、"型"に捉われない、イノベーティブな新たな製品の誕生を楽しみにしたい。