パナソニックから10月30日に発売される「RULO MC-RS800」(以下ルーロ)。2015年3月に初代が発売され、2代目を経た同社のロボット掃除機の最新機種だ。3代目となる新モデルでは、中身の構造を根本から設計し直すなど、大幅な刷新が図られている。

パナソニックのロボット掃除機「RULO MC-RS800」(ルーロ)

まずその1つとして挙げられるのが、小型カメラとレーザーセンサーの搭載。ロボット掃除機が走行中に自らの位置を把握しながら地図を作成して自走することができ、より効率的で精度の高い清掃を行うことを可能にする、"SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)"と呼ばれる機能で、他社のロボット掃除機でもすでに採用されている製品がいくつか存在する。

今回はこれに加え、Wi-Fi機能も搭載し、スマートフォンのアプリと連携して遠隔操作などの拡張機能が使えるようにもなっている。現在のロボット掃除機市場においては、まさに"全部入り"とも言えるような最新技術が満載されたかたちでリニューアルされた新製品となったが、本体サイズや形状は、従来製品から基本的に変わっていない。

同じ寸法・形状のものに、より多くのものを詰め込まなければならないことが物理的に簡単ではないことは素人目にも歴然だ。

開発を担当したメンバーである、パナソニック アプライアンス社 ランドリー・クリーナー事業部 クリーナー事業 クリーナー商品企画課の川島抽里氏は、3世代目のルーロをここまで大きく刷新した理由を次のように明かした。

パナソニック アプライアンス社 ランドリー・クリーナー事業部 クリーナー事業 クリーナー商品企画課の川島抽里氏

「ロボットメーカーではなく、あくまで家電メーカーとして掃除機を作っている弊社としては、あくまで"掃除性能を上げる"ということを至上命題として製品開発を行っています。そうした観点に立った時、赤外線と超音波センサーにより障害物を認識していた従来製品のルーロでは、識別性にどうしても限界がありました。そこで、細い椅子の脚などを見分けられるようにするためには、レーザーセンサーを追加し、さらに部屋の間取りを学習するSLAM技術を搭載しました。しかし、機能の追加を行うとしても、すでに発売されている製品のサイズと形状を維持しなければなりませんでした」

機能は増強した上で既存製品と同じサイズの製品を発売するため、三代目ルーロではほぼ新規開発のようなフローで進められたとも明かす。

「今回追加となった高性能な小型カメラや、レーザーセンサー、Wi-Fiモジュールに加えて、それぞれを制御する基盤も必要になり、それらがかなりスペースを取るんです。そこで内部の部品の位置をゼロから見直し、0.1ミリ単位で補正しながら再配置することになりました。これだけ部品が増えたにもかかわらず、前機種と同じサイズに収められたことに加え、ダストボックスの容量は以前よりも少し大きくなっているんですよ」

最新型のルーロでは、掃除の精度を上げるため、従来の赤外線、超音波センサーに加えて、レーザーセンサー、およびカメラセンサーによるSLAM技術を搭載した

川島氏によると、部品を再配置する上で特に時間を要したのは、レーザーセンサーだったという。

「新製品はレーザーセンサーで幅2センチの細い隙間まで見極めることができますが、発光部の高さや角度が少し変わるだけでも、誤検知の原因になり、精度にも大きく影響します。レーザーセンサーをどの角度に配置すべきかだけでも裕に1か月ほどは検証時間を要しましたね。それほど難しかったです」と話す。

新しいルーロは、従来のランダム走行から、掃除機が走行した軌跡をマッピングしながら動くルート走行に変わっている。さらに、無線LANでスマホと接続し、アプリ上で走行履歴を確認したり、本体のハウスダストセンサーのデータをもとにゴミの多かった場所などを示す「ゴミマップ」を見ることもできる。

スマホから、掃除したエリアやゴミの取れ高が見える「ゴミマップ」が閲覧可能。また、掃除範囲の指定はタッチ操作で行える

しかもこのゴミマップでは、ルーロに掃除させたい場所や、侵入させたくないエリアをマップ上で指定することも可能だ。ロボット掃除機としては初めてで、ユーザーにとっては待望とも言えるこの機能を実装した目的や理由について、川島氏は次のように語る。

「従来のロボット掃除機では、ロボットに侵入させたくないエリアに専用装置を置くなどして、実際の空間上に赤外線で仕切りを作る方法が一般的でした。しかし、弊社としてはユーザーにとってより利便性の高い方法を採用したいという思いがありました。そして、今回SLAMで部屋のマッピングが可能となり、アプリ上での清掃範囲の指定を実現することができました」

「ただ、現段階では何センチという細かい範囲で設定できるわけではありませんが、ユーザーにとって最もシンプルで直感的な操作性を追求した結果、指先でピンチイン&アウトするというスマホと同じ操作性を採用しました。今後もフリーハンドによるエリア指定など精度も含めて、より細かく実行できるように改良していきたいと思っています」

基本構造を一から見直し、約1年半の歳月をかけて大進化を遂げて発売された、3代目となるルーロの新製品。前編では、新製品の機構・設計の話を中心に紹介したが、後編では新製品の外観的なデザインや、製品の象徴とも言える"三角形"という形状に関するルーロの原点にも立ち返った話にも言及していく。