前編から続く)

SWITCHBOTが2023年春に発売したロボット掃除機「K10+」。日本市場に向けて開発されたロボット掃除機で、標準的なサイズよりも直径が約10㎝コンパクトな本体でありながら、吸引と床拭き機能を備えた二刀流の製品として、評判を呼んでいる。

発売から約1年後となる今春に発売した、アパレルブランド「JOURNAL STANDARD FURNITURE」の完全監修によるコラボレーションモデルが再び話題だ。

前回に続き、同社 日本法人・国際本部日本事業部・プロダクトマネージャー/事業開発リーダーの北島祥氏に、ロボット掃除機本体以外の開発秘話や、コラボモデルのデザイン上のこだわりを語ってもらう。

  • SWITCHBOTのロボット掃除機「K10+」がファッション敏感層から注目されたワケ(後編)

    SWITCHBOTのロボット掃除機「K10+」JOURNAL STANDARD FURNITUREとのコラボレーションモデル

標準で装備しているゴミ収集ステーションだが、ロボット掃除機本体サイズに合わせてもちろん小型化されている。北島氏は、苦労したエピソードとこだわりを次のように話してくれた。

「小型のロボット装置に合わせて全体のデザインがどのくらいに収まれば空間の圧迫感がなくなるのかとかそういった部分での検討はかなりありました。そうした中でも、特に注力したのは、ロボット掃除機の中のゴミを吸い込む時の空気の流れです。ロボット掃除機本体と同様に、ゴミ収集ステーションでも本体内のゴミを吸い上げるので、その一連の流れでもフィルターを通してゴミを外に出さずに吸い上げて、ホコリを含んだ空気を吸わせないような吸い上げ方を一番に考えました」

  • ロボット掃除機本体を小型化するにあたり、ゴミ収集ステーションも設計や検証が行われた

K10+のもう1つの特長として、動作音が静かな点も挙げられる。独自技術"SilenTech"により、清掃時の動作音の騒音レベルは50dB未満と約50%抑えている。

「K10自体が現時点で作れる、日本の環境に最適な最高の掃除機という目標を掲げて開発されました。日本市場に合うロボット掃除機というのを追求していく中で、2番目くらいの課題として挙がったのが音の問題でした」

小型でありながら吸引力は上げて、音を削減するというのは、物理的にはどれもが相反する要素だ。それを具体的にSilenTechという技術でどのように解決したのだろうか。北島氏は次のように解説してくれた。

「ロボット掃除機における音の原因の大部分は吸い込む際に発生するものです。そこで、まずは内部を風がスムーズに流れることによって吸引力を確保しました。そして、風がスムーズに流れることで、風が余計にぶつかったりもぜず、そのぶん低音になるという結果につながります。さらに、風の通り道に接する全部の部品に防音剤を使うといった工夫も施しています」

音を抑える工夫は、もちろんゴミ自動収集ステーションにも通ずる。「風路を工夫して音を抑えています。空間は小さくても出口を大きくして吸い上げると、そのぶん吸い込む力が強くなります。吸い込む時に風が壁にぶつかると、内部でつむじ風のような気流が発生し、それが空回りして吸引力がロスしてしまうんです。そこで吸い込んだゴミがそのままダイレクトにダストボックスに行き着くような空気の流れを作ってあげたりとか、研究をかなり重ねました」

外観のデザイン面では、今回、追加発売されたコラボモデルではカラーが最も議論を重ねた部分だそうだ。

「できるだけワントーンで、使う色もできるだけ減らして、シンプルだけれどもオシャレに見えるような色はどういう色なのかというのを先方とかなり協議しましたね。あえて主張しないデザインというのが、コラボモデルでのコンセプトなのですが、プロダクトとしてもともと機能としては完成していたものを、ライフスタイルに馴染むところでもう一段上のレベルで、色をはじめジャーナルスタンダードさんとの間でかなり協議を進めました。その中で、本当にさすがだなと思ったのは、もともと使われている素材のところも加味して色を選定された点。具体的には、上のプレートとその周りの部分で光の反射が微妙に違うのですが、上のプレートのほうが光が反射しやすいことからワンポイントとしてその素材の表情も生かした色の選定を進めました。カラー決定後は、ロゴの位置や大きさ、色など、なるべく主張しないようなデザインというのをかなり時間をかけて検討しました」

  • コラボモデルに記された「JOURNAL STANDARD FURNITURE」のロゴ。ワンポイントではあるものの、主張しすぎないデザインとなるよう検討が重ねられた部分だ

コラボモデルは、本体の性能や機能面は基本的にスタンダードモデルと同じ仕様だが、回転ブラシだけゴムブラシが採用されている。

「コラボモデルとしてのスペシャル感だったり、プレミアム感を付加するためです。毛+ゴムブラシは床と接触する際に撫でるようなペタペタした音が抑えられるのに対し、ゴムブラシはゴミの残留が少なくお手入れがしやすくなります。また、今回は色合わせにこだわりをもったコラボモデルでもあって、あえて統一感のあるゴム製ブラシを採用することにしました」

2022年7月に発売したS1/S1+を皮切りに、日本でもロボット掃除機市場に参入した同社だが、今後も新しいロボット掃除を順次発売していく意向だ。最後に、今後の展望を次のように語ってくれた。

「SのラインとKのラインがあります。前者はS1の次にS10を発売していますので、次は小型タイプのKのラインの新しい製品を予定しています。5月に発売したS10というのは、全自動給排水システムの搭載により、我々が目指しているIoTスマートホームデバイスやロボティックを取り込むというところに一歩踏み出した製品です。今後、我々が出していくロボット掃除機はもっとそうした方向にスピードを上げて行くことになります。SWITCHBOTが優れたロボット掃除機をつくれるというのは、S1/S1+、K10+である程度消費者にはお伝えできたと思っているので、これからは次のステージでの展開を加速していきます」

  • 5月に発売された、SWITCHBOT第3弾のロボット掃除機「S10」。自動給排水のシステムを搭載し、IoTスマートホームデバイスとしてのロボット掃除機の新境地を切り開くラインナップだ

  • SWITCHBOT 日本法人・国際本部日本事業部・プロダクトマネージャー/事業開発リーダーの北島祥氏