(前編から続く)
シャークニンジャが6月に発売したスティッククリーナーの最上位の新シリーズ「Shark CleanSense iQ/iQ+」(以下CleanSense iQ)。"パワフルコードレス"を謳い、吸引力を強化した掃除機を日本市場に再投入した商品だが、既に定評を得ている同社の「EVOPOWER SYSTEM」で人気の機能はもちろん新シリーズにも踏襲されている。
人気機能はより美しくスマートに「踏襲」
踏襲された人気機能、その1つが「自動ゴミ収集ドック」と呼ばれる、掃除後に本体を充電ドックに戻すとダストカップ内のゴミを自動で吸い出し収集する機能だ。シャークニンジャ プロダクトマーケティング シニアマネージャー 日本製品開発担当のジャッキー・チャン氏によると、機能を「踏襲」といっても、CleanSense iQシリーズの構造や設計は、従来のEVOPOWER SYSTEMとは大きく異なるそうだ。
「Sharkとしてのフラグシップ製品になりますので、それに見合ったドックが必要であると、一から設計をし直しています。本体のデザインそのものが縦長のスリムでシュッとしているのに対して、ドックもシンプルでかっこよくなければいけないと今のスリムなデザインになりました。実はそれと同時にスペースの有効活用でもあります。というのも、本体の重量バランスにこだわった結果、バッテリー部分が後ろに出る形状になりました。ドックに置いた時にその部分がもともと出てしまっているので、ドックもその大きさに合わせて奥行きを伸ばした方が空間効率がいいとなり、高さも少し出したことでスリムでシュッとした現在の佇まいになりました」
上部にハンドルを設けて引き上げるだけで外せる設計に変更したのも大きな改善点だ。「従来は水平に引き出す方式で横にそのぶんのある程度のスペースを設けていないと脱着しにくい構造でした。自動ゴミ収集ドックを壁にくっつけて設置した場合には、ダストカップの部分を脱着する際に場所を取ってしまってコンパクトに収納できなくなってしまうこともありました。今回、上に引っ張るだけの構造にしたことでどんな場所に置いても脱着ができ、かつ使い勝手を向上させています。また、ドックに溜まったゴミ捨てのタイミングがわからないというEVOPOWER SYSTEMの時から存在していた声に対して、ゴミ捨てのリマインダー機能を追加しています」
よく見ると、自動ゴミ収集ドックと掃除機本体のダストカップとの連結部分および経路の構造も変更されている。従来機では、ゴミがいったん水平に移動してから垂直に落ちる構造だったのが、一直線で真下に流れる仕組みになった。この変更はエンジニアの努力と妥協の賜物だという。
「米国の開発部門から最初に来たものは、経路が縦横に曲がったもので従来とあまり変わりはありませんでした。ただ、そのままだと背後のスペースの有効活用ができていない上に、製品をドックにセットした際の安定性のためのサポートパーツが多数あるのですが、これによっていろいろな部分が肉厚になって、見た目が筋骨隆々とした屈強な印象になってしまっていました。日本向けではそれを絶対にやめて欲しいと要望したのですが、それでエンジニアが一番苦労していたのは、ゴミがストンと真下に落ちるような経路にしつつも、空気の流れを整流して、セットした際のホールド性もしっかりと担保できるデザインを作り上げることでした。エンジニアとしては、掃除機本体をドックに置いた時に"カチャッ"と嵌るネック部分をもっと屈強にしたかったようですが、日本の住環境や使用環境、使用頻度を含めて強度や耐久性といったいろいろな側面でデータを見た時に、アメリカで考えているほどの屈強さは過剰であるとわかりました。それならば、日本側としてはスリムで美しいデザインを目指したいですし、説得して、まっすぐにストンとゴミが落ちる今のスッキリとした連結部分と経路の設計が採用されるに至りました」
性能は上がっても、サイズは抑えて使いやすく
ヘッドブラシには、「ハイブリッドパワークリーン」と呼ばれる、EVOPOWER SYSTEMの上位モデルで採用されているブラシロールを、CleanSense iQ向けに再設計して搭載している。フラップとソフトなローラーを組み合わせた設計で床に密着して、大きなゴミから細かいホコリ、髪の毛やペットの毛も絡まず取り除くことができる独自仕様のヘッドブラシだ。
「ヘッドブラシは見た目の良さをキープしつつも、それぞれの製品の特徴に合わせて最適なパフォーマンスが出せるように、毛の密度や毛の長さ、フラップ部分の硬さ、角度などを都度、すべて微妙に調整して設計し直しています。実は今回のCleanSense iQでは、ヘッドの大きさはEVOPOWER SYSTEMシリーズに比べて横幅はまったく同じで、奥行はよく見るとケース自体は少し大きくなっていますが、内側の車輪の位置は今までと同じです。ヘッドにはフロアセンサーとエッジセンサー、ライトセンサーの3つのセンサーを追加しているので、部品数は増えているのですが、内部の配線やセンサーの配置などを工夫することで、可能な限り同じ大きさの中に納めています。ヘッドとブラシロールに関してはSharkの特許の塊とも言えます」
先進的で賢く、パワフルが伝わる外観を志向
本体カラーは、自動ゴミ収集ドック付き2モデルでライトチタニウムとメタルブラックの2色、付属しないモデルはホワイトアルミニウムとミッドナイトグレーの2色を用意する。EVOPOWER SYSTEMと同じデザイン事務所と連携しているが、今回も日本のトレンドやユーザーニーズを踏まえた上で、日本専用のメタリックカラーが選定されている。
「今回、製品が賢くなり、非常にパワフルに進化しています。高性能や先進性を表現するため日本専用のカラーを採用しようと、まずはシルバー系とブラック系の2系統のカラーに絞り込みました。具体的な色を選定するにあたっては、日本におけるトレンドやユーザーのニーズを踏まえて、シルバー系はライトチタニウムとホワイトアルミニウム、ブラック系はメタルブラックとミッドナイトグレーの、あわせて4色を採用しました。すべて特色で、美しく仕上げるためには何層にも色を塗り重ねる必要があり、美しい反面、非常に工場泣かせの製品です(笑)」
他にも外観デザインにおけるこだわりとして、ハンディ掃除機本体の上と中央部分に入れられた2カ所の金属色のアクセントを挙げる。
「縦長の非常にスリムな全体のデザインの中に、アクセントとしてこれを加えることで、シェイプの引き締めと先進性を強調したスタイリッシュなデザインに仕上げたつもりです。かつ半透明の色付きのダストカップを採用したことも、デザイン性を保ちつつも、中身を確認することができ使いやすさを追求した結果なのです。さらにSharkとしては初めてカーボンファイバー素材を製品に取り入れました。これは、軽量化を図るにあたって、見た目と製品強度を保つという双方の意味で大きなポイントです。よくある素材の外側にカーボン調のプリントフィルムを巻いてあるのではなく、リアルカーボンを採用しています」
近年の日本市場では、吸引力から、軽量性や使い勝手のよさへと掃除機のトレンドがシフトしていく時期が続いていた。EVOPOWERのヒットでその境地を切り開いた張本人のひとりであるシャークニンジャが、「置き去りにしてしまった」と語る「清掃力」という根強いニーズに再び応えるべく、本気で取り組んだのが今回の「CleanSense iQ/iQ+」という製品だ。海外を拠点とするメーカーでありながらも、日本のユーザーを尊重したモノづくりの姿勢は本物に見える。「清掃力」というトレンドを切り開く張本人となったと、後に語り継がれる製品となることが期待できる仕上がりだ。